転職や副業、企業と労働者の関係が様々な形で広がる中で、企業の間でも「人的資本経営」のキーワードとして、“アルムナイ”が注目されている。ニュース番組『ABEMAヒルズ』は、この「アルムナイ」のネットワーク構築を支援する企業を取材した。
“アルムナイ”とは英語で「同窓生」「卒業生」を意味する言葉だという。
「アルムナイは企業の退職者という意味だ。欧米系のコンサルティング会社やIT企業などに非常に多かったが、今では日本でもかなり普及してきている」(株式会社ハッカズークCEO・鈴木仁志氏、以下同)
「アルムナイ」は、企業を退職した人を意味すると話すのは、企業と“アルムナイ”のネットワーク構築を支援するハッカズークの鈴木さん。
鈴木さんの会社では、企業と退職者、そして退職者同士が交流できるコミュニティサイトのシステム導入支援や、そのネットワークをうまく機能させるためのコンサルティングを手掛けている。
「2017年に起業し、18年〜19年までは、『なぜ退職者とつながる必要があるのか分からない』や、『退職者は裏切り者』のような、ネガティブな声も多かった。だが、ここ数年でポジティブな見方が広がってきた」
企業にとってネガティブな印象が強かった退職・転職だが、コロナ禍を経て、前向きなものも増えた一方で、終身雇用が当たり前ではなくなったことで、その関係にも変化が訪れているという。
アルムナイを再雇用することで、企業にどんなメリットがあるのか、鈴木さんは次のように話す。
「もともと社内にいたからこそ、カルチャー・仕事の進め方の理解が非常に高いので、即戦力になりやすい。さらに、一度外にいたので社外から新しい視点を持ち込めることも、このアルムナイならではだ」
一方で、アルムナイ採用に当たっては、次のような注意点もあると鈴木さんは警告する。
「企業側と退職者側の両方に言えることだが、(離れている)時間・期間が経っているため、互いに『変わっていること』と『変わらないこと』の両方をしっかり認識をした方が良い。加えて、社内の人材が『外に出なければ評価されない』と受け取ってしまうリスクには注意すべきだ」
また、アルムナイと企業がつながるメリットは、再雇用だけにはとどまらないと鈴木さんは話す。
「アルムナイの方に業務委託をすることも増えていて、退職時に業務委託契約を結んで、やめた後も仕事の一部をそのまま受け持ってもらうこともある。さらに、採用ブランディングの観点において、退職した人が一番フラットに会社のことを語れる。辞めた人たちが会社をどう思っているのか、みんな知りたがっている。例えば退職者がインタビューを受け、採用ページに掲載している企業も多かった」
退職をすることに抵抗が減りつつある日本。アルムナイの今後について、鈴木さんは次のように語る。
「せっかくつながったのに、退職によって縁が切れてしまうことをなくしたい。たとえ転職をしてもネガティブな辞め方ではなく、“つながる前提”で辞めていく。退職後もつながり続けることを一般的にしていきたい」
アルムナイ(退職者)を再度雇用するメリットについて、JX通信社・代表取締役の米重克洋氏は「新しい人材を採用し、その人材が仕事に慣れるまでには時間がかかり、社内用語やカルチャーを伝える必要があるが、アルムナイであればこれらの問題がスムーズに進む」と指摘した。
その上で、退職後も良好な関係を維持する辞め方については「退職者は『自分はこんなことに挑戦したい』など意思を明確に伝えることが重要だ。また、企業側も“雇ってやる立場”ではなく、選ばれる立場であることを理解し、コミュニケーションを大切にするべきだ」と述べた。(『ABEMAヒルズ』より)
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