【写真・画像】インフレ進めば日経平均10万円の時代? TSMC進出で価格高騰の町、周辺で“格差”も…「マイナスよりプラスのほうが大きい。成功する人は虎視眈々と狙っている」 1枚目
【映像】日本とアメリカの“吉牛”価格比較
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 日経平均株価が4万円を超え、史上最高値を記録した日本。インフレが進めば10年後には10万円を超えるという予想もあり、話題となっている。

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 そして、そのインフレの渦中にあると言われているのが、台湾の半導体大手・TSMCの工場が進出してきた熊本県・菊陽町だ。2月、工場が開舎となり、人口約4万4000人の町には通勤ラッシュが生まれ、地元の店舗や企業にも変化の波が来ている。「客層がお金を呼んできている」。この好景気を受け、人件費が高騰。地元の求人会社によると時給1800円など熊本市より高くなり、今後、時給3000円の可能性も出てくるという。さらに、アパートやマンションも建設ラッシュとなり、地価や家賃も高騰している。

 このままインフレが続くと私たちの生活はどうなっていくのか。日経平均10万円時代は現実になるのか。『ABEMA Prime』で考えた。

■インフレ進展で日経平均10万円?「賃上げが消費に結びつくかどうか」

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 投資信託「ひふみ」シリーズ最高投資責任者の藤野英人氏いわく、「日経平均は10年間で3倍になっているので、これから3倍になるのも不思議な話ではない」。条件は“インフレの進展”だが、実現後の社会を楽観的に見ているわけではないという。

「今やっとインフレの時代を迎えつつあり、賃金や株価、不動産の価格が上がっていく。日本は構造的に人手不足なので、給与を上げて人材を獲得する必要がある。人件費を上げるためには、モノやサービスの値段を上げなければいけない。それができる会社は生き残れるけど、できない会社は潰れてしまう社会になる。日経平均10万円というと“良い時代が来ますね”と言われるが、逆に厳しい時代が来る」

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 春闘は13日に集中回答日を迎え、満額回答が相次いだほか、要求を上回る回答もあった。「かなり本気で賃上げをしようということが表れていて、非常に良いことだ。ただ問題は、長くデフレに慣れているので、賃上げをしてもモノを買わない、消費が弱いという可能性があること。そこが結びつくかがポイントになるだろう」と予測する。

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 吉野家の牛丼1杯の価格は、日本が468円、アメリカは約1500円。藤野氏は「日本もアメリカに近づいていくだろう。しかし、10年かけて1杯1500円になったとして、アメリカは3000円ぐらいになっているはず。まだ日本は安いという状況だと思う」との見方を示した。

■TSMC工場の隣町の唐揚げ店はなぜ経営苦?

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 TSMCが来た菊陽町の隣町にある唐揚げ店「自慢の塩からあげ専門店 空和 大津総本店」。バブルの影響で家賃が高騰するなど、経営に苦労しているという。店主の坂田英樹氏は「2月からいきなり家賃が倍に上がった」。さらに、道路拡張工事のため廃業・移転・休業を迫られているという。

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 客が減少するおそれから値上げができず、約900円のアルバイト時給も上げられないため、働き手も集まらない状態。TSMC工場の食堂スタッフは時給1500円、今後は3000円を超えるとも言われ、「やはり時給を見て判断される。今は募集を諦めている」と明かす。

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 藤野氏は「同じようなことが起きているのはニセコ地域で、外国人を中心に非常に賑わっている。全て外国人価格になっていて、弁当やラーメンが3000~4000円。価格を上げられなかった会社は撤退しているので、勇気を持てるかどうかが重要なのではないか」と指摘した。

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 店では弁当を550円から販売している。坂田氏は「1つ1000円ぐらいの値段をつけていくことも考えてはいる。そういう時代にしていかなければならないなと、地域の飲食店みんなで意識を高めていくべきだと思う」とした。

■「倹約をすることが良い時代ではなくなる。マインドセットの切り替えを」

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 今後インフレが加速していくことで、格差が生まれていくのではないか。藤野氏は「大事なことは労働者の行動だ。人生を自分で切り開くために、“給料を上げてください”、もしくは“給料を上げるような体制にするためにビジネスを抜本的に変えましょう”と要求し、受け入れられなければ転職する。アメリカの賃金が上がっていったのは、そのスパイラルが強く働いてきたからではないか。インフレが急激に起こると対応できない中小などは苦しいが、そこはビジネスマインドが必要。戦後に大きく成長したような気持ちが今こそ大事だ」と述べる。

 また、「デフレ時と違って、倹約が良しとされる時代ではない。その“勝ちパターン”が通用しなくなることをよく理解して、自分たちの行動を変えなければいけない」と投げかけた。

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 これに近畿大学情報学研究所所長の夏野剛氏は「1990年代前半まではインフレで、物価とともに給料が上がっていく循環、“将来はもっと明るい人生になるだろう”という楽観で消費へ向かっていた。そこに戻ろうという話だ。過度なインフレは社会不安をもたらすが、日銀の目標は2%。5%ぐらいまでは経済が活性化すると言われているので、あまり恐れることはない。マインドセットの切り替えが必要だ」と賛同する。

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 北海道のラピダス、宮城のPSMC、岩手と三重のキオクシア/ウエスタンデジタルなど、地方で大規模工場や海外企業の誘致が進んでいる。藤野氏は「今熊本で起きていることは、全国で起きる可能性がある。僕らはあらかじめ、それぞれの地域が対応できるのか、商売人としてどう備えるか考えないといけない。ただ、お金を持ってビジネスをしたい人が来るのはチャンスで、マイナスよりプラスのほうが圧倒的に大きいと思う。成功する人は虎視眈々と狙っていたり、儲けている人は苦情を言ったりしない。自分はどちら側になるのかが問われる」と推察した。(『ABEMA Prime』より)

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