日本全国を8つのブロックに分けた団体戦で行われる「ABEMA地域対抗戦 inspired by 羽生善治」準決勝第一試合、関東A 対 中部が3月30日に放送された。第6局では、藤井聡太竜王・名人(王位、叡王、王座、棋王、王将、棋聖、21)と羽生善治九段(53)によるゴールデンカードが実現。終盤で藤井竜王・名人が絶品の一手を放った場面では、仲間からも敵チームからも感嘆の声が上がった。
【映像】藤井竜王・名人の一手に驚くトップ棋士たちのリアクション
ファン待望のカードは、チーム中部の4勝1敗と勝利に“王手”がかかった第6局で実現した。関東Aにとってはピンチの局面とあり、予選対局で個人9勝1敗とチームをけん引した羽生監督自ら出陣を決断。タイトル戦でも激突した“藤井VS羽生”のスター対決の戦型は、角換わりが志向された。
後手の藤井竜王・名人は、両軍控室、解説ともに「なんですかこの手は!?」「いつ考えているんですかね?」という指し手を連発。“最新中の最新”かつ互いの持つすべてをぶつけてやろう、とばかりに盤上に火花を散らした。羽生九段も絶妙なバランス感覚を見せる中で、攻勢へとギアチェンジ。羽生九段の攻め、藤井竜王・名人の受けで激戦へともつれ込んだ。
藤井竜王・名人はやや薄い陣形ながら、持ち前の受けの技術で羽生九段の曲線的な攻撃に対応。先手からの攻めは続けることができないと判断したか、藤井竜王・名人は遊び駒を使いながら飛車の横利きを通す△5二銀。この一手には、関東A作戦会議室の佐々木勇気八段(29)から「いや~、この銀は絶品だなー」、チーム中部・監督の杉本昌隆八段(55)からは「磁石のようにくっつくなあ。大山名人が居飛車をやったらこんな感じですよね」の声が上がった。
レジェンド・羽生九段の猛攻を冷静に受け切ってリードを拡大する勝負術に、杉本監督も思わず「何ていうか…、強いね(笑)」と笑うしかない様子。随所で受けの強さが光り、見事に白星を手にした。藤井竜王・名人は「こちらが受けに回る展開で、かなり際どい変化があってちょっと危ないかなと思いながら指していたんですけど、途中からは少し手厚い形にできたかなと思います」とコメント。この勝利により、チーム中部の決勝進出が決まった。
◆ABEMA地域対抗戦 inspired by 羽生善治 全国を8ブロックに分けた「地域チーム」によって競う団体戦。試合には監督とチームから選ばれた出場登録棋士の4人の計5人が参加可能。試合は5本先取の九番勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールール。試合は1試合以上出場する「先発棋士」と、チームが3敗してから途中交代できる「控え棋士」に分かれ、勝った棋士は次局にも出場する。先発棋士は1人目から順に3人目まで出場し、また1人目に戻る。途中交代し試合を離れた棋士の再出場は不可。大会は2つの予選リーグに4チームずつ分かれ、変則トーナメントで2勝すると本戦進出。ベスト4となる本戦は通常のトーナメント戦。
(ABEMA/将棋チャンネルより)