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【映像】無敗の日本ヘビー級王者が敗れる波乱…病院直行も

 無敗の日本ヘビー級王者、但馬ブランドンミツロ(KWORLD3)が負けた。3月31日、名古屋国際会議場で行われた「3150FIGHT vol.8」に出場した但馬は224ポンド契約8回戦で、アレクサンドル・ジュル(ルーマニア)に判定負け。あらん限りの闘志を見せたものの、試合後に病院に直行する惨敗となった。

【映像】無敗の日本ヘビー級王者が敗れる波乱…病院直行も

 イベント終了後、3150FIGHTの亀田興毅ファウンダーが敗れた但馬について言及した。

「ミツロは今日のカードの中で一番厳しい試合になると思っていた。相手は世界を知っている選手。際どいマッチメークだと思っていたけど、勝てる可能性を感じていたので……」

 この日のイベントは重岡優大、銀次朗兄弟(ワタナベ)のダブル世界タイトルマッチを筆頭に、元2階級制覇王者、亀田和毅(TMK)の再起戦もあり、盛りだくさんの内容。終わってみれば、優大が王座を失うというショックと並び、但馬の敗戦もまた衝撃的だった。

 日本重量級期待の星、但馬はデビューから10連勝(8KO)をマーク。アマチュアで豊富な実績を誇り、プロでは日本人初のヘビー級チャンピンという壮大な目標を掲げ、3150FIGHTの全面的なバックアップを受けてキャリアを進めていた。

 その但馬に今回、用意された相手がジュルだった。20勝(8KO)5敗という戦績、38歳という年齢だけ見れば、「それほどの選手ではないだろう」と感じるかもしれない。ただし、そのキャリアをチェックしてみると、元WBCクルーザー級王者のクリストフ・ウロダルチェク(ポーランド)を筆頭に、世界挑戦経験のあるドミトリー・クドリャショフ(ロシア)ら強豪との対戦経験を豊富に持つ。世界各地のリングに上がっているところにもたくましさがあふれていた。

軽量級中心のアジアにおいて、但馬は対戦相手に、それ以前に練習相手にも恵まれないキャリアを送っている。そんな日本人重量級選手にとって、ヨーロッパの強豪選手との試合でもまれたジュルは「危険な相手」に違いなかった。亀田ファウンダーが「厳しい」と認識しながらも、この試合を組んだ理由は、どこかの段階で勝負をかける必要があったからだ。

但馬はヘビー級の一つ下に新設されたブリッジャー級(224ポンド=101.6キロ)リミットに設定された試合に向け、十分に体を絞ってリングに上がった。昨年4月の試合が127キロで、今回が101キロだから、1年で26キロ減量したことになる。試合が始まると、但馬はスピードに乗ってジャブ、ボディブローでジュルに仕掛けた。

しかし、経験豊富なジュルは但馬のアタックを冷静に対処。しっかりガードを上げてワンツーを打つオーソドックスなスタイルで日本ヘビー級王者に迫った。2回には打ち下ろしのワンツー、左フック、さらには右アッパーで追い込み、さらに右アッパーで追撃すると但馬がキャンバスに転がった。立ち上がった但馬はけんめいにボディ打ちで事態を打開しようとするが、ダメージは明らかだ。

その後も余裕の出たジュルがワンツー、アッパーを駆使してペースを掌握。但馬は鼻血を流し、目も腫れた。ガッツは見せるものの、いかんせん被弾が多く、苦しい展開だ。結局、形勢は変わることなく終了のゴングが鳴る。ジャッジ3人とも79-72をつける、但馬の完敗だった。ダメージを負った但馬は取材に応じず、そのまま病院に搬送された。

 日本人初のヘビー級チャンピオンを目標に掲げる但馬が今回の試合で体重を落としたのは、まずはブリッジャー級、あるいはもう一つ下のクルーザー級で上位進出を目指すプランを立てたからだ。世界的にもクルーザー級からヘビー級に転向する選手は多い。但馬の180センチという身長を考えても現実的な判断だと言えるだろう。

 この路線で上位を狙う上で“テストマッチ”と位置づけたのが今回のジュル戦だった。亀田ファウンダーは、ジュル戦をいい形でクリアすれば「年内に世界挑戦の可能性もある」と事前に話していた。WBCブリッジャー級王者、カルシュ・ロザンスキー(ポーランド)と既に接触しているとも明かした。

 今回の敗北でこれらの青写真はすべて振り出しに戻った。ただし、嘆くことはない。なぜなら但馬の目指すヘビー級やブリッジャー級、クルーザー級にいたっても、日本人がいまだ経験したことのない階級だからだ。

 そもそも但馬がプロデビューしたのは2022年の4月で、まだ2年しかたっていない。2年間で11試合は多いほうだが、裏を返せばそれだけ急ピッチで仕上げてきたということだ。ここはいったん立ち止まり、ターゲットにする階級を含めて、じっくりとプランを立て直したい。

 亀田ファウンダーはこうも言った。

「ミツロはあれだけパンチをもらっても前に出続けた。ファイティングスピリッツがあった。ボクサーにとって一番大事なところですよ。あれがあるから、自分もまだチャンスを作りたいと思う。一度負けたからって終わりじゃないですから」

 重量級世界チャンピオンへの道は険しい。ちょっとくらいつまづくのは当たり前だ。だからこそ夢があり、やりがいがある。但馬ブランドンミツロの挑戦はまだ序盤戦である。

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