子育てしやすいメリットがある反面、その「仲の良さ」が場合によってはリスクになってしまうケースもあるという。
「仲が良いと互いが気持ちよく過ごせることを重視する。親は子どもに対しては様々な思いがあっても『子どもに嫌われたくない』などと2人の仲を壊してしまうような言動を避ける。本来ならば言うべきことも子どもに言わない」
そう話すのは目白大学心理学部 特任教授の黒沢幸子氏。黒沢氏によると、カウンセリングの事例などで“理解のある優しい親”がここ最近増えているという。
共働き家庭が増えて、親子の時間が限られているため、一緒の時間を波風立てずに過ごしたいという気持ちが強くなっていることが背景にあるという。
そんな「優しい親」が陥りがちなのが子どもへ矛盾した2つのメッセージを送ってしまうダブルバインド=二重拘束だと黒沢氏は話す。
「『あなたの好きなことをしていいよ』と言ったのに、子どもが好きにテレビを観て勉強をやらないと『宿題やったの?』『試験前でしょ』などと言う。自分の責任でやりなさいと言われているから自分なりに動こうとしているのに結局口を出されてしまう。言っていることとやっていることが違う。私たちはこれをダブルバインド=二重拘束と呼んでいる」
理解ある言葉がけをする一方で、子どもを信頼していないメッセージを無意識に送ってしまうのだ。子どもはその不明瞭さに直面し、空気を読めてしまう子どもは仲良しの親を安心させようと、必要以上に負担を抱え込んでしまうという。
「子どもはどうしていいか分からなくなる。あるいは『何をやってもダメなのよね』『結局、あなた(親)の気に入る通りにやらなきゃ』となってしまう」
さらに、そんな親は子どもの不安や怒りに対して一緒に揺れ動いてしまう傾向にあるという。
黒沢氏は子どものカウンセリングをするなかで「本当の悩みを打ち明けたら、うちの親潰れちゃう。悩みは親に言えない」などの声を聴いたという。
「子どもはちょっと愚痴を言って『まぁそういうこともあるよね』と(親に)気分転換させてもらえればそれで済むのに一緒になって悩んで揺れてしまい、周りに電話かけたり訴えるなど親の方が動いてしまう。そうなると子どもの不安はさらに増幅する。(親が不安定だと子どもは)ネガティブなことを親に出せなくなってしまい、良い面だけ、気持ちのいいところだけ繕うようになる」
このダブルバインドや、不安を家で吐き出せない状況が続くと子どもの自我が育ちにくくなったり気持ちを伝えるのが苦手になったりすることもあるという。
仲良し親子の落とし穴に陥らないためにどうすればいいのか?
「『子どもが楽しいことしか自分に言わないのでは?』と思ったら、子どもがネガティブなことを表現した時にしっかり受け止める覚悟を持つ。あるいは、自分がダブルバインドをしてしまっているのであれば、それに気付いた時に少しずつ減らしていけばいい。私たちはもしかしたら完璧になろうと頑張りすぎて、逆に子どもに負担かけているところがあるかもしれない。子どもなりの良さ、自分とは違う良さ、自分とは異なる様々な力を見つけて、伸ばそうとすることが大事だ」
(『ABEMAヒルズ』より)
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