政府は26日、日本がイギリス・イタリアと共同開発する次期戦闘機について、第三国への輸出を容認する方針を閣議決定した。対象は2035年の配備を目指す次期戦闘機のみ。実際に輸出する際は、個別案件ごとに閣議で決定する。また、輸出先は、防衛装備品・技術移転協定の締結国に限り、現に戦闘が行われている国を除く。
これまで、殺傷能力のある武器の輸出を制限してきた日本。イギリスとイタリアは、輸出することで生産を増やし、低コストにすることを求めていた。断れば、日本は専守防衛に必要な次期戦闘機が開発できなくなる状況だった。
この政策転換は、憲法に反していないのだろうか。そして、輸出解禁で日本は何を得て、何を失うことになるのかを『ABEMA Prime』で考えた。
■次期戦闘機の必要性「日本の防衛力を維持するため」
輸出に反対する防衛ジャーナリストの半田滋氏は「具体的に輸出をする場合、その都度閣議決定をする。これは政府の考え方をそのまま容認することになっている。野党の意見は入っていないし、国民の声を聞く場面もなく、歯止めになっていない」と訴える。
そもそも、なぜ次期戦闘機が必要なのか。元航空幕僚長の田母神俊雄氏は「日本の防衛力を維持するため。航空自衛隊の戦力が遅れをとってしまう」と述べる。
「今、航空自衛隊はF-35をアメリカから輸入で調達している。アメリカがまず戦闘機の開発をするが、数年経って能力が向上したときに、一番古いソフトウェアを搭載したF-35を日本に渡すことになっている。つまり、同じF-35でも日本はアメリカに勝てない状況でしか輸出されない。これはどの国も皆そうで、武器輸出の原則だ」
これに半田氏は「自国で開発する以外に満足な戦闘機を手に入れられないのはおっしゃるとおりだ」としつつ、「アメリカはF-22やF-35という第5世代機を作っている。なので、無人機と連携する第6世代機を作るというのが日英伊に課せられた命題だ。しかし、日本は第5世代機を作っていないので現実的にできるのだろうかと、大きなハードルがあると思う」との認識を示した。
■「殺傷兵器を輸出するのが日本のあるべき姿なのか」「外交交渉で強い立場になれる」
1967年に佐藤栄作内閣が「武器輸出三原則」を表明した後、2014年の「防衛装備移転三原則」で一部緩和。2023年12月には「防衛装備移転三原則」で運用指針が改定され、ライセンス完成品のライセンス元国への輸出を可能とし、迎撃ミサイル「PAC3」をアメリカに輸出することが決まるなど、世界情勢に合わせ変化してきた。
田母神氏は、次期戦闘機の輸出は必要だという立場。「他の国が皆輸出している中で、日本だけ輸出しないのは平和国家として自らの手足を縛っている。軍事力強化に対して“戦争をするのか”と言われるが、世界平和を維持しているのは軍事力だ。強い軍事力を備えて、最後まで戦い抜く体制でいることが、相手の侵略を抑止することになる。そして、日本で作った武器を他国に使わせることは、その国に対する外交交渉で強い立場になれる。“言うことを聞かなければ戦闘機を動かせなくする”という無言の圧力が常時かけられる」。
一方で半田氏は、「日本は専守防衛で、他国の侵略を跳ね返すために必要な軍事力を持つのは当たり前のこと。開発自体に反対はしていない。しかし、日本には平和憲法があり、その前提にしたがって良し悪しを考えなければいけない。戦闘機は明らかな殺傷兵器だ。それを輸出して日本の企業が潤っていくのは、本来あるべき姿とは異なっていると思う。憲法の安全保障政策は“必要最低限の実力を行使すること”であり、他国の戦争に加担することは全くできない」との見方を示す。
これに田母神氏は、「この憲法はアメリカに押し付けられたもので、軍事力が持てないという問題があることは半田さんもご承知のとおりだ。それをすべて守るというよりも、憲法を変えることも踏まえ、日本が本当に平和国家として、あるいは強い国として生きていけるかたちを考えるべきだと思う」と指摘。
また、ロシアによるウクライナ侵攻を引き合いに「1994年のブダペスト覚書は、ソ連崩壊に伴ってウクライナが持っていた核兵器をロシアに引き渡せば、イギリス・アメリカ・ロシアがウクライナの安全を保障する条約だ。しかし、今回の戦争が始まっても、アメリカもイギリスも参加しない。バイデン大統領はエスカレートして核戦争になると困るから参加しないと。それによって、中国が日本に侵攻してきた時に、アメリカは助けてくれないことが明らかになったわけだ。やはり日本も自分たちで守る態勢を整えなければ危ない」とした。(『ABEMA Prime』より)
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