熟練された指し回しに、両軍のトップ棋士が震えた。日本全国を8つのブロックに分けた団体戦で行われる「ABEMA地域対抗戦 inspired by 羽生善治」準決勝第2試合、関東B 対 中国・四国が4月6日に放送された。チーム中国・四国にとって勝負所の第7局を担った菅井竜也八段(31)は、関東Bの増田康宏八段(26)に対し豊富な穴熊の経験値を活かし攻略。敵チームも「さすがです…」とお手上げの完勝を飾った。
中国・四国の2勝4敗と、ピンチで迎えた第7局。ここではチームのエースとして予選突破の原動力となった菅井八段が登板した。1回目の登場となった第2局では終盤にミスが出て逆転負けを喫したが、第4・5局でチームに白星をもたらした黒田尭之五段(27)の闘志あふれる将棋を受け、「ちょっと考えすぎていた。バンバンやってみようかな」と発奮。関東B・増田八段との対局に向かった。
先手の菅井八段は中飛車から、チームメイトからも「見たかった!」と声が上がった穴熊を志向した。仲間の気迫からパワーを受けた菅井八段は、強固な陣形を活かし積極性を見せ後手にプレッシャーをかけていく。8八金型から後手を引きつけると次々に増田七段の手を封じ、ガツンと▲4五銀。この一手には、関東B監督の渡辺明九段(39)も「いや~、そういう将棋なんだ~」と“痛いところを突かれた”の表情。仲間からは「うおー!これが穴熊か!ノータイムで4五銀打てるのはさすがだよねー!」「これが本来の“菅井将棋”って感じしますよね!」と歓喜の声が上がった。
持ち味を存分に発揮しぐんぐんとリードを拡大させた菅井八段に、関東Bの永瀬拓矢九段(31)からも思わず「さすがです…」の声が漏れるほど。穴熊の豊富な経験値を活かし、切れ味の鋭い攻めを繰り出し勝利。解説を務めた黒沢怜生六段(32)は「角交換して取った金が移動して捌いていくという気持ちの良い手順。完勝でした」と絶賛した。
危なげのない勝ちっぷりで、チームの危機を救った菅井八段は、「実戦的に上手く指せた」とホッとした表情を見せた。
◆ABEMA地域対抗戦 inspired by 羽生善治 全国を8ブロックに分けた「地域チーム」によって競う団体戦。試合には監督とチームから選ばれた出場登録棋士の4人の計5人が参加可能。試合は5本先取の九番勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールール。試合は1試合以上出場する「先発棋士」と、チームが3敗してから途中交代できる「控え棋士」に分かれ、勝った棋士は次局にも出場する。先発棋士は1人目から順に3人目まで出場し、また1人目に戻る。途中交代し試合を離れた棋士の再出場は不可。大会は2つの予選リーグに4チームずつ分かれ、変則トーナメントで2勝すると本戦進出。ベスト4となる本戦は通常のトーナメント戦。
(ABEMA/将棋チャンネルより)