【写真・画像】SNS投稿で岡口基一裁判官が罷免 “表現の自由”どこまで?「意図せず傷つく場合」どう考える? 1枚目
【映像】岡口氏の投稿内容と処分(一部)
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 裁判官を裁く国会の弾劾裁判所が下した判断は、罷免だった。実名のSNS上で殺人事件の遺族を傷つける投稿などをして訴追されていた、岡口基一元裁判官。「首を絞められて苦しむ女性の姿に性的興奮を覚える性癖を持った男。そんな男に無惨にも殺されてしまった17歳の女性」。これらの投稿が、裁判官としての威信を著しく失う非行だと認定された。

【映像】岡口氏の投稿内容と処分(一部)

 弾劾裁判での罷免は戦後8例目。これまでは児童買春・盗撮・ストーカー行為などを行ったとする例があるが、表現の行為を理由としたのは今回が初めてのケースだ。少なくとも今後5年は法曹資格を回復することができず、弁護士活動もできなくなる。

 裁判官によるSNS発信の是非、そして表現の自由について、『ABEMA Prime』で弾劾裁判弁護団のメンバーの1人・大賀浩一弁護士とともに考えた。

■「罷免事由すべてが悪く取られてしまっている」

 岡口氏が訴追されたのは、17歳女性殺害事件をめぐる投稿や犬の飼い主をめぐる投稿など、2つの事案の13行為。遺族・被害者の尊厳・感情を傷つけ、抗議を受けても反省・改善がないことを罷免の理由としている。

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 大賀氏は「反省や改善なく長期・断続的に、遺族に向けて直接言い続けていたらアウトだ」との認識を示す一方で、「罷免事由の中には、他の弁護士の投稿に“そうだ”と言っただけのものや、遺族に向けた批判ではないつもりのものも含まれていて、すべてが悪く取られてしまっている。判決要旨では、実は20ページまでこちらが勝っている。どの論点でも“訴追委員会の言うことには理由がない”“弁護人の主張はもっともだ”と書いてあるわけだ。しかし、後半のほうで“著しい非行になった”といきなり変わる。同じ人が書いているのか?と思うぐらいだ」と疑問を呈する。

 投稿をめぐり岡口氏は、2016年6月に口頭で厳重注意、2018年10月に戒告を受けている。「ある種の対立構造になっていて、裁判官が社会的な表現や発信をすることを最高裁が押さえつけようとしているという思いが彼にはあった。そのため、注意として受け止められなかった部分はあるかもしれない」と付け加えた。

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 前明石市長で弁護士の泉房穂氏は「裁判官や検察官、弁護士の世界は特殊なルールがまだ残っている。特に裁判官は事なかれが強いところだから、最高裁はちょっと跳ねたようなことを相当嫌う。今回もご遺族や犬のことは本筋ではなく、変わった裁判官を排除したいというのが本音だったのではないか」との見方を示す。

 それを受け大賀氏は「裁判官弾劾法で、著しい非行という場合には最高裁判所に訴追請求の義務がある。ところが、2回も戒告をしておいて訴追請求はしていない。最高裁はちょっと眉をしかめるけどクビにするほどではないと考えていたのに、国会が乗り出したというのが大事なところだ」と指摘した。

■ひろゆき「裁判官はSNSをやってはいけない、ということにしか思えない」

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 岡口氏は、著書『要件事実マニュアル』が弁護士のバイブルとして知られ、SNSに上半身裸の画像などを投稿したことで“白ブリーフ裁判官”の異名もついている。大賀氏は「雲の上や敷居が高いという裁判官のイメージを、自分を貶めることによってなくそうということのようだ」と意図を説明。

 一方、ネットでは「一般人と違い高い倫理観が求められる」「司法の人間がSNSに事件に関する投稿をすることに強烈な違和感」という声もあがっている。ひろゆき氏は「裁判官も同じ人間で、こういう人たちが判断するものだというのを大衆は知るべきだ。表に出て喋るメリットがなくなり、見えなくなっていくほうが社会にとってよくないと思う。ルールを明確にするべきで、今のままだとSNS自体をやってはいけないということにしか思えない」との考えを述べる。

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 岡口氏は1日10~15投稿を約8年続け、Facebookは法曹関係者向け(友人限定と一般公開を使用)、Twitter(現X)は一般人が面白いと思うような投稿にするなど、ネットを使い分けていた。また、次男によると、岡口氏が裁判官になった時の手紙に「僕は裁判官という保守的な世界を変えたい」と書かれていたという。「そういう信念をずっと持っていて、裁判官の表現の自由を目指していると考えている」と、2018年の番組出演時に話している。

 テレビ朝日平石直之アナウンサーは「プライベートな投稿なのだが、裁判官という背景によって公私を分けられない難しさがあるのではないか」「ひろゆきさんのポストが及ぼす影響と一緒だと思う。その中で、本人が意図していないのに傷つけてしまう場合があることをどう考えるべきか」と投げかける。

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 大賀氏は「今回は、やったことと処罰のアンバランスがあまりにも大きい。我々は岡口さんの罷免を食い止めるだけではなく、他の裁判官に萎縮効果が及ばないことを目指してきた。ところが蓋を開けてみると、本人が意図していなくても、結果として受け手が傷つけられたら罷免だということになってしまう。この影響の大きさを、国会議員の裁判員たちはちゃんと想像しているのか?と感じる」と語った。(『ABEMA Prime』より)

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