能登半島地震発生から3カ月余り。6日には「のと鉄道」が全線で運行再開するなど、復旧が進んでいるように見えるが、周辺に目を移すといまだ壊れた家屋がそのまま。倒れた家屋や瓦礫撤去の中核となるボランティアの数が、今なお足りていないという。
その理由の1つとされているのが、「能登への不要不急の移動は絶対に控えてください」という、二次被害を防ぐための馳知事の当初の呼びかけ。これがネットで拡散され、ボランティア自粛論へと曲解されたという意見も。
能登の現状と、今後ボランティアを増やすために必要なことについて、『ABEMA Prime』で被災者と支援者とともに考えた。
■「二次災害が起こるのではないかという怖さも」
能登半島地震の復旧・復興について財務大臣の諮問機関は9日、人口減少と財政上の観点から、集約的な町づくりの必要性を提言した。これに馳知事は「過度な投資にならないようにと受け取れるような表現は、冷水をバケツでぶっかけられたような気持ちだ」と不快感をあらわにした。
この提言に輪島市の漆芸家・桐本滉平氏は「まだまだ支援が足りない状況。金銭的にも人員的にも支援が見込まれているだろうと、我々は淡い期待を持っている中で、この報道はありがたくないというのが率直な感想だ」と話す。
石川県の12日14時時点の住宅被害状況は、全壊が8241棟、半壊が1万5326棟、一部破損が5万3011棟。「震災が発生した日から何も変わっていないエリアが多すぎる。全焼した河井町の一部で、瓦礫が撤去できている場所はうちだけだ。徐々に倒壊していく家も少なくない。ダークツーリズムのようになって、いろんな方々が動画を撮りながら街を歩いている状況に心が痛む」。
さらに困っているのが、収入・仕事と住む場所がないこと。「僕は今31歳だが、転居届を出す周りの同世代は多い。また、輪島は7割の介護福祉施設が閉鎖していて、避難所から出れない方がほとんどだ。住む場所も仕事場もなくした個人事業主も多い中で、車中泊をしている人もいる。なんとかしたいが、本当に収入がなく、家賃を払って県外に出て生活するのも難しい。支援物資の配布も炊き出しも4月1日からなくなっていて、二次災害が起こるのではないかという怖さを感じている」と語った。
■ボランティア人員と仕事がマッチしきれていない状況も
「災害NGO結」は、発災翌日の1月2日から現地入り。七尾市を拠点に、ベースや物流、炊き出しなどの班に分かれ、これまでに約2500人が活動してきた。前原土武代表は「能登半島という立地と、元々人口が少なく、土木や解体、大工、水道設備、精密機械などすべての業種が少ない所が被災している。外から入ってもらわないといけないが、宿泊する場所がない。七尾市の下のほうだと復旧は進んでいるが、そこから通うのにも1~2時間かかってしまう」と説明する。
災害ボランティアセンター経由の発生3カ月の参加のべ人数を見ると、東日本大震災が約43万人、熊本地震が約10万人だったのに対して、能登半島地震は約1万4000人。前原氏はボランティア不足の理由として、コーディネーターがいないこと、人員と仕事がマッチしきれていないこと、専門的知識が必要な場所で人が足りていないことをあげる。
「リディラバ」代表の安部敏樹安部氏は「1、2カ月前、例えば七尾市では市長が個人の携帯番号を書いて、“なにかあったら俺に連絡をしてくれ”と。(当時は)あれこれ言っても、行政機関がちゃんと上にあげて処理されているか、情報が統合されているかわからない。組織と指揮命令系統としてはかなり厳しい状態だった」と指摘。
石川県の創造的復興プラン(仮称)骨子では、9年後(2032年度末)をめどに段階的に復興、単なる復旧ではなく創造的復興を目指すとしている。2年後(2025年度末)までに、罹災証明「半壊以上」の建物の撤去完了等が目標となっている。
安部氏は「大震災の復旧・復興は続いていく。10年どころか15年、20年続くもので、福島も中盤戦ぐらいだ。そのマネジメントのノウハウは正直、ほとんどの自治体は持っていない。とにかく今やらなくてはいけないことがいっぱいあって、自分たちの仕事を頑張っているものの、10年後に振り返ると“うまくいっていなかった”と評価されてしまう状況に向かいつつある」との懸念を示した。
■「片付けだけではない」今&これからできるボランティアは?
では、どうすればボランティアを増やすことができるのか。安部氏は「受け入れる時に、“何をしてもらうか”という仕事を作る作業がある。これは住民がいないとニーズが上がってこないもの。なので、まず水を戻して、仮設住宅になるだろうが住民が戻って生活する環境ができて、初めてボランティアが回せるようになる」と述べる。
さらに、「今まさにボランティアに行くべきだ」と提示。「ボランティアツーリズムの形が一番良いだろう。例えば、前原さんと一緒に炊き出しをするとか、桐本さんの所に行ってお話を聞いてもいい。地域の課題解決にそれほど短期的には効かないが、長期的に見ると地域の人や復興の支えになることは間違いない」とする。
前原氏は「片付けだけがボランティアではない。炊き出しもそうだし、お風呂のお湯を届けたり、最近はお茶会のような形式で傾聴やお話をすることもある。厳しい現状の所もあるが、すべてが危ない家屋ではない。安全な建物からの家財出しは手伝えるし、瓦を拾ったり、倒壊しかけているブロック塀の撤去もある。ゴールデンウィークはたくさんの人に来てもらいたい」という一方、「まだコーディネートが足りていない」と前述の課題をあげた。
桐本氏は「ボランティアに来ていただき、行政にはさらなる手厚い支援を求めたい」と訴えた。「まだ復興できていない中でも、なんとか能登にしがみついている人間は数千人いる。自分の生活がどうなるかというのは、震災とはまた違う、人口が減って能登が消滅してしまうのではという壮大な問題と向き合っている感覚がある。なんとか被災者で助け合うことについて、“共倒れするのではないか”と批判をSNS上でいただくことも多い。我々はこれを美学だとは思っていないし、とにかく必死に日々を生きている。もっと現状を知っていただきたい」。(『ABEMA Prime』より)
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