息ぴったりのニンニン三人衆は“卒業”だ。将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2024」は、今大会からより厳選された11人のリーダーがドラフト会議に出席、エントリーチームと合わせて計12チームで戦う。稲葉陽八段(35)は、出口若武六段(28)と服部慎一郎六段(24)という勢いのある若手と2年連続で同じチームを組み、前々回は優勝、前回も準優勝と大活躍した。ファンからすれば、3年連続で同一メンバーになるかが注目だったが、ドラフト会議を前に「今年は全く違うチームを組んでみようかな」ときっぱり。違った環境を作ることで、各棋士がそれぞれ成長することが目標だ。
後輩2人の大活躍により、勢いそのままに優勝した前々回と比べ、前回は苦戦が続いた。「予選からかなり厳しい戦いは続いて、勝ち上がっていく中で結束していたチームになったかなと。フルセットもすごく多かったですし、2年前とは昨年は、別のチームのような戦い方になったので、面白い戦いができました」と、同一メンバーでも異なる戦いができた充実感があった。
もともとは波の激しい若手2人を引っ張りながらと思っていたところ、1年目はノリノリのまま優勝。むしろ2年目の方がイメージに近くなった。「昨年は2人を精神的な部分でも引っ張っていけたらいいなという部分がある程度体現できたので、そういう意味では収穫はありましたね。最初に1勝4敗とか4連敗とかした時に、諦めてしまうともうそこで終わりなんですけど、そこで勝っていくと雰囲気変わったりするので、それがチーム戦の面白さではあると思います」と、醍醐味も十分に味わいつつ、後輩たちにもしびれる経験を積ませることができた。
稲葉・出口・服部の3人でやることは存分にできた。やはり戦う者としては、常に次を目指さなくてはいけない。「やっぱり新しい人と組んだ方が、チームの雰囲気だったりとか、どういう作戦を準備するであるとか、自分自身成長する部分はあると思うので、今年は全く違うチームを組んでみようかなとは思っています」と、新チーム誕生を断言した。
構想を聞くと、初手からガラリと変えてきた。「ベテランの棋士を選んでみようかなとは思っています。師弟戦であるとか地域対抗戦とか、ちょっと年上の棋士と組んだ時の成績が個人的にあまり良くない。でも逆に自分自身そういうところで良い成績を残せるようにしたいです」と、チームを引っ張る役割を少し委ねて、その分のびのびと指すことで結果を出すというイメージだ。
30代も半ばになり、棋士としてもいろいろと思うところがある。そんな時に大先輩の意見を聞きながら、今後も続く棋士人生の糧にしたい。「だんだん長く活躍することの難しさを感じるようになってきました。大先輩の棋士がどういう風に将棋に向き合っているのかを実際に感じることは、これからの人生にも大きいかなと思います」と、若手のためにと動いた2年とは違い、今年は自分のためのドラフトと言ってもいいだろう。
唯一タイトル戦に出場した2017年から早7年。毎年、勢いのある若手がどんどん入ってくる中で、自分の立ち位置を確保するのも難しい、厳しい勝負の世界だ。そんな中で、自分はどんな棋士として生きていくか。今年のドラフトの結果は、稲葉八段の人生にも大きな影響がありそうだ。
◆ABEMAトーナメント2024 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり今回が7回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士11人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全12チームで行われる。予選リーグは3チームずつ4リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)