“紙の本”買わない時代の書店生存戦略
【映像】「普段はAmazonで本を買うのか?」現役・書店店長の回答
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 書店が1つもない“無書店自治体”が全国で27.7%にのぼるなか、齋藤健経済産業大臣の音頭で、経済産業省が支援に動き出し、書店経営者らと業界の課題や展望などの意見交換を試みた。

【映像】「普段はAmazonで本を買うのか?」現役・書店店長の回答

 一方で、新たな手法を取り入れた書店が、“本の街”として知られる東京・神保町に生まれた。直木賞作家の今村翔吾さんが経営し、企業や個人が本棚を借りて、思い思いの本を販売するシェア型の店舗だ。減り続ける書店に、政府の支援は必要なのか。そもそも紙の本の行く末は――。『ABEMA Prime』では書店の未来を考えた。

■街の書店を国が支援へ

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 国による支援をめぐっては、2024年3月5日に「書店振興プロジェクトチーム」が立ち上げられ、新たな支援策が検討されることとなった。4月17日に斎藤大臣が経営者らと意見交換したところ、補助金申請の手続きの簡素化やキャッシュレス決済の手数料負担が大きいなどの意見が上がった。齋藤大臣は「図書館、ウェブ、本屋、この3つが共存していく世界を目指したい」と語っていた。

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 「佐賀之書店」店長の本間悠氏は「現状をなんとかしようと思ってくれているのは、素直にありがたくうれしい」と語る一方で、支援案としてカフェ経営やイベント開催が示されたことには「結局、本は売れないから、他で利益を出せと言っているのと等しい。それが推進されると、従来の“本だけを扱う書店”は残るのが難しいのではないか」と話す。

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 また、今と比べて昔は本屋に行く理由があったという。毎週『週刊少年ジャンプ』を買っていた人は、書店が何もしなくても月4回来店するため、売上の半分が雑誌という時代もあった。流行りのカフェ併設店などはあるが、「本を買った人がついでにコーヒーを飲む」ケースが多いのではないかと指摘した。

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 書籍の販売金額は、年々減少している。出版指標年報2023年版によると、1996年の1兆931億円をピークに、書籍推定販売金額は右肩下がりで、2022年には6497億円にまで減った。

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 出版社「幻冬舎」の編集者で、実業家でもある箕輪厚介氏は、「フラットに考えたら、そりゃ読まない」と一蹴し、「スマホがあって、無料で映画やLINEができる中で、相対的に下がるのは当たり前。変に保護してしまうと、健全な競争がなくなり、時代にあった変化が阻害され、もっと時代から取り残されてしまう」と問題視する。

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 近畿大学情報学研究所所長の夏野剛氏は、タイパ(タイムパフォーマンス)や情報量の観点から「コロナ禍で本を見直す機運が生まれてきた」と説明し、「『この本読みたい』と決め打ちするなら、Amazonで買えばいい。『なんとなく』で、どんな本を読んでいいかわからないときに本屋さんへ行く。書店が新しい作家やIP(知的財産)との出会いの場に変わりつつあり、品ぞろえやコンセプトが重要になってきている」とした。

■電子書籍の普及による影響

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 紙の本ではなく、電子書籍も普及しつつあるが、8割はマンガなのが現状だ。出版科学研究所「出版指標 年報 2023年版」では、2014年に総額1144億円だった電子書籍市場(電子コミック887億円、電子書籍192億円)が、2022年に5013億円(同4479億円、446億円)に拡大したが、マンガ優勢は変わっていない。

 電子コミックの利点として、夏野氏は「1冊読むのに30分かからない。単行本だと数時間から数日かけて読むが、30分で読めるものを持ち運ぶのは嫌だ」と解説し、「本当に好きな書籍は、電子に加えて、物理的なものを2度買いする人も多い」との見方を示す。

 背景には「1つのマンガが、全国民に読まれることがあまりない」という実情があり、「趣味に応じた“推しの作品”がある。たくさんの種類から、自分にハマったものを好きになって、次が出たらまた買う。この多様性がカギではないか」と述べた。

■本屋さんが生き残るには

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 では具体的に、どんな手段で書店は生き残るのか。本間氏はその策として、書店で選んだ書籍を電子で買う場合に、QRコードを読み込むなどで、書店にも紹介料が入る形にすることを挙げる。「電子書籍が売れた場合に、うちに少しでも手数料が入るようにならないか。現状はショールーム代わりで、『これよさそうだね。Amazonで買おうか』といった客の会話が聞こえてくる」。

 また、本を非課税にして、消費税10%分を書店の利益にすることや、出版業界内での書店の取り分を変えることなども効果的だと語る。現状では、本が売れても利益は2割にとどまり、万引きされれば、その5倍を売る必要がある。「他国では非課税や軽減税率の対象となる事例もある」と補足した。

 箕輪氏は、書籍をコンテンツにおける“ウイスキーの原液”と例え、「YouTubeで取り上げられると、炭酸が混ざったハイボールになり、飲みやすくなる。ただ出版社も書店も、原液にこだわっている。動画もイベントもやって、コミュニティーを設計するのが、生き残るための時代の変化だが、現状ではそこを他者に取られている」。

 その上で「利便性ではテクノロジーに負ける」と苦言を呈する。「便利戦争からいかに離脱して、意味合いを持たせるか。スナックも『ママに会いたい』と、気づけばお金を使っている。書店は本来、町に根付いた知能のたまり場だった。そこをもう一度復活させることが必要ではないか」と提案した。

(『ABEMA Prime』より)

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