災害時のデマ投稿などフェイクニュースの存在が近年問題になる中、若い世代にファクトチェックのスキルを身につけてもらおうと大学生らがサービスを開始した。
「僕たちが用意した“ニュース記事”から間違った情報を探して見つけてもらう」
慶應義塾大学3年の今井善太郎さん(22歳)。今井さんたちが運営する学生団体「クラスルームアドベンチャー」は2023年から、謎解きを通じて“フェイクニュース”を見破る能力を培う「レイのブログ」というサービスを展開。
これまで、全国の学校や会社の社員研修など計2000人以上にサービスを届けてきた。
今井さんはサービスを開始した背景について「SNSの使い方とか、インターネットの使い方みたいな授業を受けてきたが、あまり面白くなくて…。実践的で楽しく学べるようなメディアリテラシープログラムを作りたかった」と語った。
一体どんなサービスなのか? 実際に体験してみた。
ゲームの舞台はとある中学校。「レイ」と名乗る人物からの挑戦状を受け取ったプレイヤーはレイの正体を明かすために彼のブログにアクセスする。
すると出てきたのは、偽の情報や誤った情報が紛れ込んでいるというブログ。「アジア終了のお知らせ」という見出しがついていてリンクには「日本の10人に1人は80歳以上」という記事が。この中で怪しいと思った部分を調べていく。
「2022年に国連が調査した65歳以上の人口比率が高い国」として、1位日本、2位韓国、3位香港と書かれているが、検索サイトで調べてみると「世界銀行」が公表している2022年の65歳以上の人口比率ランキングを発見。サイトには1位モナコ、2位日本、3位イタリアと記されており、レイのブログの誤情報が発覚。
他にも、AIによって生成された偽の画像を見破るといったものも。偽の情報を疑う力。そしてそれを検証するファクトチェックのスキルを学びながら謎を解き、キーワードを集め、レイの正体に迫っていく。
学校の授業では「レイのブログ」をプレイしてもらった後、遊んだ内容をファクトチェックに繋げるべく、今井さんたちが実例を交えながら講義を行うという。
「能登半島地震の際、Xで“能登半島地震の映像”として東日本大震災の時の津波の映像が拡散した。レイのブログでは動画検証のスキルも学べるようになっている。例えば動画に写っている看板などを細かく見て、それをグーグルマップ上で調べると、東北のものだと分かったりする。加えて、動画に含まれるメタ情報から撮られた日付を割り出したりできる」
参加者からは「楽しかった」という声が上がるそう。
「今までのメディアリテラシーの教育だと、疑うところまでは教えてもらっていたかもしれないが、そこから実際にどうすればいいかを学ぶことができて初めて正しい情報にたどり着ける」
私たちの生活の身近なところに潜むフェイクニュース。「レイのブログ」の普及と共に、ファクトチェックの世界大会の開催を目指しているという今井さんは世界中のメディアリテラシーを底上げしたいと意気込む。
「少し見方を変えることで、今までだったら拡散していたものを、一旦置いて別の記事を調べるようになる。情報にはさまざまな向き合い方があり、自分なりの向き合い方を見つけることが大切だ」
JX通信社 代表取締役の米重克洋氏は「この取り組みは本当に重要だ」と共感を示した上で「若者に対してだけでなく、50代以上に対しても呼びかけが必要だ」と強調した。
「近年、スマートフォンやネットは地方の高齢者にまで広く普及した。そういう中で、フェイクやデマのリスクにユーザーがあまり自覚的でないという問題がある。総務省の情報通信白書によると『インターネットやSNSなどでは自分の興味関心に近い情報が表示されやすくなると知っている割合』はアメリカ・ドイツが7〜8割であるのに対し、日本はわずか4割であり、年代としては特に50代以上が認識できていない。だからこそ、50代以上の方にも体験してもらいたい」
その上で米重氏は「背景にある事実を疑うことが必要だ」と述べた。
「まず、事実と意見をしっかり切り分ける必要がある。そして、自分や相手が意見を持つことはいいが、その背景にある事実が本当に正しいのかを疑ってかかる習慣と自分で調べるリテラシーなどが今の社会を生きていく上では必要不可欠だ」
(『ABEMAヒルズ』より)
■Pick Up
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側