「いまいる会社、完全な“ブラック”というほどではなくて、つらいのは自分が甘いせい?」
【映像】理不尽…「自分たちの何がダメか話し合う会議」とは?(マンガ)
何となく感じたことがありそうな、この感覚。これを“ゆるブラック企業”と定義して、そんな会社で働いた経験をもとに描いたマンガがSNSで話題になっている。
「当時はうまく切り替えられなくて体にも影響が出た。マンガは“ギャグテイスト”に置き換えており、自分に起きている出来事ではなく、それをコメディに変換してやり過ごしていた」
マンガのタイトルは「220人の会社に5年いて160人辞めた話」。この「160人目」こそ、作者のかっぱ子さんだ。
そもそもかっぱ子さんがイメージする「ブラック企業」とは「終電で帰れない・ノルマが多い・いつも怒鳴り声がする」だという。
「私が入った会社はつらいけど周りが平気そうだったので『自分だけが甘いのかな』と」
一体どんなことが起こっていたのか。
舞台は「ひょっとこ商事」という中小企業。入社したてのかっぱ子さんが教育係の先輩に挨拶しようした瞬間、「いらない」と耳を疑うような返事が。
先輩に聞きづらい環境に始まり、人事から日曜日に遠方で行う会社の野球大会の応援に来るよう言わることも。さらに…
「企画は再来月の土日、イベントに出店します。代休はありません。なので強制参加ではないです」
「始業30分前からお前ら主催で自分たちの何がダメなのか話し合う会議をしろ」
などと言われることも。はたから見れば、「ゆる」どころではなく完全に「ブラック」。実際にかっぱ子さんも、土日に15時間以上寝込んだり、逆流性食道炎で胃カメラを何度も飲んだりとストレスが原因で体調を崩した。
そんな中でも“ゆるブラック企業”の認識にとどまっていた理由について、かっぱ子さんはこう分析する。
「当時は新卒で入ったこともあって『これが普通だ』『新卒で自分の能力が低いから辛かったりするんだ』と思っていた。エッセイマンガを描き始めてコメント欄に『ゆるくない』と書かれて改めて気づいた。今思うと、洗脳されていたというか麻痺していた」
仕事内容は嫌いじゃない。終電までの労働、ノルマや怒鳴られることも特にない。他の部署の方がもっとブラックだったため、「私はまだマシ」と言い聞かせてしまっていたかっぱ子さん。
別の会社で働くいま、「同じような状況の人だと、転職などのために動くのは難しいかもしれない」と寄り添ったうえで「視野を広く持ってほしい」と話す。
「(生活の)半分以上が仕事の頭になっていると思うので休みの日に少しでも楽しみを持つとか自分を支える柱を仕事一本じゃなくて何本も用意していくことが大事。趣味だったり他のリラックスできることは無理してでも作っておくべき」
“ゆるブラック”を描いたマンガについて、ダイヤモンド・ライフ副編集長の神庭亮介氏は「160人辞めていることからも、外から見るとブラックだったのだろう。とはいえ、新卒のかっぱ子さんにとって、他の会社と比較して判断するのは難しかったのかもしれない」とした上で「一つ一つは重くなくても、積み重なることでブラックになることがある」と指摘した。
「始業30分前から反省会をさせられたという話があったが、残業代が出なければ、早出出勤になるため違法だ。だが、なかには『こういうものなのか』と気づかないケースもあるだろう。セクハラ・パワハラが横行するようなわかりやすいブラックではなくても、“ゆるブラック”という言葉のおかげで『もしかしてうちの会社も…』と認識することができるのは大きい」
入社した会社が“ゆるブラック”だったらどう対処したらいいのだろうか? 神庭氏は2つの方法を示した。
「正攻法は『内側から変える』ことだが、ヘタをすると10年単位の時間がかかるため、若手社員にとっては難しい。現実的には辞めて転職することになる。多くの人が退職を選択することで、ブラックな職場、ゆるブラックな職場が社会から淘汰されていく。あるいは、人を集めるために改善を余儀なくされるだろう。苦痛な職場であれば、かっぱ子さんのように辞めればいい」
「そこまでの勇気はないという人には、『静かな退職』(クワイエット・クイッティング)という選択肢もある。これは、与えられた仕事以外は一切やらない、自分の給料分だけは働くけど、それ以上の残業などはしないという“ほとんど辞めてるような感じで働き続ける”やり方だ」
一方で、残業やノルマなどはなく、働きやすさはあるものの「あまり自分の成長やスキルアップが見込めない職場」も別の意味での“ゆるブラック”として問題になっているという。
株式会社識学の調査によると37.8%が自分の職場はそんな“ゆるブラック”だと回答。“ゆるブラック”だと感じる点として「収入が増えない=67%」「やりがいを感じられない=44%」「昇級できない・しづらい=43%」と続く。
そして、ゆるブラックだと思うエピソードとしては、「お局さんや嫌な上司もいないが給料の金額の決め方が曖昧で不平等である」「働きやすい環境だけど昇進は望めないし仕事自体にやりがいがない」などがある。
この職場が“ゆるい”ブラックについて神庭氏は「かっぱ子さんのケースの“ゆるブラック”とは毛色が違う問題」とした上で「こっちのゆるブラックの場合は、裏を返せばまあまあホワイトな環境なので、逆手にとってどんどん利用すればいい」とアドバイスした。
「『ホワイトすぎて成長できない』とよく言われるが、会社は学校ではない。誰かが自分を引き上げて成長させてくれるのを待つのではなく、自分で自分に負荷をかけて成長していくべきだ。それが会社の中で難しいのであれば副業してもいいし、学び直しをしてもいい。会社に対して『こんなことをやってみたい』と提案するのもアリだろう。そんな選択肢の幅が与えられているという意味で、かっぱ子さんの“ゆるブラック”に比べるとだいぶ恵まれているように思う」
(『ABEMAヒルズ』より)
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