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【映像】世界各国を比較「仕事でAIを活用している」と答えた人の割合は?
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 海外と比べてAI(人工知能)の業務利用が少なく「AI後進国」と指摘されることもある日本。ソフトバンクグループは、13日の決算会見で今後もAIを主軸に事業を展開していく姿勢を強調した。

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 「このAI時代をいろんな形でリードできる会社でありたい。AGI(汎用人工知能)、ASI(人工超知能)というのは10年、20年単位で進んでいくことを考えて、それぞれのステージで輝く企業群と私どもが常にこのAIの時代の先頭を切って走っていきたい」

 ソフトバンクグループの後藤芳光CFOは、13日の決算会見でAI分野をさらに強化する方針を示した。

 去年4月から今年3月までの最終損益は3年連続の最終赤字となったが、直近の2四半期の最終損益は黒字となり、前の年度から大幅に赤字幅を縮小した。

 子会社であるイギリスの半導体設計大手「アーム」の好調などが業績の改善につながった。

 「アームはソフトバンクグループのAIシフトの中核だ。アームのチップ設計能力がなければAIの本格的な時代に世の中の技術やサービスは追いついていけない」(ソフトバンクグループ 後藤芳光CFO)

 ソフトバンクグループは最新テクノロジー分野への投資に力を入れていて、今後もAIを活用する企業などを中心に投資を続けるとしている。

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 「10年以内にAGI(汎用人工知能)は人類より少なくとも10倍賢くなり、その次の10年には1万倍くらいになる。1万倍とは『人間対サル』ではなく、もはや『人間対金魚』だ」(ソフトバンクグループ 孫正義社長)

 去年10月、孫正義社長は講演で20年後の人間を、脳の細胞が人間の1万分の1しかない金魚に例えて、急速に進化するAIを積極的に活用する必要性を訴えた。

 “AI後進国”とも指摘される日本。マイクロソフトが8日に発表した調査によると…仕事でAIを活用している知識労働者の割合は、中国の91%、アメリカの71%などに対して日本は32%と圧倒的に低くなっている。

 そんな中、アメリカのOpenAIは13日、「チャットGPT」の新モデル「GPT-4o」を発表した。従来モデルと比べて処理速度が大幅に上がり、人とほぼ同じ反応速度で自然な会話ができるようになった。

 AIをめぐる開発競争は、ますます加速。孫社長はAI分野で海外から後れを取っている日本の現状に危機感を示す。

 「活用するのか取り残されるのか、金魚になりたいのか、なりたくないのか。日本よ目覚めよ。なんで禁止するんだ、なんで使ってないんだ。私自身よ目覚めよと、このままじゃ金魚になるぞ。テクノロジー国家の日本よ目覚めよ、目覚めよ若者たち」

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 ソフトバンクグループのAI分野への投資について経済アナリストの森永康平氏は攻守の変わり目を指摘する。

 「この1年ほど、投資事業の調子が悪く、かなり赤字を出したことで決算でも『守りに集中』して新規投資も抑えていたが、この半年で一気に改善したためようやく守りから攻めに転じると。その攻めの第1ポイントがAIを中心とした経済圏。『これで行くんだ』という感じだ」

 ソフトバンクグループが9割以上の株を持つイギリスの半導体設計会社アームが好調に拡大している点について森永氏は「これからAIの時代が来るため、AIの企業は次々と出てくるだろう。それらが成功するかどうかは正直分からない。だがAIを使っていくとなると、半導体が必要なことは間違いなく、そこを手掛けていく点は非常に賢い。アメリカのゴールドラッシュの当時もノーリスクで儲かったのは金鉱に行く人たちにスコップやジーパンを売ってた人たちだ。対して金鉱に掘りに行った人は、掘れて無事に帰って来られた人はいいが、ケガや事故で亡くなった人も少なくなかった。まさにそのゴールドラッシュ時代の稼ぎ方をこの半導体時代に持ってきたという印象を受けた」と話す。

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 半導体の領域を席巻している米・エヌビディアとアーム社の動きについて、最速でAI情報を発信する起業家のチャエン氏は「エヌビディアは画像処理半導体=GPUを製造、アームはスマートフォンなどに使われるCPUがメイン。今後AIのトレンドでは小型化が必然的で、AIもスマートフォンで稼働するようになってきたので、アームの需要は今後伸びていくだろう」と見込む。

 2026年以降、ソフトバンクは半導体開発だけではなく、データセンターや核融合などにまで事業を広げようとしている。

 この点について森永氏は「インフラを全て牛耳って“胴元”になりたいという感じでは。その中で自由にいろんな会社に頑張ってもらい有望なAI企業が出てくれば出資してIPOで儲ければいいという。半導体、電力、データセンターという大枠は自分たちがやる。その中で取り組む企業の中で良いものには投資するという、“美味しいポジション”を築こうとしていると思う」と分析した。

 1980年頃まで日本は半導体製造で世界をリードしてきたが、その後シェアを減らし、埋没してしまっている。

 森永氏は「日本は半導体分野で強かったが、価格競争に巻き込まれて、韓国・台湾に負けた。そして今ようやく熊本にTSMCの工場を誘致し、北海道にはラピダスが進出する。とはいえ、熊本においても最先端の半導体は台湾で作り、日本ではどちらかというと汎用型ばかりであるため、時代が過ぎてしまえば『この工場ってなんなの?』という結末にもなりかねない。なんとか時代にキャッチアップしながらやってほしい」と述べた。

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 5月8日にマイクロソフトが発表した2024年の「Work Trend Index」。これはマイクロソフトとリンクトインが31カ国、31000 人を調査し、「AIが働き方と労働市場をどのように変えるのか」まとめたものだ。

 これによると「仕事でAIを活用している知識労働者の割合」は、中国の91%、アメリカの71%などに対して、日本はわずか32%と圧倒的に低い。

 この結果についてチャエン氏は「海外の企業にはITに詳しい社員がいるが、日本にはいないため、テクノロジーに強くない会社のためにそれをサポートするエスアイヤーがいる。残念ながら日本のAIリテラシーは総じて低いため、中国のようにもっと使ってほしい。そのうちiPhoneなどにAIが搭載されて意識せずとも勝手に使うようにはなるだろうが、それでは“使われる側”であり“AIを使う側”に回らなければ“美味しいとこ取り”はできない」と話す。

 森永氏は「外圧」が日本人とAIの関係性が変わるターニングポイントになると指摘する。

 「やはり日本人はAIに限らず保守的でなかなか変わろうとしない。でもどこかのポイントを過ぎると一気に増えて“世界的に見てもAIをよく使う国民”になるのでは。ではそのポイントはどこかと言うと過去の歴史を見ると“外圧”だ。『AIに目覚めろ』と孫社長は言ったが、日本人は自発的にやるというよりは、外圧による。この外圧となる可能性の一つとして、ある意味内圧でもあるが『人口減少でこれ以上人件費を上げる余裕ないが人が足りない』という状況になった時に、苦肉の策で使うと非常に良くて、なんでもっと早く使わなかったのか、と思ったりする」

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 ソフトバンクグループは戦略としてAGI(汎用人工知能)、ASI(人工超知能)を視野に入れて開発する構想を練っているが、このような日本の企業は多くない。

 その要因について森永氏は「日本の経営者はどうしても国内でビジネスを展開し、海外にもあまり行かない場合が多いため、“世界のリアルな話”が入ってこない状況にある。一方、孫社長は海外でも知られており、日常的に海外で議論しているため、他の日本の経営者よりも将来像が明確に見えてるはずだ。だから日本の普通の会社からするとあり得ないような10兆円という金額を1つの分野に突っ込んじゃおうと。これは博打ではなく、社会が大きく変わるから既存の枠組みに10兆円投資するよりも、変わっていく社会に入れたほうがリターンが増えるという自信があるのだろう。孫社長は投資を行う中でダメな時はダメだが、長期で見るとメモリアルな一発を当ててきている。アームやその前のアリババも。ネットショッピングや半導体、AIなど周囲が注目していないタイミングに取り入れておいて、10年、20年経って時代が追いつく。先見性があるというのは実証されていて、その孫社長がここまで言うからには、我々に見えていない何かが見えているのかもしれない」との見方を示した。

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 そのような中で、「ヒトと同じ反応速度で自然な会話ができる」として、5月13日にOpenAIが発表したのが「GPT-4o」。さらに翌日にはGoogleが「Veo」を発表した。

 これについてチャエン氏は「OpenAIはスタートアップ、対してGoogleは超大企業であるためスピード感に違いありOpenAIが話題を掴んでいるが、技術面で見たら正直あまり変わらない」と分析する。

 チャエン氏は最新のAIの性能について「東大の試験問題を写真を撮るだけで完璧に回答した。GPT-4oは無料で使えるようになるため、子どもが宿題のカンニングに使ってしまうようなこともありえる」と懸念を抱き、森永氏も「反応速度が非常に早いため、既存の枠組みにある家庭教師、コールセンター、英語の学習塾など様々なサービスが存続の危機に陥るのでは」と驚きを隠せない。

 GPT-4oが無料で使用できるようになる点について森永氏は「ゼロの経済学といわれるが、まず無料で使用できるようにして競合を全て潰し、その後にユーザーを依存させてから課金するような形だ」と指摘する。

 今後のAIとの向き合い方についてチャエン氏は意識改革を促す。

 「受け入れてばかりではAIの方が良いっということになる一方だ。常に『人間だったら何ができるのか』を考えていかないと気がついたら仕事がなくなってしまう」

 森永氏は「ルールや認識を変えていこうとしても学校で教える先生たちが“AI時代の人”ではないため、デジタルネイティブの子どもたちへの教育は難しいと思うが、AIに使われるのではなく、AIを超えていけ、というのが1つのテーマだろう」と話した。
(『ABEMAヒルズ』より)

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