今SNSで、変わった間取りや超豪華なタワマンなどの「物件紹介」動画が人気だ。「いつでも不動産」の池田氏は「内見にはハードルがあり、手軽に見られるところで人気なのでは」と考察する。人気ジャンルは狭小物件で、立地の優先順位が高い若年層にウケているようだ。
【映像】壁(クロス)・エアコンは6年 経年劣化による耐用年数表
ライフスタイルにあわせて住環境を変えられるのが賃貸物件の良さだが、契約時や生活する上でのトラブルは絶えない。中でも多いのが、引っ越し時の「原状回復」で、言われるがままお金を払ってしまうケースも少なくない。
「いっそ購入してしまえば」と感じても、管理費・修繕積立費の値上げや、離婚時のペアローン、近隣住民とのトラブルなどに見舞われる可能性もある。永遠のテーマとも言える「賃貸・持ち家」論争について、トラブル面から『ABEMA Prime』で考えた。
■つけたはずのない傷も請求?原状回復トラブル
「原状回復」とは、借り主の故意・過失・通常の使用を超えるような使用などで生じた損耗やキズなどを元に戻すこと。国民生活センターによると、相談件数は2020年度が1万3364件、2021年度が1万4111件、2022年度が1万2856件となっている。
お笑いコンビ・ガクヅケの船引亮佑は、原状回復をめぐり大家と争った。「猫を飼っているため、敷金は2カ月分の21万円を払っていたが、プラスで14万円、つまり35万円かかると電話口で言われた。大家が『多いからプラス10万円でいい』となぜか4万円値引きしたので、書面で送ってもらうよう頼んだ」。それを持って消費者センターへ相談に行くと、「猫が引っかいたとされる壁紙に、天井の部分も含まれている。入居時から置いていた本棚の壁も引っかけないのでは」などと指摘され、最終的には「どんどん減額されて、プラス分はゼロになった」という。
不動産仲介会社TERASS代表の江口亮介氏は、大家側の事情を説明する。「ペットは人間と違って、言うことを聞かない。引っかいてしまうから、多めに請求しようとなりやすいのではないか」。引っ越しをめぐる金銭トラブルには、ハウスクリーニングもある。「クリーニングは絶対にする。住人がなにをしようとも絶対代金がかかると、入居時の契約ですることが多い」。
貸す側と借りる側、どちらが費用負担するかについては、東京都がガイドラインを定めている。貸主負担となるのは経年変化や通常消耗で、日照等による畳や壁(クロス)の変色、家具の設置によるカーペットのへこみ、画びょう・ピン等の穴などがある。一方の借主負担は借主の責任や、故障や不具合を放置で生じた汚れ・傷があてはまり、タバコや雨の吹き込みによる畳や壁の変色、引越し作業で生じた引っかき傷、くぎ穴、ネジ穴などがある。
また、大家とのやりとりが大変だったと船引は振り返る。「メールでやりとりしたかったのに、高齢のため週1回の手紙になって、1カ月くらいかかった。消費者センターの前に管理会社に相談したが、『大家さんが直接管理している』とのことだった」。
賃貸トラブルやその解決法に詳しい司法書士の太田垣章子氏は、「かつて原状回復費用は、家主の取りたい放題だった。1998年にガイドラインが定められたが、しっかり運用されるようになったのは最近のこと。自主管理のオーナーには以前の感覚があり、新しい情報にバージョンアップできていない場合がある」と指摘した。
■持ち家でも起きやすいトラブル 買うべき人・じゃない人の違いとは?
トラブルは「持ち家」でも無縁ではない。隣人トラブルが起きても気軽に引っ越せない、購入した後に「管理費・修繕積立費」が値上げされる、自殺・事故があると物件の価値が下がる……などといった懸念はある。
江口氏は「近隣トラブルは致命的」と語る。「事前に物件だけでなく、隣人調査もできる範囲で行い、マンションなら上下階も問題ないとわかってから契約した方が安心だ。探偵事務所による調査で、戸建ての周辺8区画だと約5万円。トラブルの有無や、町内会の活動も調べる。マンションなら変な住民に管理組合として対応できるが、戸建てではなかなかできない」。
住む上でのランニングコストも把握しておく必要がある。「戸建てには修繕積立金がなく、一気に支払いが来るため、準備が必要。どんな家でも、十数年に1回は何かやらないといけない」。購入に際しての自衛策はあるか。「築年数で傷み具合はわかる。気になる人は、ファイバースコープなどで、見えないところものぞける。マンションでは、共用の水道管が壊れると、自分だけでは直せず、時間がかかる。売るに売れない状態になるため、古い物件には気をつけてほしい」。
江口氏によると、「買うべき人」は、賃貸需要を見つつ土地の価値が下がりづらいエリアで購入を検討し、3〜5年以上の居住予定で、住宅ローンを好条件で借りられる人。「買うべきじゃない人」には、人口減少が進んでいるエリアに住んでいて、短期間での住み替えを考えているほか、賃貸の住宅家賃手当など福利厚生制度が充実しているといった条件を挙げる。
「持ち家派」は多いものの、減少しつつある。全宅連「2023年住宅居住白書」によると、持ち家派はマンション・集合住宅17.8%、一戸建て49.7%をあわせて67.5%を占める。しかしながら、2022年の77.9%からは減っている。
減った背景として、江口氏は「結婚する人が減っている。独り身だと『持ち家でなくても』となる気持ちもわかる。もう1つの理由が、非正規雇用が増えていること。正社員でないと、いい条件でローンを組みづらい」と指摘する。
作家でジャーナリストの佐々木俊尚氏は「昭和の頃は、『家を買えば資産になり、常に値上がりする』との神話があった」と振り返った。「いまも東京都心は値上がりするが、地方は悲惨。1970〜80年代に3000〜4000万円かけた家や土地が、一文にもならないケースも多く、NPOや町役場に『ただでもらって』と頼む人も多い」。そうした不動産は「ババ抜き状態」になっているとし、「手にした瞬間に固定資産税を払わなければならない。空き家対策特別措置法で行政が解体すれば、その費用が持ち主に請求される。“土地神話”が消滅して、資産ではなくなっている認識が必要だ」との視点を投げかけた。(『ABEMA Prime』より)
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