【写真・画像】刑務所前で“週6日出待ち”する男性「家族からも見放され居場所がない」 出所後の困難、再犯防ぐカギは 1枚目
【映像】出待ちから名刺を手渡す様子 その後の支援活動にも密着
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 朝7時、刑務所の前で「出待ち」をする男性がいる。松浦未来氏(37)。待っているのは、刑期を終えて釈放された満期出所者たち。出てきた男性に声をかけ、名刺を手渡す。

【映像】出待ちから名刺を手渡す様子 その後の支援活動にも密着

 どういった活動で、何のためにやっているのか。21日の『ABEMA Prime』で話を聞いた。

■週6日出待ち、3日間1人も出てこないことも…

 2023年に出所者支援の会社TSUNAGU(つなぐ)を立ち上げた松浦氏。週6日、大阪刑務所の前で出待ちをし、家族や帰る場所の有無をたずねている。「3日間待って1人も出てこない場合もある」。支援する人の9割近くは身寄りがなく、住む場所すらないという。

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 役場に同行して、生活保護の申請を手伝うところから支援は始まる。今回サポートするのは、特殊詐欺の「受け子」として逮捕された20代男性。犯罪に加担している認識すらなかったが、拘置所に約4カ月間勾留され、執行猶予付きの有罪判決を受けた。「家族から縁切りの書類を出されて、『お前みたいな犯罪者とは関わらないし、これから1人で生きろ』と」。釈放後に途方に暮れていたところ、ネットで松浦氏の活動を知り、相談した。

 松浦氏は住宅支援にとどまらず、定期的に彼らを訪ね、見守っている。また、障害がある元受刑者らの暮らすグループホームも運営し、住人が顔を合わせて交流できるようにしている。

■自身も元受刑者「自分には帰る場所があった」

 “一気通貫”をモットーにした支援で、まず住居の確保に力を入れるのには理由がある。「定まった住所がないと何も進まない」。2022年に再犯で収容された受刑者は、7割以上が“無職”だった。身寄りがなくなると家もなくなり、住所不定だと携帯電話が契約できず、仕事先も決められない。すると結果として、再犯に走ってしまう。そんな“負の連鎖”があると、松浦氏は指摘する。

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 出所者の中には「家族の元など帰る場所があると思っていたら、実際には居場所がなかった人も多い」のが現状だという。「自分たちが活動している刑務所は、初犯ではなく、再犯を繰り返した人が行く場所。最初は家族が支援してくれていても、3回目、4回目となると、家族からも見放されてしまう」。

 TSUNAGUを立ち上げた背景には、松浦氏自身が「元受刑者」だったことがある。「出所してからの5年半で、いろんな誘惑があり、迷うことも多々あった。その中で踏みとどまれたのは、自分には帰る場所や、支えてくれる家族や仲間がいたから。大切なものがここ数年で増えた」。出所後に勤めた会社から独立し、時間や金銭面で余裕が出てきて、「次は支える側の活動をしたい。漠然すぎて何も考えていなかったなかで、自社スタッフの兄が近い活動をしていて、取り組みのヒントを得た」そうだ。

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 経営はどう成り立たせているのか。「出所直後の人は、基本的にはお金も身分証明書もない。そういう人が家を借りるには、協力してくれるオーナーが必要だが、オーナーは『TSUNAGUが保証してくれるなら入居を認める』と条件を付ける。大阪市では生活保護の住宅補助が4万円まで出る。オーナーと家賃を下げる交渉をして、4万円で賃貸物件をサブリースすることで、その差額を」と説明。

 公的制度を活用しているため「支援する人の生活費から、お金をもらうわけではない」のが特徴だ。しかし、同様の仕組みを行政に求めても、「そこまで柔軟に対応するのは難しい。オーナーからしても、何度も犯罪歴のある人を受け入れることには抵抗がある。泥臭い交渉を行政がしていけるのか」と語る。

■3度の逮捕の末TSUNAGUと出会った男性「寄り添ってくれる安心感」

 山下さん(仮名・29)は、TSUNAGUの支援を受けて、職を得た。21歳の時に飲酒運転で逮捕・収監(懲役1年4カ月)。その後、26歳と28歳の時に、窃盗で逮捕・収監され、それぞれ懲役4カ月と8カ月に。2023年12月に出所し、刑務所前でTSUNAGUのスタッフと出会った。2024年1月からアルバイトを始め、5月からは正社員として働いている。

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 「支援していただいて、いまの生活がある」と語る山下さん。「(出所直後に)話しかけられて最初は断ったが、たまたまもう一度会って、興味がわいてきた。『次の日、会いましょう』と、すぐに生活保護の支援もしてくれて、『そこまでしてくれるのか』と感じた」と明かす。

 TSUNAGUはどのような存在なのか。「寄り添ってくれる人がいないなか、支援してくれる安心感がある。刑務所の中では存在を知らず、保護観察所で『保護カード』を渡されても、どこへ行けばいいかわからなかった。こういう活動は、刑務所とも連携しつつ、今後もっとやっていくべきだ」。

 出所者を支援しても、再犯する可能性は拭えない。ただ、「TSUNAGUが支援している約50人のうち、再犯者は3人のみ。国の統計より再犯率を下げている」と、松浦氏は語る。「必要なのは『物理的に住む場所』よりも、『心のより所』。自分たちが見守り続けるのは、『家を用意したら終わり』となると、きっと再犯してしまうから。見守りを重ねて、いつまでもつながっていたい」。(『ABEMA Prime』より)

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