新宿・歌舞伎町で警視庁が摘発に力を入れているのが、路上などで売春相手を探す「たちんぼ」。特に大久保公園周辺では、道沿いに若い女性が並ぶ光景が日常化。これまで現行犯での取り締まりを行ってきたが、過去に売春目的で男性から声をかけられるのを待っていた事実を証拠として、4月23日に女性を通常逮捕。また、大久保公園周辺のラブホテルなど62店舗に初めて一斉立ち入り調査を行い、ホテル側に売春への注意を呼びかけるなど、新たな手法で取り調べを強化している。
そんな中、疑問の声があがっているのが、「なぜ男性側は逮捕されないのか」。現行の売春防止法では、売春・買春をすること自体に罰則はなく、客待ちや勧誘などの行為が処罰の対象となっている。男性が逮捕されるのは相手が18歳未満であった場合や、女性に対して売春を斡旋したり強要した場合などになる。
海外では売春を合法化したり、買う男性側を罰するかたちに法律を改正した国も。日本の法は時代に則しているのか。『ABEMA Prime』で議論した。
■買春を規制しても効果薄? 「規制と支援の両輪を」
性風俗産業の従事者を支援する「SWASH」メンバーの要友紀子氏は「たちんぼがよくない、売春・買春がよくないとなると、まず取り締まろうという観点になっていく。海外でそれをやってどうなったか。車でピックアップするスタイルに変わるかもしれないし、もっとアンダーグラウンドにいくかもしれない。そういうリスクのシミュレーションが大事だ」と指摘。
海外で買春を処罰している国があることについて、「それでも売春が少なくなったという、客観的なデータはないとされている。その地域に行けばお客さんがいる、稼げるといった理由でセックスワーカーは流れていく。法律を見て移動しない」と述べた。
フランスでは、買春規制によってセックスワーカーの78%の稼ぎが減り、さらに困窮に陥ったという。また、警察の目を避けて働くことになり、暴力や虐待リスクも増加した(メディシン・ドゥ・モンドの報告より)。
「ひとりぼっちにさせへんプロジェクト」代表理事の田村健一弁護士は「実際フランスでも、セックスワーカーを支援するプログラムを利用するフランス人はいなくて、移住労働をしていたりやビザがないセックスワーカーが使う。日本でも警察が近年、福祉サービスでこういうのがある、生活保護も受けられる、同行支援もあると紹介するのだが、それを受ける、使いたいと言う子はほとんどいない」と話す。
4月に施行された女性支援新法では、従来は売春するおそれがある女子を補導処分していたのに対して、民間との協働して訪問や居場所を提供する、国・自治体による支援を行うなど「寄り添う」方針となっている。
田村氏は「これがどう運用されていくか興味深く見ている。支援の対象としては、売春する女性だけではなく、DV、家に居場所のない少女など幅がある。この支援と規制というのは両輪で考えないといけない」と述べた。
■売買春規制のあり方、合法化はあり?
オランダは2000年、成人同士の合意があれば買春・売春ともに合法とした。アムステルダムの売春街「飾り窓地区」では、下着姿の女性たちが建物の窓から客を誘い、観光地としても人気スポットとなっている。2019年には若者を中心に禁止を求める署名活動に4万人以上が賛同したが、性産業従事者は反対している。
リディラバ代表の安部敏樹氏は「買春側も取り締まって厳罰化していくのが1つ。もう1つが合法化だ。後者をとった時、公衆衛生上のリスクが下がったり、暴力などがあった時の保護が機能するとみると、産業として守るという意味では良いかもしれない。直近だと海外売春が増えていて、アメリカに行こうとしたけど売春を疑われて入れないということが起き始めている。海外売春はかなり国益を害する話で、それを防ぐことを考えても、合法化のほうが可能性はあるのではないか」との見方を示す。
要氏は「私が調査してきた中では、サバイブするためにより良い条件を求めてセックスワークにたどり着いた人が多いと思っている」とした上で、「2020年から2022年はコロナ禍、その後AV新法もあってたくさんの人の仕事が減ったことで、海外売春やネットに流れているという話がそのとおりになっている。そこには働くスタンスの違いがあり、心配して言っても本人が納得しなければ意味がない」と指摘。
その上で、合法化については、「いいかどうかは一概に言えないが、世界的な流れとして、“非犯罪化”がベストプラクティスだと思われている。ニュージーランドとオーストラリアの一部の州の例が、セックスワーカーが一番支持する法律・政策だ」とする。
田村氏は「やはりSNSの時代では、どこかの店舗に縛られるよりも、自由に好きな時にお客さんを開拓できる所に人が集まってしまうのは、もう避けがたい事実だ。その現状の中で、“売春自体がいいのか”という大前提の共通認識はとらないといけない。規制するというのはお節介かもしれないが、どうしていくかを議論すべきだ」と投げかけた。(『ABEMA Prime』より)
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