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【映像】めくる仕様になっている「#言葉の逆風」ポスター
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 「なぜ東京大学には女性が少ないのか?」

 5月1日、東京大学に貼り出されたこのポスター。実際に学生や教授の男女比には大きな差があるが、この問いから20日後、アンサーとなる3枚のポスターが掲示された。

【映像】めくる仕様になっている「#言葉の逆風」ポスター

 3人の女性の周りにうずまくのは、東大に所属する女性学生や研究員、教員らに実際に浴びせられた言葉の数々。このポスターが訴えるのは、ジェンダーバイアスから生まれる「#言葉の逆風」、その暴力性だ。何気ない一言が女性の意欲を削ぎ、その結果、東大の女性比率の低さにつながっているという。

 こうした日本の現状を変えられるのか。『ABEMA Prime』でポスターの仕掛け人と考えた。

■「言われる側も“こういう言葉は逆風なんだ”と思っていい」

 ポスターはめくる仕掛けになっており、「一部センシティブな内容を含みます」との注意書きもある。企画を担当した、東京大学多様性包摂共創センター特任研究員の安東明珠花氏は「アンケート調査を実施した中で、思い出すだけでつらいという思いをされている方がいた。私自身、ポスターを考える中で、どこかに閉じ込めていた気持ちがよみがえってくるような感情もあった。この企画は“女性をエンパワーメントするものだ”という強い思いがあったので、フラッシュバックは一番避けたかった」と説明。

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 「#WeChangeUTokyo」プロジェクトでは、男女比9対1の教員において、2022〜2027年度に着任する1200人中約300人を女性に。男女比8対2の学生について、25%から30%への引き上げを目指すという。

 元日経新聞記者で、東京大学多様性包摂共創センター特任助教の中野円佳氏は「こういう言葉は、親や教師などにかけられた幼少期からの蓄積がある。いろんな要因が東大の女性の少なさにつながっているし、政治や経済界などあらゆるところにバイアスがかかっている。東大の問題として始めているが、結果的に社会全体に発信できたらという思いだ」と語る。

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 東京大学博士課程在籍中で、カルモニー代表の岩澤直美氏は「こうした言葉は本当にある」と指摘。「私は下駄を履かせてもらって東大に入ったと思っている。親が教育に投資したいと思ってくれ、恩師や仲間も応援してくれる環境で、逆風よりもむしろ追い風だった。しかし、大学院に入ったばかりの頃、とある先生に『ご飯に行きましょう』『お酒を飲みながら研究相談しましょう』と誘われて、断ったら『女性らしさをもっと使ったほうがいい。あざとくやったほうがいいよ』と。女性もみんなもっと頑張ればいいのにと最初は思っていたけど、頑張りたくても頑張れない、逆風を受けている人たちがいる。そういうことに気づくところから始めないといけない」と振り返った。

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 安東氏は、プロジェクトの反響として「“こういう言葉を真に受けちゃ駄目なんだ”と無意識にスルーしてきたことに、このポスターを見て気づいた」という言葉をもらったという。「言っちゃ駄目だよだけではなくて、言われる側も“こういう言葉を逆風と受け止めていいんだ”という気持ちになってもらえたらうれしい」と訴えた。

■ジェンダーバイアスに岩澤氏「放っておくとベルトコンベアのようにみんな流れていく」

 実際に寄せられた声には、「女性に重職は任せられない」「女性ならではの視点で研究を」「女性は研究に向いていない」などもある。

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 岩澤氏は「東大に行って自己実現ができるイメージがわきにくい。大学でも会社でも役職を得にくかったり、結婚しにくかったり。私自身も会社をやり、いろいろな企業のダイバーシティー研修をしているが、『担当者を変えてほしい』と言われたことがある。要するに、高学歴の年下、しかも女性の講師に耳を傾けにくい人たちがいると。それが現実だ」と語る。

 中野氏は「学部生にとって、先生も同級生もみんな男性という環境だと入りたいとならない。学生に光が当たりがちなのだが今回、教授など上位職に女性がなっていかないことも問題視している。研究者として成功する・実績を残すことが出産と両立しにくかったり、ネガティブな言葉をかけられることがある。その逆風を跳ね返せる人しか行きたいと思えない、残れないという構造にはなっていると思う」との見方を示した。

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 会社の女性役員比率は、2023年で13.4%。政府目標では、「2030年までに女性役員比率を30%以上」「2025年までに女性役員がいない企業ゼロ」としている(東証プライム市場上場企業が対象)。

 中野氏は「『女性ならでは〜』と言われるのは、その会議で女性がマイノリティだから。このスタジオのバランスはすごく良いが、女性1人だったら“中野さんは女性の役割ね”となってしまう。クリティカルマスといって、女性が3割くらいになるとその中でも多様な意見が出てくるし、女性とまとめられるのではなく個人として見られる。今は過渡期で、ものすごいマイノリティから引き上げるところまで頑張らないといけない」と述べる。

 安東氏は「東京大学の中でも意識が変わってきていることは認識している」「昨年度から、無意識のバイアスチェックシートを確認し合ってから人事評価をやろうという取り組みも始めている」としつつ、「ポスターでこういう現象を可視化して、一緒に考えて、じゃあ何ができるか?を考え始めているところ。そこがまず1つ重要だと思っている」とした。

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 性差・男女の役割について持つ固定的な思い込みや偏見を指す「ジェンダーバイアス」について、岩澤氏は「放っておくとベルトコンベアのようにみんなが流れてしまうもの」だと呼びかけた。

「自分はここまで極端じゃない、自分は若いと思う方もいると思うが、単純に『女性で東大ってすごいね』『出産は大丈夫そう?』と寄り添っているように聞こえるものも、本質的には同じだと思っている。バイアスは認知的メカニズムとして、みんな当たり前に持っているもの。言っているその1人を責めるのではなく、違う方向にどう一緒に歩いて行けるのか。自分はそこまで言わないからではなく、“やっぱり言っているかも”と意識し続けないといけない」

(『ABEMA Prime』より)

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