「高校生の時に1日7、8時間ぐらいイヤホンをつけていた。耳が痛いとか閉塞感」
こう話すマイさん(24歳女性)が悩んでいるのが、「イヤホン難聴」。WHOは2019年、1週間あたり40時間以上80dBで聴き続けると難聴になる危険性があるとし、若者を中心に世界で11億人がリスクに晒されていると警告している。さらに、医師は「イヤホンで聞こえにくくなった聴力は二度と回復しない」と警鐘を鳴らす。
生活に欠かせない耳を守るためにできることは。デジタル時代の音との距離感について、『ABEMA Prime』で考えた。
マイさんはイヤホン難聴を自覚した経緯について、「対面での会話で徐々に聞き返すようになったり、“なんか聞こえないな”って思うことが増えた。耳が痛かったり変塞感、頭痛が起こることも増えて、もしかしたら?と思った」と説明。
主な特徴は、高音域から聴力低下が始まり自覚しにくい、めまい、耳鳴りが長いことがあげられ、治療法がないという。川越耳科学クリニック院長の坂田英明氏は「騒音性難聴とも言い、騒音や爆音に長時間さらされ、耳の細胞がだんだん壊れていってしまうもの。耳の中に有毛細胞というものがあるが、音の振動で揺らぎ、摩擦を起こして電気を作る。音の波動は力であり、大きな音にさらされると揺れが強くなるので疲弊してしまう。そこで変性してしまうと戻らない」と話す。
坂田氏によると、WHOは100dBなら15分以上、110dBなら4分以上聴き続けないことを目安にしているという。「地下鉄の電車に乗っている時で大体100dBぐらい、イヤホンでさらに音量を上げると110dBぐらいになる」。ただ、そこではノイズキャンセリング機能のあるイヤホンが有効だそうで、「周りの雑音を逆位相で消してくれるので、耳の中の音量を下げることができる」とした。
では、家で大音量のスピーカーで音楽を聴く分には問題ないのか。「外耳道は狭く3センチぐらい。普通の音は直線的ではなく、反射して放射し軽減されるが、(イヤホンの音は)直線でいってしまう」。
また、イヤホンとヘッドホンでは後者のほうが影響は少ないというが、骨伝導もおすすめだという。頭蓋骨に音の振動を直接伝えることで耳や鼓膜を介さずに音を伝えられるもので、メリットには長時間装着していても圧迫感や痛みがないこと、デメリットには音漏れがしやすく音質が劣ることがある。
坂田氏は予防としてできることについて、休む目安は1時間に10分間、大きな音量で長く聴かない習慣、マッサージ、食生活や睡眠時間の見直し、ヘアカラーやヘアマニキュアは注意が必要、などをあげている。
「おすすめしているのは、首の後ろにある天柱のマッサージ。自律神経や血流に関係しているところで、10〜15秒ぐらい押したり揉んだりすると、少し乱れが緩和することもある。患者さんの場合は必ず触れるが、そのあたりが張ってしまっている」
さらに、顎関節症の影響も指摘。「下顎がカクカクすると、食事をしたり話したりする時に、その真上にある耳に振動が突き上げられる。顎関節まわりの筋肉が張っていたり、動かす時にクリック音がするような方は、口腔外科などへご相談を」と勧めた。
この先について、坂田氏は「このままいくと2050年には25億人が難聴で苦しむとWHOは言っている」としつつ、「絶望的なことだけではない。聴覚などがちょっと悪くなっても、人間には代償機能が必ずある。視覚や振動覚で代償していけば、脳には負担を与えない」と述べた。(『ABEMA Prime』より)
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