これは認知症高齢者の保有金融資産の推計であり、一部は「凍結資産」となっている可能性もあるという。どのような背景・課題があるのか? 銀行・保険会社などでキャリアを積んだ経済愛好家/コラムニスト/ニューレディの肉乃小路ニクヨ氏に聞いた。
三井住友信託銀行が2022年に発表した調査によると、認知症高齢者の保有金融資産の推計は、2020年は174.9兆円、そして2040年には241兆円まで膨らむと推計されている(認知症有病率や人口推計は調査当時の数値)。そして認知症の高齢者の金融資産のうち、預金・株・投資信託など、銀行が判断能力に欠けると判断した場合に口座が凍結されて「自由に動かせなくなるお金」は、60兆円程度(2020年時点)に上ると見られる。
これに対しニクヨ氏は「お金は経済にとっての血液だと言われるが、これだけ大きな金額が凍結されると血液循環が悪くなってしまう。非常にもったいない」と指摘。
では、認知能力が低下した顧客にはどう対応したらいいのか。保険会社で勤務していた際、ニクヨ氏は「成年後見制度」を案内していたというものの、「裁判所に行く必要もあるなど、成年後見制度は非常に手続きが難しく、できることに制限も多かったため、非常に使い勝手が悪い」という。
事前にできることとして、後見人を決めておく、銀行のサポートサービスを利用する、などの手段も考えられるものの、自分の認知能力が低下した状態を想定するのは難しい。ニクヨ氏も「自分が認知症になった場合のことについては、まだ準備が足りていないと思う」と話す。
その上で、「実際に認知症になられてしまった場合、その方の資産が凍結されてしまうと、介護費用という負担が家族にのしかかる。こうした問題も多いため、もう少し融通の効いた制度にするべきだ」と訴えた。
(『ABEMAヒルズ』より)
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