将棋の第9期叡王戦五番勝負第5局が6月20日、山梨県甲府市の「常磐ホテル」で行われ、藤井聡太叡王(竜王、名人、王位、王座、棋王、王将、棋聖、21)が挑戦者の伊藤匠七段(21)に敗れた。この結果、シリーズ成績は伊藤七段が3勝2敗で叡王位を獲得。昨年10月に全八冠独占を達成した藤井叡王だったが、その一角を失冠。全冠保持記録は254日、タイトル戦無敗記録は22期でストップし、七冠へと後退した。
藤井叡王が八冠陥落を喫した。3度目のタイトル戦激突となった同学年の伊藤七段とのシリーズは、幸先良く白星スタートを切ったものの、第2・3局でまさかの連敗。カド番へと追いやられることとなった。しかし、数々の大勝負を切り抜けてきた藤井叡王は、勝負所の第4局で快勝。2勝2敗のタイでフルセットの最終局を迎えることとなった。
運命の第5局は、振り駒の結果で藤井叡王の先手番に決定。戦型は、これまでの4局と同様に両者得意の「角換わり」となった。先手は穴熊、後手の伊藤七段は右玉を志向すると、両者の研究をぶつけ合うようにハイスピードで進行。藤井叡王は気持ちをぶつけるように強く踏み込み、銀捨て、飛車切りと強手を連発してリード拡大を目指していった。しかし、攻め合いとなった終盤戦でわずかに誤算が生じたか、伊藤七段に流れを譲る展開に。持ち時間は切迫、一転苦しい立場となった藤井叡王を突き放すように伊藤七段が勝機を活かしきり、藤井叡王がタイトル戦初の敗退を喫した。
藤井叡王は、2020年度の第91期棋聖戦でタイトル初挑戦。渡辺明棋聖(当時)を破り、17歳11カ月で最年少タイトルホルダーとなった。以降獲得と防衛を重ねて、2023年の第71期王座戦五番勝負を制し前人未踏の「八冠独占」を達成した。その後も防衛ロードを突き進み、254日間に渡って全タイトルを独占していたもの、本シリーズで同学年の伊藤七段に初めてタイトルを奪われついに陥落。七冠に後退した。
終局後、藤井叡王は「終盤でミスが出てしまう将棋が多かったので結果もやむを得ないかなと思っていますし、それと同時に伊藤さんの力を感じるところも多かった」とシリーズを総括。「叡王戦でも伊藤さんの実力を感じることが多かったので、私自身も実力を高めていかないといけない」と今後を見据えていた。
藤井叡王の八冠陥落、伊藤新叡王の誕生と将棋界にとって歴史的な一日となったものの、藤井叡王の戦いの日々は続く。現在は、山崎隆之八段(43)を挑戦者に迎えたヒューリック杯棋聖戦五番勝負に臨んでおり、さらに来月6日には渡辺明九段(40)と6度目のタイトル戦となる伊藤園お~いお茶杯王位戦七番勝負が開幕する。厳しい暑さが予想さえている今夏、藤井叡王は熱き防衛ロードをどのように攻略して見せるのか。今後の戦いぶりにもさらなる注目を集めることになりそうだ。
(ABEMA/将棋チャンネルより)