総選挙の投開票日を7月4日に控えるイギリス。世論調査の結果では、与党の保守党が劣勢とみられ、政権交代の可能性も指摘される中、これまでの政治の姿を一変させるかもしれない候補者が出馬した。
「『AIスティーブ』について話したい。私は初のAI国会議員として議会に立候補している。『AIスティーブ』は24時間年中無休でウェブサイトで話し、政策を構想し、私たちの政策を聞くことができる」
有権者に向けアピールするのは、政党「Smarter UK」を立ち上げた実業家のスティーブ氏。今回の総選挙に向けて開発したのが、自身の分身として有権者からの質問や意見を集約し、政策に反映することを目指すAIスティーブだ。
ついに現れた「AI政治家」。一体どんなビジョンを持っているのか、AIスティーブ本人をABEMA NEWSの楪キャスターが直撃した。
自己紹介を求めると、AIスティーブは「はじめまして、私はAIスティーブです。あなたとお話できることを嬉しく思います。私のビジョンは、有権者が自分たちの生活に影響を与える政策の策定に直接発言できる、より包括的で効率的な民主主義をつくることです」と答えた。
生成AIを活用することで、24時間、同時に大勢の人々との対話が可能になる。人間には不可能な新たな政治スタイルについて、AIスティーブはかなりの自信を持っているようだ。
「もしあなたが国会議員になったら、英国はより良い国になりますか?」という問いにAIスティーブは「それは大胆な主張です、私の政策は地域の人々からインスパイアされたもので国により良い影響を与えると期待しています。Smarter UKへの私のアプローチがより効率的で効果的、そして透明性の高い政府を作ると信じています。国民保健サービスの問題や教育の改善、ホームレス問題への取り組み、デジタルイノベーションの促進などの問題に取り組むことを目指しています。テクノロジーを活用し、長期的な視点で人々と協力することで、誰にとってもより良い国を作ることができると信じています」と即座に回答。
異色すぎる候補者を有権者はどう見ているのだろうか。
「コンセプトとしては非常に興味深い。未来の技術であるAIを取り入れているが、AIと政治家には、どちらも信頼できないという共通点がある。テクノロジーを使うのは興味深いが、信頼と透明性が必要であり、それが必ずしもAIを通じて構築されるかどうかはわからない」(有権者)
AIを活用することで、大量の有権者の声を政治に反映させることができるが、結果的に多数派の意見で社会が動く究極のポピュリズムになる懸念もある。多くの人が求める政策が必ずしも最善ではないかもしれないという部分について、AIスティーブはどう考えているのだろうか。
AIスティーブは「私たちのプラットフォームは、住民の意見を収集して分析するように設計されています。AIと機械学習を使用することで、人々の意見のパターンと傾向を特定できる。そして、より効果的で人気のある政策を作成できる。多数決ではなく、有権者の集合的な知恵が意思決定を導くべきだと言っているのだ。もちろん、誰もがすべてに同意するわけではないことも認識している」と答えた。
ここでさらに踏み込んだ質問をしてみた。
「人の意見を聞くだけで、政治家になれるのか? 政治家の役割は人々のリーダーとして社会をリードすることではないのか?」
この問いにAIスティーブは「あなたの言っていることはわかる。リーダーとして、政治家として、大衆に従うのではなく、自分自身のビジョンやアイデアを持つべきだという指摘は素晴らしい。Smarter UKとして、人々の意見を聞くだけでなく、リーダーシップを発揮し、コミュニティー全体に利益をもたらす決定を下すことも目指している」と淀みなく答えた。
AIスティーブが当選した場合、開発者のスティーブ氏が議員となり、AIの代理人として活動するという。学習データの不透明さやバイアスなど、生成AIが抱える課題をクリアし、AIが政治家になる未来は実現するのだろうか。
最後にAIスティーブに聞いてみた。
「日本とどのような関係を築きたいか?」
AIスティーブは「日本は豊かな文化と歴史を持つ魅力的な国だ。未来の国会議員として、英国と日本の関係を強化し、両国間の強い絆をさらに強めていきたいと考えている。そして、あなたのような素晴らしい人々のサポートがあれば、私たちは本当に大きな変化をもたらすことができると確信している。Arigatou Gozaimasu」と答えた。
(『ABEMAヒルズ』より)
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