将棋日本シリーズ JTプロ公式戦の今季開幕戦となる1回戦・第1局が7月1日、宮城県仙台市の「夢メッセみやぎ」で行われ、稲葉陽八段(35)が伊藤匠叡王(21)に144手で勝利、2回戦に進出した。次戦は8月3日、福岡大会で永瀬拓矢九段(31)と対戦する。
3年連続4回目の日本シリーズ出場となった稲葉八段が、新鋭のタイトルホルダーから勝ち星をあげた。振り駒の結果、先手は伊藤叡王に決定。日本シリーズ初出場ながら、6月20日に閉幕した第9期叡王戦五番勝負で藤井聡太竜王・名人(王位、王座、棋王、王将、棋聖、21)を破り、初戴冠を叶えた伊藤叡王とあり、タイトル獲得後の初陣となった本局には大注目が集まっていた。
後手番となった稲葉八段は、この大舞台で三間飛車を志向。公式戦で振り飛車の採用率が上がっている稲葉八段だが、早石田はやや意表の出だし。それでも伊藤叡王は想定内とばかりに冷静に対応し、力戦調の将棋から早々に中盤戦へと突入した。
激しい攻め合いへと展開すると、後手の稲葉八段が攻防を見据えた角の重ね打ちで先手陣へ照準を合わてペースを掌握。伊藤叡王も技を駆使して反撃のチャンスを伺ったが、稲葉八段の猛攻は止まらない。目まぐるしく飛車角が飛び交う華々しい戦いから、苦しい時間が続いた伊藤叡王は必至に追い上げを狙ったものの、後手陣は堅く遠い。最後は切れ味鋭く先手玉に迫り、勝利を手にした。
開幕戦を制した稲葉八段は、「早い段階から考えていない将棋になり、封じ手のあたりは自信がなかった。その後、うまく駒がさばけ少し良くなったかと思ったが伊藤さんの粘りでかなり難しい将棋だった。何とか勝てて良かった」とホッとした表情で一局を振り返った。一方、初戦敗退となった伊藤叡王は、「かなり早い段階から激しい展開になったが、飛車を成り込んで少し指しやすいかと思ったが、その後の方針を間違えてしまった。途中からは駒損になり、苦しい展開になってしまった」とコメントした。
JTプロ公式戦は前年覇者、タイトルホルダー、賞金ランキング上位者から12人が選出されるトップ棋士たちによるトーナメント戦。持ち時間は各10分、切れたら1手30秒未満、各5分の考慮時間。
(ABEMA/将棋チャンネルより)