結果だけ見れば小池氏の圧勝だが、今回の都知事選は石丸伸二氏の躍進や蓮舫氏の失速など、気になる点が多かった。それぞれについて、JX通信社 代表取締役 米重克洋氏に聞いた。
米重氏は今回の選挙の「総括」として「有権者が『小池都政2期8年を継続させる』と審判を下したことが大きい。加えて、石丸伸二氏の伸張、蓮舫氏の伸び悩みによる番狂せも注目ポイントだ」と述べた。
3期目の当選を決めた小池氏の強さの理由について「元々小池都政に対する都民の評価は消極的な評価も含めて、総じて高い傾向がある。つまり、現職の強みを生かして大きな失点がないと見られたこの2期8年間をもって『これだけ実績があるから3期目もこのままの路線で行きますよ?』と有権者に問うていき、それがすんなり受け入れられた。政党別に見ると、無党派層でも小池氏は石丸氏に並ぶ支持を集めており、自民党・公明党、元々都議会で小池氏を支えている政党の支持層の多くもついていったことも大差での勝利につながった」と分析した。
大差を生んだ「小池陣営の戦い方」とはどのようなものだったのか?
「序盤は蓮舫陣営による『小池氏対蓮舫氏という構図を作る戦略』に乗らず、小池都政は是か非か、あるいは小池対他の候補者という1対多の構図を意識しつつある意味マイペースな横綱相撲を展開していた。そういう意味で、これまでの2期8年の実績を見てもらえばいいため、新しいチャレンジングな政策は必要ない。政策論争が活発に起きるより、『今の路線でいいですか? それとも変えますか?』というシンプルな問いを都民に提示したのだ」
165万8363票を獲得し2位となった前安芸高田市長の石丸伸二氏の躍進の要因については「ネット中心のメディアシフトと政治不信の掛け算だ。我々が行なった情勢調査では石丸氏の支持層は新聞でもテレビでもなくYouTubeを投票先選択の情報源として参考にしていることが判明したのだが、他の立候補者との“差”が顕著だったのだ。小池氏、蓮舫氏の支持層の中でYouTubeを情報源にしているのは10%程度だったのだが、石丸氏は50%近かった。これは今の時代はリアルな地盤ではなく、“ネット地盤”とでも呼ぶべきものがあることを意味する。なおかつ、YouTubeを情報源とする方々は新聞ほどではないが、テレビやニュースサイトを情報源としている層よりも実際に投票に行く割合が高いこともわかった」と解説。
さらに、石丸氏の躍進には「政治不信という土壌がある」と説明。
「我々の調査だけではなく、報道各社の情勢調査・出口調査でも明らかになっているが、今回石丸氏に投票した人たちは無党派層が多く、これは小池氏に並ぶほどだ。加えて、日本維新の会や国民民主党の支持層など、いわゆる第3局的な流れを組む政党の支持層にも石丸氏は人気があった。これらの支持層に共通する傾向として今の自民党の裏金問題や政治情勢に対して不信があり、一方でかつての旧民主党政権に対する評価も高くない。つまり、『今の既成政党の与野党の選択肢、永田町の中での右か左かという選択肢が自分にははまらないと』と考えている有権者が実はかなり多く、そういう人たちは今までは仕方なく“鼻をつまんで”既成政党の誰かに投票する、もしくは選挙に行かなかったのだが、石丸氏という『第3の選択肢』が現れたので、大挙して押し寄せたのではないか。まさにネット中心のメディアシフトという流れの中で、政治不信の受け皿として石丸氏というオルタナティブが生まれたことが、今回の劇的な躍進に繋がったのでは」と分析した。
一方で、伸び悩んで3位という結果になった蓮舫氏については「蓮舫氏がこの選挙で勝つためには、立憲民主党や共産党という支持母体の支持層を固めるだけでは足りず、無党派層や小池氏を支えている自民党や公明党の支持層にも一定食い込む必要があった。そのためには、いわゆる小池支持層、非小池支持層における後者は自分に結集させなくてはならなかった。だが、先述のように『小池氏対蓮舫氏』という1対1の構図を作り出すことができず、『小池氏対その他の候補者』という構図の中に埋もれるような形になってしまった。さらにそこに石丸氏という巨大な第3の選択肢が出現したことで大きく割りをくってしまった」と分析した。
(『ABEMAヒルズ』より)
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