渋谷区の笹塚や代々木などを通る、全長2.6キロの玉川上水旧水路緑道。渋谷区では現在総工費およそ110億円をかけ、農作業ができる農園をつくるなど、この緑道を人々が集う広場として生まれ変わらせるプロジェクトが進んでいる。しかしそんな都会のオアシスでとある問題が勃発した。
「高すぎる」と槍玉に上がったのはピンクのベンチ。大理石などの石材やレンガなどを粉砕し、固め直した「テラゾ」というエコな素材を使い、曲線や階段状のものなど一つひとつ違うデザインのベンチを全部で15基設置するという。渋谷区によるとこのベンチにかかる費用は15基で約6240万円、1基あたり400万円以上となる計算だ。
街の声を聞くと「400万円ってなかなかですね」「『こういった理由だからこういうのを作るんです』というのをちゃんとみんなが納得できるような形を示していかないと、作るのは厳しいんじゃないか」「デザイン性を優先して湯水のようにお金を使ってやろうとしている」「納税者としてはびっくりしましたし、外ばかり見てないでもうちょっと住民のことを見てほしい」と、厳しい意見が寄せられた。
批判に対して渋谷区の長谷部健区長は「資材メーカーが販売している汎用品ではないため、一般的な価格として単純比較は難しいですが、適正な価格設定となるよう努めてまいります」と理解を求めた。区民によると長谷部区長は住民に対し「とにかくデザイン性のあるものしか置かない」と説明。アート性を重視したとされる。
商業施設や公園などのトイレを数多く手掛けるトイレ建築家の小林純子氏は「『アートが贅沢だ』という観念がそこにあるような気がする」と指摘して「アートを責めないでほしい。それはちょっと筋違いかなと」とコメント。
2020年には渋谷区が21億円を投じた肝いりプロジェクト「THE TOKYO TOILET」にも参加した小林氏は「女性にとって公衆トイレは怖い。子どもにとっても急を要しているけれど、なかなか中に連れていけないくらい汚かったり怖かったりする。それをどういう風に変えていこうかと私は考えた。(綺麗な公衆トイレがあることが)安全で安心して町に住めるということ」と、その意義について説明した。
元衆議院議員の宮崎謙介氏は難しい問題だとしながらも「アートにはお金がかかる、文化にはお金がかかると思っているので、(予算に)余裕のある自治体はどんどん進めるべきだと思う」と提唱して「街づくりとアートは非常に密接に関わっているものだと思うので、有効な投資になるんじゃないか」と私見を述べた。
(『ABEMA的ニュースショー』より)
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