リーダー像もいろいろあるが、ずば抜けた天真爛漫さでチームを明るく照らすというのも、新たなリーダー像かもしれない。将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2024」予選Dリーグ第3試合、チーム佐々木 対 エントリーチームの模様が7月27日に放送された。試合はエントリーチームが第1局から3連勝。チーム佐々木はいきなり窮地に追い込まれたが、リーダー佐々木勇気八段(29)は「リーダーは楽観的なので、ピンチだと思っていません!」と笑顔。沈みかけたチームの雰囲気を、ひとことでガラリと変えてしまった。
16歳1カ月という、史上6番目の若さでプロ入りを果たした佐々木八段は、藤井聡太竜王・名人(王位、王座、棋王、王将、棋聖、21)が四段昇段後、プロデビューから続けていた連勝を「29」で止めた若手イケメン棋士としても注目されると、毎年のように6割から7割の勝率を誇り、ついに2023年度から順位戦A級入り。同年度にはNHK杯テレビ将棋トーナメントで前年優勝の藤井竜王・名人を下して初優勝を果たした。
個人戦だった時代からABEMAトーナメントには常連のように参加してきたが、今大会からは初のリーダーに。ドラフトでは振り飛車党のベテラン久保利明九段(48)、日頃から親交があり藤井竜王・名人の八冠を切り崩した伊藤匠叡王(21)を指名して、チーム佐々木を作り上げた。
この試合に勝てば本戦進出というところだったが、第1試合から伊藤叡王、佐々木八段、久保九段の順によもやの3連敗。エントリーチームの勢いに押され、このままずるずると敗れてしまいそうな予感も漂わせる状態だった。ところがここで発動したのが佐々木八段の天真爛漫さだ。第4局前のオーダー会議で「みんなで1回ずつ負けたんですけど、リーダーは楽観的なので、ピンチだと思っていません!」と笑顔で発言。さらに「次から挽回するということで」と続けると、久保九段と伊藤叡王の表情もパッと明るくなった。沈滞ムードを吹き飛ばそうと意識しての発言というよりも、思ったことを素直に口にしたという様子が、さらにチームメイトの心も和ませたようで、ファンからも「思ってないんかーい」「楽観派」「勇気何気にやさしい」と心温まるコメントが目立った。
ここからチームは立ち直り、第4局に伊藤叡王がこの試合初勝利を果たすと、第8局までもつれる展開に。最終的にはスコア3-5で敗れ、予選で姿を消すことになったが、佐々木八段の爽やかな様子がファンの心を楽しませていた。
◆ABEMAトーナメント2024 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり今回が7回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士11人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全12チームで行われる。予選リーグは3チームずつ4リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)