「無謀富士登山ファッション」と呼ばれる服装が話題になっている。富士山の山頂にある「富士山頂郵便局」に勤めていた局員が、実際に目撃した「登山するには無謀すぎる服装」をファッションショー風にビジュアル化したものだ。
「給水も防寒も考えずに富士山頂まで登ってきた限界ミニマリスト」
「川遊びの気持ちで富士登山に来ちゃった人」
「風速20メートルの世界で折り畳み傘をさしている人」
「富士登山と週末ゴルフの区別がついてない人」
「山頂まで走ってきてから防寒具がないことを後悔するランナー」
「荷物が重すぎて郵便局で捨ててくださいと言ってきた人」
これらを実際に見かけたのは、先月実際に富士山頂郵便局に勤務していた稲木康平氏(浜松東郵便局)だ。郵便局は標高3776メートルにあり、登山証明書の販売や、手紙の投かんなどを受け付けている。常時3人体制で午前6時から午後2時まで営業し、寝る場所は狭い3段ベッド。風呂もなく、夜はスマホも使えず、何もやることがない。
そんな現場で目撃された登山客の一例を、稲木氏が語る。「ゴミ袋に穴を開けて、合羽にして『寒い』と言っている人がいた」。子連れの外国人女性が、叫びながら迷っている様子を見て、山小屋に入れてもらうこともあったという。「ほっといたら命に関わった」と証言。
ビジュアル画像を投稿した理由について、日本郵政 広報部 マネージャー・鈴木雄人氏は「社員が実際に目撃した情報を発信していくことで、事故の予防や啓発に寄与するのではないか。安全に楽しんでもらいながら、富士山頂の郵便局にも来てほしいとの思いで企画した」と説明する。
一方で、山梨県の長崎幸太郎知事は、山小屋も予約せず、ゲートの閉まる16時にやってきて、頂上まで行き来する「弾丸登山」を問題視する。「準備不足の人の通行を断ることも、方策として考える必要がある」とした。
九合目付近では、弾丸登山を強行した120人が野宿したケースも。保温性の高いアルミ製シートにくるまる人もいれば、むき出し状態で横たわる人もいた。その多くは海外観光客と見られる。九合目にある「万年雪山荘」の渡辺和将代表が、当時の様子を振り返る。「初めから泊まる予定なら、小屋の予約をしていると思う。迷惑どころか、当人にも危険が及ぶ。どの程度その危険性を理解しているか非常に疑問だ」。
ABEMA的ニュースショーでは、現地取材を試みた。五合目では、インタビューしたフィンランドから来た女性や、アメリカから来た男性のように、しっかり寒さなど登山対策をした服装の外国人観光客が多かった。近くの飲食店の男性も「例年より少ない。県の対策が成果を出してきているのでは」と語る。
一方で、ノースリーブ姿で下山する男性の姿も。ハンガリーから来た男性は、日本語で機嫌よく登山ファッションを説明したが、その格好は「半袖半ズボン」でしかない。他にもスポーツ用ショートパンツに登山靴、スポーツTシャツ姿のイギリスから来た男性のように、軽装の登山者も見られた。
稲木氏は、山頂の気温は「平均すると、おそらく昼間で7~8℃。朝起きて薄暗い時は氷点下だった」と振り返る。高山病にも苦しんだという稲木氏にアドバイスを聞いた。「雨具と防水手袋は必ず用意すること。手が冷たすぎて、字も書けないという人が非常に多かった」と助言した。
(『ABEMA的ニュースショー』より)
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