些細なシーンと言えばそうなのだが、なんだか不思議と印象に残る……!映画「ルパン三世 カリオストロの城」は宮崎駿監督の手腕が細部まで冴え渡り、特にルパン(CV:山田康雄)が屋根の間をコミカルにジャンプするシーンは、映像的な快感に満ちあふれている。
【映像】ルパンが超ダッシュ→ジャンプ→ジャンプ→キャッチ(39:35ごろ~)
アニメ「ルパン三世」シリーズは、神出鬼没の大泥棒ルパン三世とその仲間たちの活躍を描いたモンキー・パンチ氏による漫画が原作。1979年に公開された劇場版第2弾「ルパン三世 カリオストロの城」は、ゴート札と呼ばれる偽札の秘密を探るため、カリオストロ公国へやってきたルパンが繰り広げる冒険活劇だ。同映画は宮崎駿氏の映画初監督作としても知られ、シリーズ屈指の人気を誇っている。
銭形警部(CV:納谷悟朗)の「奴はとんでもないものを盗んでいきました。あなたの心です」というセリフが印象的なエンディング、ルパンが囚われの身のクラリス(CV:島本須美)と交わす会話など、「ルパン三世 カリオストロの城」は名場面が目白押しの作品だ。ただ、“アニメーション的な楽しさ”という点で選ぶとすれば、ルパンが城の屋根から屋根へとジャンプするシーンではないだろうか。
クラリスを救出すべく、ルパンは城に侵入しようとする。屋根の上からワイヤー付きの小型ロケットを飛ばそうとするが、うっかり取り落としてしまった。なんとか拾おうとするうちに、今度は自分まで落ちそうに!ルパンはまるで急坂のような屋根を転がるようにダッシュして、あわや落下というところで大ジャンプを決め、次の屋根へと飛び移ってみせた。危機一髪の場面ではあるが、「ポワ~ン♪ポワ~ン♪」というBGMに合わせて、妙に華麗にジャンプするルパンの姿がクスッと笑える。
とはいえ、一連のアクションシーンはただコミカルなだけでもない。スーパージャンプを決めた後、ルパンは飛び移った建物からずり落ちそうになってしまうのだが、歪んだ表情など、ここは実に緊迫したムードで描かれている。コミカルなテイストと、シリアスなテイストを、アクションシーンの中で交互に描く……。この見事な緩急の付け方に、宮崎駿監督の卓越したセンスを感じて舌を巻くはずだ。
原作:モンキー・パンチ(C)TMS