登場人物のキャラクター描写やアニメーション技術など随所に宮崎駿らしさが散りばめられている劇場アニメ「ルパン三世 カリオストロの城」だが、物語が始まって早々のカーチェイスもそのひとつ。これこそがアニメ「ルパン三世」の魅了が詰まった最高のシーンだといってもいいだろう。
【映像】ルパン、驚きのドライビングテクニック(7分20秒ごろ〜)
映画「ルパン三世 カリオストロの城」は、1979年に製作・公開されたモンキー・パンチ原作のアニメ「ルパン三世」劇場用映画シリーズ第2弾。後にスタジオジブリを設立する宮崎駿氏の初長編監督作品としても知られる。宮崎駿の個性と技術が詰まった、日本映画史に残るシリーズ屈指の人気作だ。
盗み出した大金がゴート札と呼ばれる偽札だと気づいたルパン三世(CV:山田康雄)と次元大介(CV:小林清志)は、ゴート札の秘密を探るため、ヨーロッパの小国・カリオストロ公国へやって来た。そこで謎の男たちに追われていた少女クラリス(CV:島本須美)を助けるのだが……。
ゴート札の黒幕といわれるカリオストロ公国に入ったルパンと次元は、のどかな道路で猛スピードで車を走らせるウェディングドレス姿の少女と、それを追いかける黒ずくめの男たちの車に出くわした。少女を助太刀しようと愛車のフィアット500に飛び乗り、2台を追うルパン一行。車を幅寄せするなど荒っぽい方法で少女を捕まえようとする男たちに対し、次元がタイヤを銃で撃って止めようとすると、男たちはフィアットに爆弾を投げつけるなどますます乱暴な攻撃を仕掛けてきた。
これに怯むどころか「おもしろくなってきやがった」と対抗心を燃やす2人。ルパンは「まくるぞ!」と言うと、崖を登るように車を走らせ、ボロボロになりながらも道なき道を進んで先回り。男たちの前に出て、前輪を撃ち抜いてこれを撃退した。
その後、運転しながら気を失った少女の車に飛び移ったルパンは、こちらもボロボロになった車をなんとか操作し、崖から海に落ちる寸前で少女とともに脱出したのだった。
一連のカーチェイスは、無条件に少女を助けようと自らの危険も省みずつい参戦してしまうルパンたちのキャラクターや、躍動感に満ちた手に汗握る展開、そしてルパンならこんな車の運転も可能だと思わせてしまうような絶妙なテンポなど、アニメの魅力に満ち溢れた名シーンといえるだろう。ここに至るまで映画が始まっておよそ10分あまり。誰もがあっという間に宮崎駿の世界に引き込まれたはずだ。
原作:モンキー・パンチ(C)TMS