「ルパン三世 カリオストロの城」を名作たらしめる主演俳優は言うまでもなくルパンだが、助演男優賞と呼べるものがあるならぜひとも銭形警部に戴冠させたい。ルパンを追い続ける敵でありながら、地下から脱出する際は一時休戦しルパンと手を組む。ラストシーンでは作品のハイライトといえる有名な「奴はとんでもないものを盗んでいきました」のセリフ。そして物語の核心であるゴート札の秘密が暴かれたのも、他ならぬ銭形警部の活躍があってこそだった。
【映像】銭形警部、下手すぎる芝居(1時間20分35秒ごろ~)
映画「ルパン三世 カリオストロの城」は、1979年に製作・公開されたモンキー・パンチ原作のアニメ「ルパン三世」劇場用映画シリーズ第2弾。後にスタジオジブリを設立する宮崎駿氏の初長編監督作品としても知られる。宮崎駿の個性と技術が詰まった、日本映画史に残るシリーズ屈指の人気作だ。
盗み出した大金がゴート札と呼ばれる偽札だと気づいたルパン三世(CV:山田康雄)と次元大介(CV:小林清志)は、ゴート札の秘密を探るため、ヨーロッパの小国・カリオストロ公国へやって来た。そこで謎の男たちに追われていた少女クラリス(CV:島本須美)を助けるのだが……。
カリオストロ城の地下に閉じ込められたルパンと銭形警部(CV:納谷悟朗)は、脱出の過程で大規模な偽札工房を発見する。2人は世界経済の裏で暗躍してきた偽札・ゴート札の真相に辿り着いたのだ。しかし、銭形が証拠を持ち帰りインターポールに出動を要請しても「高度に政治的な問題」であることを理由にインターポールは動かなかった。カリオストロ伯爵(CV:石田太郎)が手を回したこともあり、銭形は警護の任も解かれてしまう。
伯爵とクラリスの結婚式当日、ルパンは大司教に変装し式に潜入。式の最中に騒ぎを起こしクラリスを連れ出した。一方、ゴート札の原版を狙う峰不二子(CV:増山江威子)も結婚式を中継するテレビクルーになりすまし式に入り込んでいた。ルパンが起こした騒ぎを中継する不二子。そこに現れたのは、ルパン参上の情報を不二子から得ていた銭形だった。ルパンによる結婚式襲撃を阻止する名目で突入した銭形だったが、ルパンを追うフリをして祭壇の下の秘密の入口から地下通路に入ると、不二子に自身を追わせる。そしてカメラの前で「おお、なんだここは?」「ん?そこにあるのは……」「これは偽札だあ」と偽札工房を“偶然”発見してみせ、「ルパンを追っててとんでもないものをみつけてしまった、どうしよう」とオーバーに偽札を掲げたのだった。
インターポールへの当てつけか、銭形のセリフがあまりにもわざとらしいのがおもしろい。しかし銭形の奮闘で、とうとうカリオストロ城に捜査のメスが入ることになる。芝居は大根だが、間違いなく後世に残る名演技といえよう。
原作:モンキー・パンチ(C)TMS