優勝候補筆頭を倒して、ついに連覇に“王手”だ。将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2024」本戦トーナメント準決勝・第1試合、チーム藤井 対 チーム永瀬の模様が8月31日に放送された。両チーム合わせて4人もタイトル経験者がいる豪華な戦いは、チーム永瀬が序盤からリードを奪い、スコア5-3で勝利。リーダー永瀬拓矢九段(31)が自ら3戦全勝と大活躍。連覇のかかるチームを決勝へと導いた。
永瀬九段と相手のリーダー藤井聡太竜王・名人(王位、王座、棋王、王将、棋聖、22)は、長く研究を重ね、タイトル戦でも戦ってきた間柄。どちらも相手の力をよく知るだけに、いかに早い段階でリードを奪い、チームのペースで戦うかが注目されたが、流れを掴んでそのまま押し切ったのはチーム永瀬だった。
第1局、百戦錬磨の大ベテラン・森内俊之九段(53)が登場。相手は永世七冠などを達成したスーパーレジェンド羽生善治九段(53)。少年時代から盤を挟み、プロ入り後の公式戦だけでも141局も指している2人だが、フィッシャールールでは初対決に。先手・羽生九段が矢倉模様、後手・森内九段が雁木に構えて始まると、じっくりとした序盤から徐々に後手が5筋、6筋と歩を伸ばしてプレッシャーをかける展開に。角交換直後、後手が持ち駒にした角を敵陣に打ち込みペースを握ったかに見えたが、先手も挽回し僅差で二転三転の激戦。最後は後手玉が上部への脱出ルートをうまく確保したこともあり、森内九段が大事な初戦を制した。
すると第2局はリーダー永瀬九段が登場し、青嶋未来六段(29)と対戦。永瀬九段の先手、相居飛車で始まった将棋は、両者の粘り合いから相入玉となり、なんと持将棋に。先後入れ替えての指し直しになった。指し直し局は青嶋六段の先手番から一手損角換わりの出だしになると、先に動いた先手の動きを咎めるように、後手の応手が決まって早々一本取ると、その後は攻め手を緩めず130手で快勝。チーム永瀬が2連勝となった。
第3局、一気に3連勝を目指したいチーム永瀬は増田康宏八段(26)を送り込んだが、いよいよ出てきた藤井竜王・名人は超強烈だった。藤井竜王・名人の先手から両者、角換わり腰掛け銀になると、お互い読み筋なのか大盤の解説、聞き手が会話する余裕もないほど指し手が超ハイペースで進んでいった。ようやく落ち着いたと見られたところ、増田八段が歩を打ち込んできたところ、スッと金を避けたあたりから藤井竜王・名人の指し手がさらに冴え、気がつけば123手で勝利。チーム永瀬としては勢いを止められる格好となった。
それでもこの試合は、オーダー順が功を奏した。これまで後手番を受け持ってきた永瀬九段が、今回は第4局に登場し、またしても先手番に。羽生九段と対戦すると、難解な横歩取りの序盤から、決断のいい攻めと分厚い守りのバランスがよく、解説を務めた佐々木慎七段(44)からも「負けない将棋、永瀬九段のキャッチフレーズそのままの将棋」と評価される内容で、自身2勝目をもぎ取った。
第5局、この日2度目の登場となった森内九段がさらに勢いを増し、青嶋六段も倒して2勝目。スコア4-1で早くもチーム勝利に王手をかけたが、ここから第6局は増田八段がまたも藤井竜王・名人に完敗、第7局も森内九段が羽生九段に敗れ、スコア4-3と迫られた第8局できっちり締めたのも永瀬九段だった。
青嶋六段と都合3局目となる一局は、永瀬九段の先手から相居飛車。40手を過ぎてもまだ本格的な戦いが始まらない静かな序盤だったが、青嶋六段に2筋からの攻めで誤算があったのか、形勢がわずかに永瀬九段に振れると、隙を逃さないとばかりに攻撃開始。じりじりと差を広げ、自玉の安全度は失わないという納得の指し回しで快勝を収めると、自身3連勝とともにチームの決勝進出も決めた。
試合後、永瀬九段は「我々のチームは先後を固定して指すことがありますが、対チーム藤井戦では、私が先手番を務めさせていただきました。ABEMAトーナメントで、先手番の勝率が悪くて、それも払拭できたかなと思います」と、対局順の戦略を明かしてニッコリ。大会連覇のかかる決勝戦に向けても「個人としてもチームとしても勝つことができて、決勝に進めました。去年と同じ場に立てるので、森内先生、増田さんと力を合わせたいです」と力強かった。
◆ABEMAトーナメント2024 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり今回が7回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士11人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全12チームで行われる。予選リーグは3チームずつ4リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)