勝敗を分けるポイントと候補者の政策の違いについてJX通信社代表取締役の米重克洋氏に聞いた。
自民党の総裁選においては、367人の国会議員票と、同数の党員票が投じられ、過半数を獲得した候補が新総裁になる。しかし、過半数を得た候補者がいない場合、上位2人による決選投票が行われ、その際は367人の国会議員が改めて投票を行い、都道府県連が47票を投じる。
総裁選の仕組みについて米重氏は「結論として、党員票の存在はかなり大きい」と述べた。
「例えば10人が立候補した場合、各人に20人の推薦人がつくため、200票が決まってしまう。そのため、党員人気が高い候補者が決選投票に進みやすくなる。一方、決選投票では国会議員票が9割を占めることになる。そのため、党員票を取るために“聞こえのいいこと”を言っても議員票は取れないという政策的なジレンマが生じる。各陣営はバランスの取り方に苦慮しているだろう」
世論調査では、石破茂氏、小泉進次郎氏、高市早苗氏が上位で、次いで上川陽子氏、小林鷹之氏、河野太郎氏の人気が高いが、米重氏も「この中の2人が決選投票に行く可能性が高いだろう」と述べた。
「派閥からの脱却」が大きなテーマである今回の総裁選。本当に派閥の影響はないのか?
米重氏は「間違いなく以前よりは影響は弱い」と述べた。
「派閥の力が影響しているかどうかは非常に見えにくいが、少なくとも候補者がこれだけ乱立していることからも派閥のグリップが効いていないことがわかる。ただし、議員票の割合が高まる決選投票においては、最大限特定の人に集めるためにはグループ同士で話し合った方が早いため、事前にすり合わせた上で『あなたが決選投票に進んだら応援しますよ。だから見返りをお願いします』といった“取引”が発生している可能性は否定できない」
総裁選の後には遅かれ早かれ「総選挙」が控えている。やはり総選挙でも勝てる人が総裁に選ばれるのだろうか?
米重氏は「これまでは圧倒的に党員票を獲得している候補者が団結した議員票にひっくり返される総裁選が続いていたが、今回は党員票が強い人がそのまま総裁になる可能性がある選挙情勢だ」と説明した。
さらに高い認知度を誇る小泉氏と石破氏について「現状、『石破氏リード』という世論調査も多い。というのも、石破氏はある意味“与党内野党”のようなポジションにいたため、政治とカネの問題で信頼感を失った自民党を変える象徴的な存在になりやすく、“刷新の期待”を世論から受けやすい。対して、小泉氏は若いという以上に石破氏を上回る刷新感をどこまでアピールできるかかが今後の課題だ」と分析した。
政治とカネの問題について米重氏は「過去の問題と未来の問題に分ける必要がある」と述べた。
「『裏金議員は本当にけじめをつけたのか?』という『過去』については既に自民党の登記委員会や組織のルールの中で処分を決めたため『再度ルールを覆して新しく処分を決め直すとなると組織がもたない』と多くの候補者が思っているのではないか。したがって、総裁選の中の議論としては、『未来』の論点が中心になり、『今後はこのように対応する』と誰もが納得する形でズバッと明言することが大事になる。とはいえ、それだけで国民が許すかどうかは選挙結果を見てみないとわからない」
政策についてはそれぞれの候補者で“違い”が明確になっている。
「防災省の設置の是非」において石破氏は「推進」、小林氏は「反対」、金融所得課税強化において、石破氏は「推進」、小泉氏・小林氏は「反対」、選択的夫婦別姓に対して小泉氏は「個人として賛成」という姿勢を示している。
特に米重氏は金融所得課税強化について「元々はいわゆる『1億円の壁』と言われる高所得者に対する課税をどうするか、という議論が発端だ。岸田政権が最初これを掲げ、後に少しトーンダウンした経緯があったが、新NISAやiDeCoによって中間層も投資に積極的になっていく状況の中で、石破氏の政策は『市場を冷やす』のでは、という反応が小泉氏・小林氏から上がるなど大きな論点になっている」と述べた。
(『ABEMAヒルズ』より)
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