シニア世代に刺さった全国最年少市長“4割が65歳以上”超少子高齢化の街を救えるか?カギは子育て支援にあらず?
【映像】大館市中を走りまくる石田健佑市長
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 1日に秋田県・大館市で行われた市長選挙で当選した石田健佑市長は、今話題の人だ。その理由は全国最年少であること。これまで兵庫県・芦屋市の高島崚輔市長が同じ27歳で最年少だったが、石田市長の方が4カ月若い。東京で会社に勤務、起業と失敗を経験した後、故郷の大館市に戻るとカブトムシの販売などを手掛ける会社を設立し、これが成功。昨年には大館市議選に立候補し、過去最多得票で当選すると、前市長の辞職に伴った市長選に立候補し、初当選を果たした。人口約7万人の大館市は65歳以上の「高齢化率」が40.5%にものぼり、2050年までに消滅する可能性がある自治体とも指摘されている。「超少子高齢化という問題は今まで誰も解決してこなかった難しい問題」としながら、これを克服すると掲げた石田市長は『ABEMA Prime』に出演、高齢者が多い街で当選した理由と、今後のビジョンを語った。

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■約300票差の大接戦を制して初当選

 2番手とわずか309票差という大接戦を制し、全国最年少市長となった石田市長。その若さから同じ20代を中心とした若者たちからの支持を集めたと思われがちだが、実際には多くの高齢者たちによって当選できたという実感を得ている。「私はまさに、大館の孫世代。注目していただきたいのは、おじいちゃん・おばあちゃん世代の方が、孫の世代に託してみよう、孫と一緒に成長する街というところに期待して当選させていただけたと思う。超少子高齢化という問題は、私がトップダウンで1人で解決できるものではない。おじいちゃん・おばあちゃん世代のみなさんに知恵と力を借り、まさに孫世代の私がひたすら失敗もしながら行動していく、力を合わせていくというのが響いたのではないか」と振り返った。

 石田市長も、一度は大館市を離れた身だ。高校卒業後に上京して就職。その後双子の弟と起業したものの失敗し、大館市に戻ってきた。ハローワークで仕事を探すもなかなか見つからなかったが、再び弟と起業したカブトムシの販売などを手掛ける会社が成功。今では全国50カ所以上に事業展開するほどにもなった。ただ、ここにも上の世代の力を借りた経緯がある。「この会社を起業するときも、おじいちゃんとおばあちゃんが先祖代々の土地を売って金を工面してくれ、支えられて出来上がった」。カブトムシを大量に育てていた際、エサを雑虫に食べられてしまい困っていたところ、地元のきのこ農家などから出る廃棄物をエサとし、これが成功。SDGsのイベントを全国各地で展開、カブトムシを普通より早く育てるノウハウも使うなど、注目のスタートアップ企業となっている。

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■祖父母の言葉をきっかけに地元で市議会議員→市長に

 市議会議員になろうと思ったきっかけも、この起業が取っ掛かりだ。成功により共同代表をする弟のもとに、企業誘致の話が舞い込んだ。会社の成長を考えれば市外に出た方が可能性は高まるところ。石田市長は、金を工面してくれた祖父母に移住を相談したが「大館を出たくない。簡単には出られない」と告げられた。この言葉を受けて「だったらこの街の政治を変えて、おじいちゃん・おばあちゃん世代と一緒に栄えていく道を選ぼうじゃないかと、まずは昨年、市議会議員になった」。しかし市議会での議題が、キャンプ場をどう整備するかなど、他の地域から訪れる「交流人口」の増加が重視されていることに疑問を感じ、「定住人口」の増加、長年の課題である超少子高齢化と向き合うことが重要だと考え、今回の市長選でもこれを強く訴えた。

 少子高齢化に悩む自治体は国内でも数多くある中で、石田市長が打開策として打ち出したのは、よく言われる少子化対策・子育て支援ではなく、高卒・大卒で流出していく若者が街に残るような環境づくりだ。「18歳になって進学と就職で、大館市を出ていく人が非常に多い。まずここに対策を打っていかないことには、どれだけ子育てや教育に金を入れたとしても、また街から出ていってしまう」。流出を食い止めるために力説したのが、市内で魅力的な仕事を増やすことだ。「若い世代に話を聞くと、ほとんどが『仕事がない』という。実際には大館市に、たくさん仕事はあるが(若い世代が)やりたい仕事がないということ。職種についてはIT企業もそうだし、女性が働きやすい場所も足りていない。若い世代、学生たちとも一緒に誘致をするという議論をこれからもっと深めたい」と述べた。

 これには自民党・デジタル社会推進本部の事務総長で衆議院議員の小林史明氏は、自身が29歳で初当選した際の経験を踏まえ、若さについて「政治家は遠い存在で、何か言ったら論破されるんじゃないかなと思われるが、(若いことで)話しやすいからアイディアがどんどん集まってくる。市役所において市長の役割はすごく重要で、市の職員たちも実はアイディアを持っているが上げられていない。一緒にやれるんじゃないかと思われると、アイディアや人が集まってくる」と語った。

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■兼近大樹「若者を集めたいなら若者が喜ぶ街を。高齢者のために、では若者に刺さらない」

 全国最年少市長には、若さへの期待が高まる反面、経験不足や起業して失敗した過去について不安の声も出ている。ネットでも「政治的な実績もなく、起業の失敗もしている。少し不安」「年上ばかりの市議会とうまく折り合わないと短命に終わる」というものが見られている。

 祖父母世代と孫世代が一緒になって街を変える、そのために若者が残ってくれるような街を作る。理想的に思えるが、EXIT兼近大樹は若者の心理を率直に伝えた。「言っていることはわかるが、結局若者は割と自分のため、自分軸で生きているはずだ。高齢者のためにこの街にいてください、では若者に刺さらない。毎回こういう話をする時は、若者の気持ちが置いていかれて、高齢者に向けていいことしか言っていない。若者は東京に行きたい、キラキラした素敵な場所を求めて集まっていく。若者を集めたいなら、若者が喜ぶ街、それこそ高齢者がいない街を作らなきゃいけないわけで、両方を集めるとなると若者が高齢者を支える構図が出来上がるだけ」。

 これに石田市長は「若い世代でも大館市に残りたい人は多い。残る一番の理由は家族。お父さん・お母さん、おじいちゃん・おばあちゃんと一緒に暮らしたい、近くにいてほしいという思いで残っている方が多い。私が掲げたビジョンは決して高齢者だけに向いているものではなく、若い世代だって家族と一緒にいたい、だから一緒によくしていかないといけないというもの。そのために、いろいろな働きたい仕事を作らなきゃいけない」と語った。

 また、小林氏からは「石田さんは実にしたたかにやった。石田さんの政策は、若い人たちのために地域で増えているゲートボール場やグランドゴルフ場を、サッカー場やダンスができるスペースにする、おそらくそういうこと。これを議会でやろうとすると、地域のシニアの方々に反対されるが、(市長)選挙の時に合意を取ってしまっているので若い世代向けの政策をした時に賛成が得やすい」と指摘もあった。
(『ABEMA Prime』より)

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