なんとも見た目に重そうな駒台だ。将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2024」本戦トーナメント準決勝・第2試合、チーム豊島 対 チーム稲葉の模様が9月7日に放送された。第3局はチーム豊島・糸谷哲郎八段(35)とチーム稲葉・上野裕寿四段(21)が対戦。後手番だった新鋭・上野四段が快調に指し進める中、終盤に飛車2枚、角2枚を全て駒台に乗せるという珍しい「大駒コンプリート」が発生した。
将棋における大駒は、攻撃力・守備力ともに絶大な力を誇る重要なもの。前後・左右どこまでも動ける飛車は主に攻撃、前後・左右は動けないが斜めならどこまでも行ける角は、同時に攻防に効果を発揮することも多く、どちらも勝利には必要な駒だ。ハンディ戦でもある「駒落ち」でも、飛車落ちや角落ち、さらに両方を落とす二枚落ちは、大きく実力者がある2人でも勝負になることから、どれだけ威力のある駒なのかがわかる。
糸谷八段の先手番で始まった一局は、糸谷八段の居飛車・雁木、上野四段が居飛車・矢倉で始まり、早々に4筋から戦闘開始。激しく駒の交換が繰り返される中、糸谷八段の攻めを冷静に受け止めた上野四段が優勢のまま中盤、終盤へと突入していった。それでも粘りを見せる糸谷八段がさらに攻撃のギアを上げると、形勢は互角、さらには先手に振れるシーンも。ただ再度、上野四段が盛り返し、激しい終盤戦へと進んでいった。
するとここで珍しいシーンが発生した。既に上野四段が飛車2枚、角1枚を駒台に並べて持ち駒としていたところ、残り1枚の大駒・糸谷八段の角と上野四段の銀が交換。上野四段の駒台には、きれいに飛車・飛車・角・角と4枚の大駒が並ぶことになった。盤面に自分の大駒があり、かつ持ち駒にもあってのコンプリートはありそうなものだが、全て駒台に並ぶというのも珍しいもの。なお対局は、最後の寄せに惜しみなく大駒を次々と打ち込んだ上野四段が勝利した。
◆ABEMAトーナメント2024 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり今回が7回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士11人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全12チームで行われる。予選リーグは3チームずつ4リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)