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【映像】震撼の親跳満 多井隆晴、重低音の激渋ボイスにスタジオ騒然

 プロ麻雀リーグ「Mリーグ」初年度から4年連続3位となり、5年目に悲願の初優勝。史上初の連覇を目指して戦った渋谷ABEMASだが、2023-24シーズンはセミファイナルシリーズ5位に終わり、初めてファイナルシリーズ行きを逃した。多くのファンからも残念がる声が多数寄せられた中、リーダー多井隆晴(RMU)は「その瞬間は屈辱でしたが」と言いつつも、全く別の視点を持ち合わせていた。大事なのは自分を含めた4人全員が、Mリーガーで居続けること。見据える目標も2度目の優勝ではなく、仲間とともに戦う権利を得られるレギュラーシーズン突破だという。

【映像】震撼の親跳満 多井隆晴、重低音の激渋ボイスにスタジオ騒然

―昨期は初めてファイナルを逃して屈辱のシーズン。自身で振り返って、どんなシーズンだったか。

 多井隆晴(以下、多井) その瞬間は屈辱でしたが、麻雀という競技を理解すればするほど、勝ったり負けたりすることもあるし、前回の敗北でいいきっかけになったかな。いつか「あの時の負けがあったから、今の僕らがいるんだな」と言えるようにするのがプロだと思うし、しなければならない立場だと思っているので。もう今は結構、すっきりしています。

―これまではずっとファイナルに進出し優勝もした。昨年は初めて逃してしまったが、それは前が良かったのか、それとも昨年が悪かったのか。

 多井 (2022-23シーズンまでメンバーを維持するのに)「ファイナルに残らなければいけない」というレギュレーションがずっとあった。正直、僕はレギュレーションに添って戦っているだけなんですよ。麻雀プロをやっていて、優勝がすごく価値の高いものとは認識していますが、「Mリーグの場に居続ける」というのも、僕ら4人にとってすごく大切なこと。

 ファイナルを逃したというよりは、今まではファイナルに残らなければいけないから、残っていたんですよ。前回は、レギュラーシーズンを通過(してセミファイナルシリーズに進出)で良かったわけで。だから、通過はしているわけですよ。そういう意味では、6年連続で勝利しているんですよ。僕はレギュレーションと戦っているので。

 他のプロがどう思っているかは知りませんが、僕は「メンバーを1人代えなければいけない」というのは、それだけは僕がいる間はあってはいけないことだと思う。彼ら3人の、あるいは自分を含めた4人がMリーグからいなくなるというのは、僕の中では受け入れられないことなので。

 それを目指して打っていたので、僕としては、そこで1回満足した、というか。仕事は終わったな、という感覚があった。そこでセミファイナルで負けたというイメージ。他の3人と違うし、Mリーグファンともたぶん違う感覚を持っていると思います。僕だけは「別に負けてないけど」と思っています。

―4人がMリーガーでいることの重要性をよく語っている。昨年はセガサミーフェニックスから2人いなくなった。ドラフト1位からは初めて魚谷侑未もいなくなった。Mリーグからいなくなった人を見ると、余計に感じるものか。

 多井 帰ってきた人はいない。だから、「いなくなったら、もう帰ってこないんだ」という感覚で僕はやっている。正直、僕はABEMASから外されるとは思っていませんが、他の3人の誰が外れても嫌ですし。その時は「自分が外れればいいかな」くらいの気持ちで今まではいましたが、そうならないことが大事だと思っている。僕がいるうちは「絶対にレギュレーションにかからないようにしよう」というのが最大目標なので、そういう意味では、僕は負けていない。

―いずれ戻ってくる人が出てくるかもしれない。

 多井 いずれ出てくるかもしれませんが、今まで戻ってきた人はいないですし。僕は、MリーガーとMリーガーではないプロでは、かなり差があると思っているので。いろいろな待遇や環境ですね。そこで1本の線があると思っているので、自分のチームメイトが、あるいは今は塚本泰隆監督ですが、藤田晋(前監督)が作ったチームがレギュレーションにかかってはいけないと思っている。「あの人の見る目がなかった」と世間に思われるのが嫌なので。僕が現役でいるうちは、チームメンバーが変わらずに。チームから「クビ」と言われるのはいいですが、レギュレーションにひっかかるのは嫌です。

―まず目指すところはレギュラーシーズン突破の6位以内になるか。

 多井 僕はそうです。本当に、6位以内に入ることが最大。それでレギュラーシーズンは戦う。他のチームは「優勝だ」「1ポイントでも多くしよう」と言うかもしれませんが、その打ち方は3年に1回くらい大コケするので。他の誰が何と言おうと、僕は6位以内になろうかな、と思います。

―今年も今まで培ったイメージに近い形で戦うのか。

 多井 麻雀の内容は少し変わりますね。他の人が変わったので。メンバーも変わったし、新しく入った人の雀風も含めて対策して、より僕がプラスになるように、ABEMASがプラスになるように自分自身も変わりますし、チーム全体にも少しずつ言葉を入れます。あまり直接的には言いませんが、そう打つように、どんどん仕向けていきます。ひとつひとつの言葉で。

―昨年はチームが1つ増えた。今年も2人変わった。1年目のMリーグと今のMリーグは違うのか。

 多井 別物です。3人変われば別物になりますが、もう相当、別物です。

―多井選手が一番感じている違いは、どの辺りか。

 多井 年齢による若返りで、昔の麻雀、僕らの麻雀、今の麻雀というのがある。麻雀は10年おきに少しずつトレンドが変わっていきますが、今の麻雀の良いところは合わせますが、今の麻雀の悪いところは一切、やらない、みたいな。そんな感じでバランスを取りながら、良い所取りをしていこうかな、と。普通、良い所取りをすると、技量の低い人は失敗しますが、僕は毎年毎年、少しずつ少しずつモデルチェンジ、マイナーチェンジみたいな感じですね。フルモデルチェンジはしませんが、少しずつチェンジしている、という感じです。

―今の麻雀のダメなところとは、どういう意味合いなのか。

 多井 例えば確率論だけでやっていくと、人間がやるものだから確率を外している相手には読みが崩されるし、通用しない。あと、よく言われる打点とスピードだったり、攻撃と守備のバランスが、攻撃に寄れば寄るほど守備が疎かになるし、どんどん「アガりたい、アガりたい」となると、今度は高い打点の相手3人にはトップ取り麻雀が通用しなくなる。

 Mリーグはトップが偉いから、みんなが「トップ取り、トップ取り」と言っているから、正直、全員がトップ取りをしようと思えば、2着は簡単に取れるようになる。というのが、僕の中で昔の良いところ、今の良いところというのがある。

 あとは、みんなが赤入り麻雀に慣れてきた、という感じですよね。Mリーグができた時は、主要5団体のルールに赤入りは、あまりなかったんですよ。赤入りの公式戦は本当になくて。みんなは「普段、練習していますよ」と言いますが、不特定多数とやっても、特定の人間とやっていないと意味がない。

 例えば、インターネット麻雀でもいいし、巷の麻雀でもいいですが、赤入り麻雀を1万局、10万局やろうが、Mリーガー相手にはやっていない。麻雀のトッププロたちが真剣に赤入りを攻略し出したらどう打つか、誰も知らなかったわけですから。

 僕はそこで、初年度の最初の数カ月はデータ収集ばかりしていたので。「あ、この人はこう打つんだ」「この人の赤入り対応ってこうなんだ」とか、発言も全部メモして。そこから、1年目の後半くらいから僕のMリーグは始まった、みたいな感じでした。

 昔のプロというか、自分の考える麻雀は、場によって、フィールドによって打ち方が変わるべきだし、相手によって変えるべきだと思っています。対人ゲームをやっているんですよ、僕は。自分の手牌だけの確率ゲームをやっていない。

―他のメンバーに求めることは?

 多井 ないですよ。それぞれの人生で、それぞれの麻雀プロ活動があって、それぞれの性格があって。麻雀もそうだし、麻雀以外のプロ活動もそうだし、もう彼らも大人だから、自分たちで全部決めてもらって。そこで、あまりにも自分と乖離して離れた時に、否定から入らずに「今、そんな感じだけど」と話し合いはしようと思っています。

 麻雀も、あまりにも結果が悪かったり、あまりにも自分と全然、考え方が違った場合は質問から入って、「今、どんな感じで、どんな作戦でそれを打ったの?」みたいな。そんな感じでやっていこうかな、とは思っています。

―聞いていると、当初とは他のメンバーへのアプローチが変わった。

 多井 変わりましたよ、全然。僕もYouTubeをやって、V-Tuberさんたちとか麻雀の初心者から上級者まで、もう何百人と関わってきて、人前で麻雀を打つことをしょっちゅうやってきた。そこで、相手のこともリスペクトしつつというか、立てつつ、アドバイスをできれば、みたいなものが磨かれた。今さらチームメイト3人に自分の考えを押し付けようとは思わないし。彼らのやりたいようにやってもらっていい。

 ただ、僕がいなくてあの3人で「優勝候補筆頭か」と言えば、正直そうではないと思っている。まだ、自分がやってきた経験とか、自分のスキルとか、知的財産というか、そういうノウハウを、まだ教えられることはあると思っていますが、それは教え方の問題、伝え方の問題もあるので。その辺は気を付けてアドバイスをしたいな、と思っています。

 -V-Tuberの話があった。視聴者の層を見ると、Mリーグを見ていなかった人が見ている。そういった人をMリーグに引き込む、見てもらうためには。

 多井 例えばABEMAでもMリーグ機構でもいいですが、「どう変えればいいか」と何か行き詰った時に、麻雀プロにだけは相談しないでください。麻雀プロが見たいもの、やりたいものと、視聴者が見たいもの、やりたいものは全く違うので。僕は神域リーグを作る時も、「麻雀プロのアドバイスだけは聞くな」と言っているし。僕はむしろ「麻雀プロがやりたくないものをやっていこうぜ」と思っている。

 だから、見せ方ひとつも番組作りもそうですが、例えば、Mリーグの対局1回・2回があって、前と後ろと間とある時に、「麻雀プロをかっこよく映そう」「麻雀プロのドラマ性を出そう」とか、そんなものは全く関係ない。麻雀を全く知らない番組制作のプロが「こうやったらいいんじゃないの?」みたいな、今までなかったこともやっていいし、バンバンチャレンジしていい。

 そこは本当に、藤田さんが「Mリーグを作る」とか、「RTDリーグを作る」とか、「団体対抗戦をやろう」と言った時に、「僕にしてほしいことはありますか?」と藤田さんに言われたんです。例えばいろいろな他のプロは「スポンサーをしてほしい」「こういう大会をしてほしい」とかリクエストをしたらしいですが、僕は「そんなことはプロに聞かないでくれ」と。「藤田さんみたいな先見の明がある、経済界のトップにいる人が、今まで成功してきたスキルのもと、俺らを勝手にプロデュースしてくれ」と。「麻雀プロにアドバイスなんて一切、求めないでくれ」と言いました。

 たぶん、そういう所も気に入られた要因かもしれませんが、やりたいことをやってほしいです。Mリーガーなんて、ただの駒なので。僕ら36人が一斉にいなくなって、総取り替えしてもMリーグは続く。でも、スタッフさんや藤田さん、参加企業は変えられないもの。それくらいの気持ちで、やりたいことをやっちゃってください。

◆Mリーグ 2018年に全7チームで発足し、2019-20シーズンから全8チーム、2023-24シーズンからは全9チームに。各チーム、男女混成の4人で構成されレギュラーシーズン各96試合(全216試合)を戦い、上位6チームがセミファイナルシリーズに進出。各チーム20試合(全30試合)を戦い、さらに上位4チームがファイナルシリーズ(16試合)に進み優勝を争う。優勝賞金は5000万円。
(ABEMA/麻雀チャンネルより)

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