プロ麻雀リーグ「Mリーグ」2023-24シーズンの覇者、U-NEXT Piratesの中でも最も光り輝いたのは、なんといってもMVPも受賞した鈴木優(最高位戦)だ。単身赴任で上京し、家族に活躍する姿を見せると誓った2年目での活躍で、すっかりMリーグのスター選手の仲間入りを果たした。ただ鈴木優は「まだまだ食べたりない」と、さらに上を目指す。
-チームは完全優勝、個人としてはMVP。これ以上ないシーズンだったと思うが、改めてどういうシーズンだったか。
鈴木優 僕は昨シーズンが2年目でした。選手を入れ替えて新パイレーツとしての船出の1年目は、僕も仲林(圭)もいい結果を残せずに悔しい一年だったので、今年こそ「圧倒的に勝つ」という目標を掲げて臨んだ一年でした。レギュレーション的にレギュラーシーズン敗退だと、また選手入れ替え対象になる。少しプレッシャーのかかる一年のスタートではありましたが、本当に順調でした。誰かが3着・4着を引いても、誰かがすぐにリカバリーできるような、とてもいい展開でチームの雰囲気もとても良かったです。
常にポイントを持って上位で推移できたことで気持ち的な余裕もありましたし、レギュラーシーズン、セミファイナルシリーズ、ファイナルシリーズと(全て1位で)完全優勝することができて、この上ない結果でした。
MVPに関しては、剛さんは少し調子が悪かったですが、3人の誰が取るのか分からないくらいのいい位置で戦えて、結果自分が取ることができて、とても充実した一年でした。
―長くシーズンを戦い、これだけうまいこと転がることもなかなかない。何故、そこまでうまくいったのか。
鈴木優 たまたまうまく噛み合ったというか、いい目が出続けたな、と。平均以上の何か恵まれたものがないと、なかなかここまで勝てるものではないと思いますので、それこそ配牌だったり、ツモだったり、展開だったり。本当に噛み合わせがピッタリとはまったという部分だとは思いますが、本当に強いチームなので、恵まれなくても優勝はしていたと思います。ただ圧倒的に勝てた部分は「ついたな、ラッキーだったな」という感じです。
―他のチームメイトも調子が良かった。切磋琢磨できたか。
鈴木優 僕は結構、試合に気持ちで臨むタイプで、特に2試合目に出た時に、1試合目の選手が悔しい4着を引いたりとか、成すすべなく「厳しかったな」と悔しい表情で帰って来た時は、「絶対に敵を取ってきてやるぞ」という気持ちで行きます。逆に、自分が1試合目に情けない結果で終わった時には「取り返してくるからね」と。そういったチーム間で「マイナスを挽回しよう」というところを感じていましたので、強い気持ちで試合に臨めたりですとか、たまたま、すぐリカバリーできました。
本当に、4着・4着、4着・3着みたいな日がほとんどなかったんですよね。4着を引いても、1着や2着だったり。そんな日が多かったので、大きくスコアを減らすことがなかったのが、結果として良かった要因です。
―2人が入って1年目からコミュニケーションが取れていたように思う。2年目は。
鈴木優 家族というと大袈裟ですが、控室でも「ここは、この方がいいよね」「ここは、こうするべきじゃないかな」とか、思ったことを気兼ねなく相談できる。アドバイスを求めたいし、求められたり、そういった信頼関係ですかね。チームメイトみんなで考えを共有したり、そういった部分で雀力の底上げになったり、本当にいい環境だな、と思います。自分の失敗を、みんなで検討し合える。そんな関係がいいんじゃないでしょうか。
―MVPを取った。直後の反響もあっただろうが、しばらく経ってからの反響、あるいは今までなかった仕事が増えたこともあったか。
鈴木優 MVPだから呼んでいただけたのかな、というお仕事はいくつもあります。MVPを取ることができましたが、僕はチームとして優勝したかった。MVPを取っても、チームが優勝できなければ、そこまで喜べるものではなかったので、チーム優勝もできたことで、自身のMVPも、とても喜べるものになりました。
36人の中の1番になれたというのは自信にもなりましたし、だからこそ、来期は簡単に負けるわけにはいかない。開幕するとチャンピオンのパイレーツ、MVPの鈴木優と言えなくなるのが、少し寂しいですね。
-今までもいろいろな大会で活躍された。明らかに反応は違うのか。
鈴木優 全く違います。全くというとあれですが、Mリーグ以外で戦う舞台はほぼ個人戦。チームとしてパイレーツとして、どの選手も応援してくださったファンですとか、鈴木優個人を応援してくださっているファンもいるとは思いますが、本当にMリーグという舞台での優勝とMVPは反響が比にならないくらい、とてもすごいです。
いろいろな方にお会いするたびに「おめでとう」「ありがとう」と言ってくださるんですが、「ありがとうというのは、僕たちの方だよ」と思いますけどね。本当に大きな反響で、感謝するばかりです。
―シーズン中、なかなか勝てなかった醍醐大選手は心配したファンからたくさんお守りをもらった。鈴木優選手はファンから物をもらったことはあるか。
鈴木優 例えば、僕はビールが好きなので、ビールを持ってくださったりとか(笑)。一人暮らしなので牛丼の券だったり、「マクドナルドを食べてね」だったりとか、袋麺とか。会いに来てくださるだけでありがたいのに、「ハンカチを使ってください」とか、「ネクタイを使ってください」とか。そういった気遣いもいただけています。みなさんに「手ぶらで来てくださるだけで、本当にありがたいですよ」と言いたいです。頂き物は、すごく増えましたね。
―日用品が多いのか。
鈴木優 多いですね。単身赴任で来ているので。気をかけてくださるファンが多いです。
―単身赴任の話が出た。家族の反応はどうだったのか。
鈴木優 家族に優勝を届けるために、単身赴任で東京に来ています。1人で東京に住んで結果を出せないまま何年もいるとか、チーム編成の危機でMリーガーでなくなってしまうとか、そういうことは家族を養う上であってはいけないこと。まず一つ結果が出たことはホッとしていますし、僕以上に応援に熱が入って、僕以上に喜んでくれました。
練習や大事な人との広がり、そういう部分を含めて、理解してくれている家族には本当に感謝していますし、続けていきたい気持ちでいます。
―Mリーガーになった時は、どうなるか分からなかったが、しばらくは東京にいそう。家族を呼ぶイメージはあるのか。
鈴木優 僕としても、お仕事はしたい。お仕事はしたいし、帰りが日を跨ぐこともありますし、休みもないですし、練習もいっぱいしたいので、この環境はありがたいですが、このままではいられないと思うので、近い将来(家族が)愛知から東京に来るような準備もしています。ただ、大きな買い物になるので。ローンの審査だったり、頭金だったり、そういった部分で準備の話は最近、よく出ています。
―完全優勝した。MVPも取った。目標設定は難しいと思うが、イメージしていることはあるのか。
鈴木優 2023-24シーズンを優勝したチャンピオンチームとして、来期はパイレーツがレギュラーシーズンで負けてしまった、ファイナルに残れなかった、優勝できなかった、個人的にはMVPだった僕が全然、成績を残せなかったとなると、「やっぱり、麻雀ってそういうところがあるよね」となる。
大袈裟かもしれませんが、「パイレーツ、たまたまだったのかな」という風には本当に思われたくないです。だからこそ、Mリーグをご覧のみなさまに、「パイレーツは本当に強いな」「隙がなくて、本当に常勝チームなんだな」と思ってほしいですよね。
もちろん、運のゲームではありますが、「麻雀って、たまたま勝つことがあるよね」と思われるのは屈辱なので、次のシーズンこそが大事なのかな、パイレーツは本当に強いチームだとアピールできるシーズンなのかな、と思うので。できれば2023-24シーズン以上の成績を出して、もっとぶっちぎりで勝ちたいです。
いろいろな人に「優勝してMVPを取って、目標がないでしょ」と言われますが、全くそんなことはなくて。これを経験した次の年だからこそ、より負けられない。より強い気持ちがあるので。全然、お腹いっぱいではなくて、すごく空いています。まだまだ食べたりない。欲しいタイトルもありますので、より一層、頑張りたいです。
―以前、4.5畳の部屋に住んでいると言っていた。現在もそうなのか。
鈴木優 はい。徒歩13分、4.5畳、5万9000円に住んでおります。
―MVPを取って、環境を変えることはなかったのか。
鈴木優 ないですね。僕は広いお家に住みたいとか全くなくて、寝られればいいので。もちろん愛知の家賃もありますし、寝るだけに帰っているだけなので、MVPを取ったとか、優勝していい環境だからと無駄遣いしたいわけでもなくて。何なら、今の家がとてもいいと思います。
―鈴木優選手と本田朋広選手の天然語録が話題になっている。
鈴木優 本田君は本物ですね。あれはびっくりしました。「こんな子がいるんだ!?もう40でしょ?」と思いますが、僕は全然そんなことはないです(笑)。もしかしたら、少しだけ物を知らないかもしれませんが、物を知らないだけで、天然というものではない。本田朋広こそが、辞書を引くと「本田朋広・天然」と書いてあるくらいに。本物だな、と思いました。
―本田選手にこの話を振ったら、ほとんど同じことを言っていた。
鈴木優 おかしいですよ、それは(笑)
―最近は仕事を一緒にする機会もある。
鈴木優 「熱闘!Mリーグ」でも、本田君と一緒に収録したものが流れました。いろいろな方にも「一緒に配信してほしい」「絡んでほしい」と。少し誤解を生んでいるようですが、僕に関しては。「そういった絡みを見たい」と楽しんでくださっているので、うまく本田君の天然を引き出せるように、イジれるようにできたらいいな、と思います。
◆Mリーグ 2018年に全7チームで発足し、2019-20シーズンから全8チーム、2023-24シーズンからは全9チームに。各チーム、男女混成の4人で構成されレギュラーシーズン各96試合(全216試合)を戦い、上位6チームがセミファイナルシリーズに進出。各チーム20試合(全30試合)を戦い、さらに上位4チームがファイナルシリーズ(16試合)に進み優勝を争う。優勝賞金は5000万円。
(ABEMA/麻雀チャンネルより)