妊娠アウティング
【映像】職場で妊娠アウティングを経験した女性(30代)
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 本人の同意なく第三者に秘密を暴露する、アウティング。主に“性のあり方”に関して使われる言葉だが、いまSNSやブログなどで多くの女性から声があがっているのが「妊娠アウティング」だ。

【映像】職場で妊娠アウティングを経験した女性(30代)

 親族や職場の人に、妊娠を勝手に暴露されることを指し、「職場で言われて、嫌だった」「妊娠=喜ばしいことと捉えて言いふらさないでほしい」などの声があがっている。

 流産や死産は妊娠初期の13週までに起きる割合が85%を占め、16週以降の安定期に入るまでは特に予断を許さない状態だ。「良かれと思って…」「おめでたいことだから…」と悪意なく広めてしまうことで本人を傷つける妊娠アウティング。では、本人はどう周囲に伝えればいいのか。報告された側はどう配慮するべきなのか、『ABEMA Prime』では、親族による妊娠アウティングを経験した当事者とともに考えた。

■家族や親族10人以上のグループLINE上で妊娠アウティングされた、かなこさん(30代)

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 かなこさん(30代)は妊娠4カ月頃(安定期に入る少し前)に親と職場の上司にだけ妊娠を報告したが、家族や親族10人以上のグループLINE上で、(親から情報が伝わった)親族によって妊娠アウティングされた。かなこさんは「文章の前置きに、『おめでたいことだからいいよね』って書いていたんで、本当に悪気は一切なかった」と受け止めている。

 LINEでアウティングされたことについては「親族間で噂が回るのは早いから、言われるかなとは思っていたが、まさかグループLINEで言われるとは想定してなかった」。その後は「すごい怒った。本人に電話しようかと思ったが、もし謝罪されなかったら、落ち込んだり、ストレスを受けるのは私なのでしなかった」と話す。

 そのグループLINEには返信したのか。かなこさんは「たくさんのおめでとうメッセージに対して、返信できない自分がいた。その何日か後に、夫から『返信しなきゃダメじゃない?』って言われて、ショックだった」と答えた。

 また、「私は妊娠初期の頃、双子を妊娠していたが、片方の子の心拍が停止してしまった背景があった。安定期に入って、もう1人の子の健康状態を確認できてから、伝えたかった。その前に言われてしまったことが本当に悲しかった」と涙しながら打ち明けた。

■「親世代は“見えない競争”をしてきてる」

 家族・親族間での妊娠アウティング経験者からは「安定期前だったのに義理の親が言いふらした」、「義父母に伝えたらすぐに祖父母らに連絡されその後すぐ流産になって気まずかった」、「義母がSNSで勝手に妊娠を公表し、他人から『ああしろ こうしろ』言われて落ち込んだ」などの声があがっている。

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 夫婦・家族問題評論家の池内ひろ美氏は「妊娠アウティングは昔からあった」といい、「法事や親族が集まる場で、 例えば長男の嫁が妊娠したことを、嬉しくて誇らしくて伝えてしまう。 あと、悪意がないからこその問題の根深さがあって、親世代は“見えない競争”をしてきてる。子供が生まれたら、身長が何センチ、言葉の発達、いつ歩いたか、どこの学校に入学する、就職する、結婚する。結婚したら、いつ孫が産まれるかなど見えない競争の中に入ってしまっている」と説明。

 さらに、“見えない競争”について「無意識のマウンティング。子育てをしてる中で、自分の子供がどこの学校に入った、成績がどうとか自慢するのは、マウンティングするつもりはなくて、親は嬉しくて言ってしまう」と補足した。

■職場での妊娠アウティング「おめでたい情報を共有すべきという意識が、企業の上司側にある」

 「ゼクシィBaby 職場への妊娠報告アンケート」によると、約90%が妊娠初期の段階で上司に妊娠を報告している。早く報告する理由は「力仕事もあり仕方なく2カ月目に伝えた」、「妊娠6週でつわりがひどい状態になり、異変に気付かれて報告」など。

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 そんな上司が妊娠アウティングしてしまうことも多々ある。職場でアウティング経験のある女性(30代)は、業務の引継ぎを考え、上司にだけ報告したが、本人がいない飲み会の場で暴露されたという。「『自分の口からみんなに伝えたい』とお願いしてたので裏切られてるところも嫌だった」と話した。

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 リディラバ代表の安部敏樹氏は「飲み会で言っちゃったみたいなのは論外だ。そんなことがあったら、『君はマネージャー難しい』みたいな話になるレベルだ」と苦言を呈す。

 職場のハラスメント研究所の金子雅臣代表は、妊娠アウティングを職場で防止するためには、「企業のハラスメント規定に『妊娠=プライバシー』を明確に盛り込み勝手に暴露しないようルール化」、「妊娠報告を受けた人が他者に言う必要がある時は当事者に確認」「妊娠報告を受けた人と当事者間で意思疎通が難しい場合は出産経験者などにメンター(助言者)として間に入ってもらう」などを挙げている。

 池内氏は「企業の中では制度が必要」といい、「パワハラやセクハラの研修と同じように、妊婦さんに対してどう接するのかという研修やトレーニングが必要だ。その上で、本人が望んでいないことを言わない」。

 さらに、「日本はおめでたい情報を共有すべきという意識が、企業の上司側にある可能性が高い。それは企業の体質だ。だから、職場での教育はすごく大事だ」と述べた。

(『ABEMA Prime』より)

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