【写真・画像】今井アンジェリカ「私も“むくみにいい”とエクソソームを打った」 美容目的で“未承認薬”使用の是非 「病気と美容でスタンスが異なる」 1枚目
【映像】未承認医薬品「バリバリ」販売で80歳男性を書類送検
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 最近、美容業界で未承認にも関わらず流行しているのが「エクソソーム」。細胞から分泌される物質で、再生医療分野で研究されているが、「若返りや美肌にも効果がある」といくつかの美容クリニックで謳われたことから、その界隈でも火がつくことに。保険診療より高額な自由診療にも関わらず、点滴投与などをする人が増えたのだ。

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 しかし、エクソソームは“未承認薬”であり、7月には厚労省が販売業者への指導を徹底するよう都道府県などへ通知。医薬品と誤認させないように注意が呼びかけられた。それでもネットにはエクソソームを使い続ける人の姿がある。

 美容目的での使用の是非、未承認薬について、『ABEMA Prime』で議論した。

■エクソソーム点滴を約10回経験「詳しい話を聞いていたらビビっていたと思う」

 エクソソームについて、抗加齢医学の先駆者で日本美容内科学会理事長の青木晃氏は「がん治療が進むのではないか、組織を修復する力や炎症を抑える作用があるのではないか、パーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対しても治療効果があるといった発表などで、にわかに注目を浴びてきた。美容業界へは、手術後のダウンタイムをできるだけ減らすといったところから。ただ、未承認薬であり、何かあった時は医師の責任になる。自由診療で使う場合には、先生によっては臨床治験の文脈で、また10ページぐらいの書類にサインをもらって本来は進める」と説明。

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 エクソソーム点滴を約10回経験したホストクラブプロデューサーの#きらお氏は、睡眠時間は短いのに疲れない、仕事の集中力と速さが何倍にも上がる、二日酔いが全くない、体の調子が上がり思考がポジティブになるなど、「過去最高の投資」と思えるほどの効果を感じていたという。「歌舞伎町の男性から、『疲れや精力に良いのを見つけたんだよ』『ED治療薬だと心臓にすごく負担がかかるから、最近は(エクソソームを)毎日打っているんだ』と勧められた。その男性はクリニックの偉い人と仲が良く、『君もやっちゃいなよ』みたいなノリ。リスクや未承認・承認の説明は全くなかったので、今回の話を聞いていたら結構ビビっていたと思う」。

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 モデルの今井アンジェリカも使ったことがあるそうだ。「私たちの間では、二日酔いに効くから飲みすぎた後に打った、とかがある。私も1回、友だちに『むくみにもいいよ』と言われて、気軽にやった。1年前ぐらいから身近になってきて、“みんなやっているから平気でしょ”という思考。未承認というのは初耳だった」と話した。

■「“新しいものが正義だ”という部分がある」

 エクソソームのデメリットについて、青木氏は「どのくらいの効果があるのか、臨床によるエビデンスがない」と指摘する。「個々の症例はあるにはあるのだが、製剤自体が不安定で不透明だ。細菌で汚染された製剤を使ったりすると、敗血症で亡くなる可能性もある。死亡事故があったと、去年10月にある学会で報告があったが、国は正式な声明などを出していない。効く可能性があるものであれば、丁寧に治験して、正しいデータを出していき、安全性を確認して使っていくのが本当の医学だ。今はどちらかというと規制する動きになっている」。

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 また、制度の“抜け穴”をついたものだといい、「再生医療等安全性確保法が10年前にできた。自分の脂肪から取った幹細胞を培養して身体に戻す、あるいは膝の関節が悪くなったところに打つといった治療は、しっかりと規制している。しかし、ここまで来るとは考えられていなかった、細胞そのままではないエクソソームや幹細胞培養上清液といったものは法に入らなかった。それで今、認可を取らなくても安易にできてしまう」とした。

 さらに、医師側の問題点もあげる。「売り込んでくる業者も、『今規制があるが、こんなに良い成分がたくさん入っている』と言って持って来る。そこで『データを見せて』などと言っても、企業秘密だから駄目だと。実は医者もわかっていなかったり、鵜吞みにして使っているところもある。美容医療業界は外科の先生と皮膚科の先生が中心で、外科は切る・貼る、皮膚科はレーザーやヒアルロン酸・ボトックスの注射などが主だ。その中で、“新しいものが正義だ”という部分があったりする」。

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 そうした上で、「本来は内科をきちんとやらなければいけない。例えば、“GLP-1ダイエット”が今流行っているが、これは糖尿病の薬として認可されたもので、ダイエットとしては認可されていない。もし何か副作用があった時、国の救済制度から外れてしまう。そういう説明が必要なのに、今はオンライン診療でバンバン出してしまっている。もう少し時間をかけて丁寧に、検査も説明もしっかりするのが内科なのに、すごくないがしろにされている危険な状態になっている」と警鐘を鳴らした。

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 また、利用者側がクリニックを見極めることも大事だという。「ホームページを見て、利点と欠点を明言していることが重要。きちんとしたクリニックはしっかり書いてある。未承認薬に関しては説明と、同意を得てからやる必要がある」と述べた。

■“未承認薬=悪いもの”? 「病気と美容ではスタンスが異なる」

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 日本の薬事承認は海外と比べて遅いのか。青木氏は「いろいろなケースがある。例えば、海外ではGLP-1製剤を減量目的で使ってもいいが、日本では未承認。そこはハードルが高くなっている。ただ、糖尿病で人工透析になる人は多く、透析が日本の保険医療財政に占める負担はすごく大きい。悪化しないように、予防的に自由診療や自費診療で新しい薬をうまく使うことも考えていく必要があると考えている」と説明。

 国主導による“ドラッグロス”解消への動きもあるが、「​​製薬会社はお金になるかならないかを見ることもある。多くの患者がいるマーケットであればいいが、ごく少ないマーケットに対しては、“そこに開発費や治験の費用をかけてペイできるか”という考えになる」という。

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 未承認の薬で救われる命もあるのではないか。これに対しては、「サリドマイド薬害事件や薬害エイズなどもあったことが、国にとっては大きな足かせとなっている。『海外の薬も日本で評価してから使おうじゃないか』というのはある意味正しいが、少ない病気だったり、小児で難しい病気についてはスピードアップする必要があると、厚生労働省も言い出した。同じ未承認薬でも美容とは全然スタンスが異なり、病気に対してはできるだけ新しい治療をできるだけ安価で、というのは国としてやるべきことだ」と訴えた。(『ABEMA Prime』より)

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