【写真・画像】「親の代の恨みつらみ・トラブルまで引き継がれる」 当事者に聞く“実家じまい”のリアル「究極の親族間ババ抜き」 相続ルールなどの激変も 1枚目
【映像】“実家じまい”の障壁 昭和の巨大な家具
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 「父が倒れるまで飼っていた犬は、里親が見つかって幸せに暮らしている」。こう語るAさん(44)の実家は、今年3月に父親が入院して以来、空き家状態になっている。祖父が建てた築50年の8DKの実家で、Aさんも結婚するまで生活。多い時は3世代7人で暮らしていた。

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 父親は退院後、施設に入ることになったため、Aさんは弟と話し合って「実家じまい」を決めた。「弟と私とで家を処分せないかんね、と話していて」。その理由は、実家の土地は借地で、2年ほど前から地主にも「土地を返して欲しい」と言われているため。家屋を解体し、更地にして返却する必要がある。

 一番心配しているのが、費用。昭和の家らしい大きな家財道具や家の解体など、全部で300万円ほどかかるという。「市からの援助も最大50万円。それではどうしようもできない」。

 超高齢化社会を目前に控え悩む人が多い中、『ABEMA Prime』では相続や金銭トラブルなど「実家じまい」のリアルを体験した当事者に聞いた。

■15年空き家の実家は“再建築不可物件” そのリアルは「究極の親族間ババ抜き」

 著書『私の実家が売れません!』で、自身の実家じまいをまとめている作家の高殿円氏。コロナ禍をきっかけに整理を始め、「父も叔父も、いつコロナでどうなるかわからない。明日にでも相続問題が起こるのではと、焦りと危機感でいっぱいになり、『私がやろう』と感じた」と話す。

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 高殿氏の実家は、兵庫県西部にある築75年の一軒家だ。祖父が他界し、3兄弟が相続することに。長男と三男(高殿氏の父)が自宅、次男は自営米屋の精米所を相続したものの、15年間にわたり空き家状態になっていた。

 理由として、「次男は精米所をすぐ売ったが、いつの間にか母屋に住んでいた。『まあいいか』と付き合いもないまま時が過ぎて、叔父も急に倒れて病院で亡くなってしまった。本当に物がいっぱいの家が残されたが、身内がなく場所も遠いため、片付けに行けぬまま15年経ってしまった」という。

 しかも、実家の売却を試みると「再建築不可物件」だということが判明し、不動産業者は手を引いてしまう。また、昭和の家電や家具を処分しようとすると、業者の見積もりは40〜80万円。そこで、フリマアプリ等を駆使すると、50万円で売却することができた。「売れるような物はないだろうと。何でもいいから、タダで持って帰ってくれと呼びかけると、たくさんの方が来てくれた」。

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 さらに、最も大変だと話すのが親族間の問題で、高殿氏いわく「究極の親族間ババ抜き」。「誰かがやらないといけないが、ひたすらみんなババを避けて、見なかったフリや聞かなかったフリをする。そういうことが本当に何年も行われて、うちみたいに15年経ってしまう」。

 また、父と叔父に話をすることも難しかったという。「団塊世代で、子の言うことをまともに聞かない。『家を継ぐ』と言われてきた長男の叔父は、実家を片付ける心理的ハードルも高かった。問題を一つずつ解きほぐして説得して、一旦は2人とも理解してくれるが、家に持ち帰ると『こんな安く売る家じゃない』となる。日本中には同じ感じの人は多いはずだ」と語った。

■「不動産が絡むと隣地の方とのトラブルまで引き継がれる」

 「再建築不可物件」は、家が建っていても、解体して更地にし新たな家を建てられない土地のことを指す。高殿氏の著書も監修した不動産コンサルタントの高橋正典氏は、「事前に調べてなく、伝えられて初めて知ることが多い。建築基準法では『最低2メートルの道路に面する』と定められている。高殿氏の場合は『私道』だからダメなのではなく、『道路認定されていない私道のケース。こうした情報は区役所や市役所で教えてくれる」と説明する。

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 また、「不動産が絡むと隣地の方のトラブルまで引き継がれる。親の代の恨みつらみで、『お前のおやじにうちは殺された』なんて言われるケースもある。人間、年を取っていくと、我が強くなりトラブルが増える」といった事例もあるという。

 株式会社すむたすによる「実家の処分にあたり苦労したこと」の調査によると、「部屋の片付け(ものの整理・処分)」46.8%、「税金や登記簿等、法的な手続き」28.4%に続いて、「不動産会社の選定」26.6%が3位に入った。

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 高橋氏は「業者の多くは、不動産を動かすことしか考えていない」と話す。「背景にある人間関係や思いまで、くめる会社は少ない。なので、不動産が動かずお金にならなければ、業者が撤退することになる。業者の実績や歴史を調べてみることもおすすめする」。

■理想は「親が元気な時に」 相続などのルールも激変

 すむたす調査では、「実家の処分について、関係者間で話し始めたのはいつから」との質問に、「親の死後」が56%の過半数だった。「親の生前」は27.5%、「話し合っていない」が16.5%となっている。

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 理想的なタイミングとして、高橋氏は「親が元気な時に」と指摘。「『親にどうやって話したらいいか』という相談が多いが、死を想定したデリケートな話なので時間がかかる。売れる財産か調べるなど、子どもだけでもできることから、先に進めておくといい」「親に話す時には、1人で行くこと。例えば、きょうだいの中で一番話しやすい子が行く。何人かで行くと、タイミングがズレるなどして話がぼやけてしまう」と促す。

 相続や登記・空き家のルールも激変している。2024年に入って、1月に「生前贈与制度」が変更され、4月に「相続登記の申請義務化」がスタートした。マンションの相続税評価額の新しい算定ルールも導入予定だ。

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 これらについて高橋氏は、「相続後に登記しなければ、10万円以下の過料が科される。4月以前のものも、遡って行わないといけない」「生前贈与は年110万円までは非課税だが、亡くなる3年前から7年に対象が延びて使いづらくなった」と説明。その上で、「国としては、資産を相続時ではなく、現役時代のうちに動かすほうにシフトさせたいようだ。生前贈与の税制を少し厳しくして、『相続時精算課税』に移行させることでバランスをとっている」とした。(『ABEMA Prime』より)

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