10年ほど前から流行した、生活に最低限のモノだけで暮らすライフスタイル「ミニマリスト」。これに続き、行動を単純化することで、複雑に物事を考える煩わしさから解放されるという「シンプリスト」という、新たなスタイルが生まれている。シンプリストは、持ち物を減らすのではなく、日々暮らす上で選択をしたり、判断に迫られたりする機会を減らすことで、よりストレスフリーな生き方を目指す。『ABEMA Prime』ではミニマリスト、シンプリストの当事者を招き、それぞれのライフスタイルの利点を考えた。
■ミニマリストは2010年代から流行
モノを持たない「ミニマリスト」は2010年ごろから流行し始め、2015年には「新語・流行語大賞」に候補にノミネート。YouTuberとしてミニマリストに関する情報を発信しているしぶさんの家には冷蔵庫、テレビ、レンジ、シャンプーなど、一般的な家庭であれば必需品とも思えるものがない。一方でドラム式洗濯機、寝袋、ロボット掃除機、パソコン、ゲーム機、プロジェクター付きライトなどはある。引っ越しをしようと思えば、わずか13分で準備が完了するという身軽さだ。生活が効率化され、余計な所有コストもかからず、本当に好きなものは豪華なものでも買う“一点豪華主義”だ。
しぶさんは「シャンプーがないのは湯シャン(湯だけで髪を洗う)だから。冷蔵庫があると買い過ぎるし、賞味期限など管理の手間が出る。引っ越しをして新しい場所に行くのも楽しい」と、無理をしている様子はない。きっかけはフリーター時代に一人暮らしをしたいという願望から。「当時の収入が月10万円くらいしかなくて、一人暮らしができなかった。当時は節約ということでモノを減らしていたが、そういう生活をしたらどんどんお金が貯まったので、一点豪華主義というお金の使い方ができるようになった」。iPhoneも新型が出れば毎回買い替えるが、持っていた端末は売ることを前提にしており「たとえば1年間くらい使っても(買った時の)7割ぐらいでは売れる」と、無駄なく最新機種を使い、楽しんでいる。
ミニマリストはあくまで必要最低限のモノは所有するため、現在独身のしぶさんも、仮にパートナーができれば、相手に合わせて増やすこともあるという。「ライフステージに合わせて、モノを増やしたり減らしたりするのが大事。家族ができたら必要なものは増やす」と、柔軟な思考で生きている。
■コトを減らした「シンプリスト」
ミニマリストに近くも、そこまでモノを減らすことにこだわらない、コトを減らすことに重きが置かれているのがシンプリストだ。機械設計士のやまださんも、もともとはミニマリスト志向だった。「機械設計はシンプルな考え方がすごく大事。2個あるものを1個にできないかなど、お客様が本当に達成したいことをどう達成するかをすごく考える」。この考え方が私生活にも波及し、一時はミニマリストを目指してどんどんと身の回りのモノを減らしていったが家族との生活、仲間との交友関係を保つ上で、無理が生じた。「例えば友だちから急にフットサルやスノーボードに誘われても、自分が持っていないから行けないのは悲しい。いちいち買うのもレンタルもお金がかかる。子どもも4人いるので、完璧主義をやめて『60点』主義のシンプリストを目指した」と方針転換した。
やまださんは、モノの数自体はあるものの、コトは減らしている。寝具はベッド、ふとん、枕など別々に分かれるものは避け、家の中でも寝袋を使うが快眠だという。また、やまださんの洋服は上下とも黒に統一。昼食は365日、ゆで卵とバナナのみ。食器は皿にもコップにもなる「シェラカップ」を用いるなど、やまださんにとっては不要な選択肢をどんどんと削っていった。「心も体も健康です。食にもこだわっていて、添加物を取らないようにしたら、20年間通っていた耳鼻科にも行かなくなった。小麦、乳製品、油の3つは食べないが、たまにラーメンは食べる。完璧は目指していない。一番大事なのは、ストレスを少なくすること」と、ストイックに断つようなことはせず、あくまでストレスを減らすための行動だと語った。
■ストレスを減らす生活「行き着くところは一緒」
ミニマリストはモノ、シンプリストはコトを減らす。どちらも余計なストレスを減らすための生活という意味では共通点があり、部分的に重なることも多い。しぶさんは、やまださんと同じく、服は黒で統一。飽きないかという質問には「服以外のところ、たとえば食べること、旅行などで欲求が満たせている」という。またミニマリストが増えた背景には「テクノロジーの発達がある。スマホのおかげで、音楽プレーヤーにも、財布にもなる。地震が多いこともあり、防犯対策としてモノを減らし始めている人も多い」とした。また最近では「『ミニマリストに憧れます』と、僕のイベントに来てくれる人もいるが、ミニマリストではなくシンプリスト寄りの人も多い」と述べた。
また、やまださんも、しぶさんの生き方については「めちゃくちゃ共感する」といい、「考えは似ていると思っている。ミニマリストはモノを減らした結果でコトも減っていくが、シンプリストはコトを減らした結果が、モノも減っていく。行き着くところは一緒な気がする」と、大きな方向性としては同じだと語っていた。
(『ABEMA Prime』より)
■Pick Up
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側