裏社会のかつてのしきたりだった「指詰め」だが、今では少なくなってきているという。しかし最近、その「指詰め」の治療をめぐって暴力団幹部らが逮捕されるという珍しい事件が発生した。
「切断された指の治療」で詐欺の疑いをもたれているのは暴力団幹部ら3人だ。岐阜県警によると、指定暴力団の幹部ら3人はみずからの意思で切断した指の治療に国民健康保険を使用。治療費のうち、自己負担分を除く、合わせておよそ4万5000円の支払いを不正に免れたとして再逮捕された。原則として故意に負傷した場合、国民健康保険は適当されない。
県警によれば、いわゆる「指詰め行為」でこのようなケースは極めて珍しいという。みずから指を詰めるという、裏社会で“しきたり”とされる行為、いま実態はどうなのか。
元暴力団員で、現在は更生し一般企業で働いている堀和雄さんは「頻度はあまり高くない。指を外すわけだから。痛いし。それなりの重大な事件がないとやらない」「己の身を削ってつけるけじめなので、これ以上何かを求められれば、それ以上は無い。往々にして今の時代ではあまりやらない」と語る。
指を詰める理由については「組織間であれば、相手の組織に対してけじめをつけて持っていく。あとは借金してお金を作れないから、その代わりに指を持っていくっていう不届き者もいる」と説明。
自身も指詰めをしており、堀さんは「私の場合は30数年前、兄貴分とちょっとした行き違いがあり、兄貴分に対してけじめをつけて持っていった」と明かし「私の場合は大工さんが使う“ノミ”を使った。上からたたいてもらって落とした。その時はしびれるくらいでそんなに痛くはない。治療する際の麻酔の注射の方が痛かったかな」と振り返った。
指詰め行為をしたあとの行動については「(落とした)指もそのままで、親分や兄貴分のところへ行ったり、相手の組織の方のところへ血を流しながら謝りに行く。医者に行かないで。それで『わかりました』と言われてから医者に行く」と説明した。
「私は20歳のときと29歳のとき」と語るのは元暴力団組員のKさんだ。「ノミで。包丁で落とす人もいた。包丁でちまちまやるのが面倒くさい。ノミは新しいものを買ってきて、一発でボンッていけるように。一撃で終わらせて、すぐ兄貴分、親分と話をしなくちゃならない」と発言。Kさんは2度指を詰めたことで、左手の小指と薬指を失っている。
指を失ったことについてKさんは「やっぱり不便。力はもちろん入りにくい、右と左全然違う。工具類などの道具を持つとき、指がないとちょっと不便」と語り、落とした指については「ホルマリン漬けにして指塚で供養する」と明かした。
かつて自身がけじめとして指を詰めたことについて、掘さんは「後悔というより、そこまでする必要性がなかった。若気の至りで『面倒くさいからこれでいいだろう』ということで指を外した」と、不要な行為だったとして、Kさんは「後悔がないって言ったらウソ。後悔はある。(本来)あるものが無いのだから」と胸中を語った。
「指が無い」ということについて掘さんは「一般社会で堅気の人たちと会う場合、仕事で打ち合わせに行く場合に相当気をつかう。やはり指があるのと無いのでは全く違う。違うというのは、ヤクザなのか?堅気なのか?やっぱりヤクザに見える。今は堅気ですけど。『そういうくくり』で見られるのがちょっとまずい」と吐露。
Kさんは「仕事現場に新規で入るとき、なるべく指を見られないようにする」という。「やっぱ気になるじゃないですか『なんでこの人指ないの?』って。こういうのを直接聞ける人は少ないと思う。逆に迷惑をかけちゃうかなと思って」と、相手に不要な遠慮をさせてしまうことを気にかけていた。
(『ABEMA的ニュースショー』より)
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