「ラリー・ジャパン」前のラストラウンドで、ヒョンデの牙城を崩すべく奮闘するトヨタ。今季はスポットで参戦するWRC通算8回王者が、極上のテクニックを見せつけた。
ドイツ、チェコ、オーストリアの3カ国にまたがる形で開催される世界ラリー選手権(WRC)第12戦「セントラル・ヨーロピアン・ラリー」。マニュファクチャラー選手権ポイントで首位を争うトヨタ勢とヒョンデ勢は、競技初日デイ1から激しいバトルを繰り広げた。
トヨタチームは、エルフィン・エバンス、セバスチャン・オジエ、勝田貴元、サミ・パヤリの4台体勢で臨み、初日デイ1は元王者の大ベテラン、オジエがトップタイムを獲得。デイ2は惜しくもヒョンデのティエリー・ヌービルにトップを奪われたものの、オジエは6.4秒遅れの2位につけていた。
そして迎えた10月19日のデイ3、午前中からの霧や小雨の影響を受けて路面は濡れているところもあり、さらにコースは周囲に草原が広がる幅の狭い農道コースということで、ターマック(舗装路)ながらドライバーにとっては難しいトリッキーなシチュエーション。
しかし、午後のSS(スペシャル・ステージ)13でベストな走りを見せつけたのは、やはり“生ける伝説”オジエだった。ヒョンデのタナックが暫定トップのタイムを出した後に出走したオジエは、スタートから各コーナーをプッシュしまくり、各チェックポイントでタイムを縮めていく。
少しでも道をはみ出せば草で滑ってスピンしかねない状況ながら、繊細なマシンコントロールでコース幅をギリギリまで使って極限までアプローチ。レポーターも興奮気味に「先ほど目の前を通っていきましたが、イン側のポールスレスレを攻めていきました。(他のマシンとは)迫力が違いました!」と語るほどの鬼気迫る走りだ。
実況も思わず「オジエが素晴らしい!」と叫び、解説も「……速い! コースの際、ギリッギリまで攻めてました」と絶賛のコメント。最終的にはトップタイムを3秒縮めてフィニッシュし、SS13ベストタイムを記録した。このオジエ渾身の走りは、「ラリー・ジャパン」に期待を抱かせるに十分なものだった。
(ABEMA『WRC 世界ラリー選手権 2024』/(C)WRC)