世界の課題とされている「食品ロス」。日本では農林水産省が出した推計値で2022年度に約472万トンが無駄になり、全国民が毎日おにぎり約1個を捨てている計算だという。世界でも約25億トン(2021年7月)、生産された食品の約40%が廃棄されているという調査もある。重量だとピンと来ない人も多いが、金額にして日本国内で年間4兆円。世界では1兆~2.6兆ドル(150兆~390兆円)にもなる。
日本の食品ロスだけを見れば、2000年度に比べ、2022年度はおよそ半分にまで減らすことに成功しているが、それでもまだ課題は多い。中でも、海外では認められている飲食店での「食べ残しの持ち帰り」には、食中毒への警戒心が強い店も少なくない。『ABEMA Prime』では食品ロスジャーナリストの井出留美氏を招き、議論した。
■日本の食品ロス 家庭と事業は「50%対50%」
年間約472万トン、金額にして4兆円を、日本では無駄に捨てていることになる。イメージとして外食産業での食べ残しや作ったものの売れ残りが多いように感じられるが、井出氏は「家庭系と事業系と大きく2つに分けるが、今は50%対50%」と、家庭で出している食品ロスも十分な多さだと解説した。また事業系の中では「一番多いのがメーカー。これはスーパーやコンビニ、百貨店に対して欠品してはいけないから。そういうルールが課せられているからメーカーのロスが一番多く、次が外食」と述べた。
外食での食品ロス削減において、一般消費者が取り組めるものが、食べ残しをどう減らすかだ。井手氏は「先日、ニューヨークやサンフランシスコに行ったが、どこでも量が多いので食べ残る。持ち帰りたいと言えば『何でもOK』と箱が出てくる。持ち帰ったものを(翌日の)朝食に食べられるのは非常にいい」と体験を振り返った。もともとアメリカでは、食べ残したものを犬に食べさせるために持ち帰る「ドギーバッグ」をきっかけに、現在でも「持ち帰り」が当たり前になっている。食品ロスへの意識が高い地域では、ポーションが少なめに出てくることもあるが、それでも日本人からすれば食べ切れない量が出てくることもしばしば。それでも遠慮なく「ドギーバッグ」で持ち帰りできるのであれば、気兼ねなく注文できる。
■日米で大きく異なる食べ残しの「持ち帰り」
無駄を出さず質素・倹約を重んじる印象がある日本だが、この『持ち帰り』については消極的な店も多い。カンニング・竹山隆範は、焼肉店での体験を語った。「焼肉屋で焼く前の肉が余ったから持ち帰りたいと言ったらダメだった。その延長で焼いて持っていくのはと聞いたが、それでもダメ。理由を聞いたら『食中毒が起きたらダメだから』だった」と、納得がいかなかった。店内で提供したものを、客が自宅に持ち帰った際、何かしらのトラブルが起きて店側の責任を問われることを避けた。
一方で「訴訟大国」とも呼ばれるアメリカでは、店の責任を追及する話にはならないという。文化通訳でシンガソングライターのネルソン・バビンコイ氏は「家に持ち帰って腐ったものを食べたとして、それを客が訴えるとしたら、店が逆に客を訴える」自己責任だと文化の違いを説明した。また日本においては「刺身などの生で食べるものもあるから、余計にハードルは高いのでは」という、日本特有の生食文化の影響には理解を示した。
日本でも「食べ残しの持ち帰り」については認める通知が出されている。井手氏は「国としては食べ残しの持ち帰りを禁止していないし、2017年5月に4つの省庁が、どういうことに気をつけて持ち帰ってという通知も出している。もし持ち帰るなら、消費者の自己責任ということも言っている。ただ、実際に店に聞いたら、やっぱり食中毒が怖いとか、保健所がなんとかと言われるので今、厚生労働省がガイドラインを制作して健闘している途中。よほど義務化しないと結局断られる」と、省庁の対応も含め現状を説明した。
国内ではまだハードルが高い「持ち帰り」。今できる食べ残しを減らすための仕掛けとして、井出氏は見本を置いて大きさや量をわかりやすく伝えること、食べきった写真で次回使えるサービス券の導入、食べ放題やビュッフェなどであれば「何度でも取りに来てください」と一度に多く取りすぎないことを勧めるなどの対応策があると紹介していた。
(『ABEMA Prime』より)
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