日本銀行「資金循環統計」によると、日本で個人が持つ金融資産の合計は2212兆円と、過去最高を記録(2024年6月末 速報)。1人当たりでは約1780万円となる。
一方で、内閣府「令和6年度 年次経済財政報告」によれば、高齢者の遺産に対する考え方は「使い切りたい」が34%、「老後の世話等に関わらず残したい」が31%、「老後の世話等を条件に残したい」が15%。半分近くは子どもなどに残したいと考えているが、一切残す気がないという人も多い。
子どもにお金を残すべきなのか・残さないほうがいいのか。22日の『ABEMA Prime』で、「残したくない」という当事者の話とともに考えた。
■「成金らしく死ぬまでに全財産を使い切りたい」
「子どもには基本的に相続する予定がない」と話すのは、マサニーさん。肩書は、資産46億円ニート。元は普通のサラリーマンだったが、投資に成功して巨額の資産を形成した。しかし、2人の子どもには遺産を一切残す気がないという。「僕は成金なので、成金らしく死ぬまでに全財産を使い切ることを目標に掲げている」。
計算では毎月2000万円ペースで使う必要があるそうで、生活費を少しでも増やす方法をSNSで募集するなど、常人には考えられないような努力(?)をしている。「今度、南極旅行へ行くのに700~800万円かけたりとか。世界中を旅する費用にたくさん使うようにしている。たぶん使い切れないので、余った金額は全額寄付する予定だ」。
なぜそこまでして子どもに残したくないのか。「私自身、幼少期は児童養護施設で育った。それがハングリー精神につながって、『大人になったら頑張ろう』『稼ごう』という気持ちになれた。僕のような成金タイプは、次の2代目3代目で破滅の道に向かったという事例もある」と明かした。
■幼少期に遺産トラブル「“お金は気持ち悪いもの”だと思った」
自分の子には遺産相続しない考えを持つ、個人事業主の高橋さん。看護師の妻、5歳と2歳の子どもの4人家族で、地方部に土地と持ち家を保有している。遺産を残したくない背景には、幼少期に家族がトラブルに巻き込まれた経験があるという。
「祖父が市議会議員でそこそこ裕福。母親はそのお金をあてにしていたのだろう、お金使いが荒かった。祖父の葬式の日、母が伯父から殴られていたのだが、後で聞いたらお金の無心をしていて、それが土地を売らないといけない額だと。子どもながら“お金は気持ち悪いもの”だと思った」
夜逃げにより、10代半ばで一家離散状態に。高橋さんは高校進学を断念し、働いて家賃を払った。「今の言葉でいう“無敵の人”になってフラフラしていた。今は妻のおかげで家も建てられたが、これを子どもに継ぐかといったら継がない、という考えになった」。
ただ、子どもにお金を使わないということではないそうで、「親がレールを敷くよりは、なにか苦労や失敗をしたほうがいいかなと。学校は良いところに行ってほしい。そこから先は自分で人の痛みがわかるようになれば、くらいに思っている」「お金が必要だという話で、私に余裕があれば、20歳までなら渡す。それ以降は絶対に渡さない」との考えを明かした。
アクティビスト個人投資家の田端信太郎氏は「僕もなるべく使い切りたい」との立場を示した上で、「亡くなってからの老老相続だと、お金があまり生きたかたちにならない。同じ1000万円でも、60歳と25歳でもらうのとでは価値が変わるので、子どもが有効に使えるうちに渡したほうがいいと思う」との考えを述べる。
遺産に関して、遺言書の内容と関係なく、一部の法定相続人は最低限の相続が保証される「遺留分」という権利がある(相続人の内訳・人数などによって割合は変動)。例えば、法定相続人として子ども2人、ともに配偶者なしの場合、遺言書に「遺産はすべて市役所に寄付」などと書かれていても、子どもたちが請求すれば4分の1ずつは受け取ることができる。
これに高橋さんは「塵1つ残らないようにできるだけ使っていきたい。残ったとしても妻に渡すだけだ」と話すが、それも子どもへの愛情ゆえ。「子どものことが私のすべて。子どもの人生は子どものもの」と述べた。(『ABEMA Prime』より)
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