女性の社会進出や、男女平等が進む中、男性の間に「育休明け気まずい問題」が浮上している。明治安田生命の調査では、育休から復帰した男性の41.5%が「気まずい」と感じていると判明し、取得しやすくするために「人員の補充」や「同僚への応援手当」を希望する男性が多いとわかった。
男性が理想通り育休取得できなかった理由で、最も多かったのは「金銭面」の事情(29.7%)だ。政府の育児休業給付金は、給与の約3分の2で、どれだけ稼いでも上限月額31万円程度となっている。2023年度の男性取得率は、改善してもなお、30.1%にとどまる。『ABEMA Prime』では、いかに男性育休の取りづらさを解消するか、専門家と考えた。
■男性の育休「企業側も男性が長期間抜けることを想定も体験もしていない」
男性育休に関する厚生労働省の検討委員を務める、NPO法人ファザーリング・ジャパン理事の徳倉康之氏は、「男女にかかわらず、職場を長期間あける抵抗感がある」と指摘する。「育休を取られる企業側も、男性が長期間抜けることを想定も体験もしたことがなく、扱い方がわからない」。またブランクが空くことにより、「その間に社内で決まったことを共有できないまま、どう仕事を振っていいかわからない、上司の問題もある」という。
男性育休から復帰したササキさんは、職場での居場所に悩んでいる。「扱いが他人行儀になった。取得前は、自分が詳しい分野について、上司からアドバイスを求められることもあったが、復帰後はあからさまになくなった。業者とのあいさつも、私は呼ばれずに、別の社員が呼ばれるようになった」そうだ。
徳倉氏は「今は育児の話だが、数十年すれば、親の介護休暇が話題になる」と予想する。「出産や育児は、予定日から保育園・小学校入学までわかりやすいが、介護はスタートも終わりもわからない。組織側が、家庭の事情で休む従業員を、どうマネジメントしていくのか。男性育休を“トレーニング”として考えないと、大介護時代に対応できなくなる」。
■育休から復帰しやすい環境づくりとは
一方で、育休から復帰しやすい企業もある。「月次でレポートを送ったり、同僚との面談を行ったりして、取引先や人事異動の情報を共有する。接点があるだけで復帰はしやすくなる」。また女性育休では、「復帰前に赤ちゃんを連れて社内ツアーをする」ケースもあるという。「顔と名前が一致していると、『あの子が熱出した』と休みやすい雰囲気が作れる。ケアの仕方で、復帰後の離職率も変わる」。
自身の育休取得経験を「社会と断絶したぐらい、一切連絡が来なくなる」と振り返りつつ、「時間が空いたときに、レポートに軽く目を通すだけで、話しについていける」と、情報共有のメリットを語る。
社会学者で城西大学助教の塚越健司氏は、「知り合いの子どもはうるさくない」現象と似ていると表現する。「江戸時代の長屋は、壁が薄くても許せた。人間関係を作って、『子どもはいろんな場所にいる』と知ることで、もっと雰囲気作りは進む。これから介護やうつで休職する人も増えていく。日本は人材不足で、やめてもらったら困る。企業側からの雰囲気作りが必要だ」と語った。
■育休消化へ組織が一番やらないといけないこと「有給消化の促進」
徳倉氏は、組織が育休取得を進める上では、まず「有給消化の促進」が必要だと説明する。「働く人全員に権利がある有給休暇を、全体が取れるような企業風土にならなければ、育休や介護休暇にはたどり着かない」。
その背景には「子育てが終わっている」「結婚していない」などの対立構造を招いてしまうなど、「気持ちに差が出てくる」ことがある。「まずは有休をしっかり取れるような組織を作る。その上で、介護や病気療養による長期休暇に対応できる組織を作っていくべきだ」。
男性の育休取得を阻むハードルとして、金銭面が挙げられていたが、徳倉氏によると「日本の給付額は、世界的に見ても上位」なのだという。しかし、「日本は子育てにお金がかかりすぎる」現状もある。「欧米の先進国では、個人所得ではなく、世帯の可処分所得を上げる政策を行っている。教育費や医療費を抑えて、子どもを産みたい人が増える社会にしつつ、セットで高水準の給付を行う必要がある」と提案する。
金銭面では「社会全体で負担するものと、個人で負担するものを明確にわける」必要性を語る。「組織も個人も、金銭が免除になる制度があり、合算すると7割ぐらいの給与水準に落ち着く試算もある」。加えて、「組織によっては『保育園の保育料は、入園前年の収入で決まる。このくらい休んだ方がいい』とアドバイスしている。制度を熟知することが大事だ」と語る。
とくに重要なのは、休んでいる間も「チームの一員」として認識されているか否かだという。「収入面で言えば、子育ては期間限定だ。手がかかるのは、小学生ぐらいまでで、そこまでは収入やスキルのレバレッジがある程度効く。自分のライフステージを考える期間としても、育休は大事なポイントだ」。
(『ABEMA Prime』より)
■Pick Up
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側