受験や就職などで、将来の夢や目標を打ち明けると、「そんなの無理だよ」「失敗するからやめとけ」「現実を見た方がいい」と言って、スキル不足やリスクなどを並べ立て、とにかく夢を壊そう、諦めさせようとする人がいる。そんな存在を“ドリームキラー”と呼ぶ。
ドリームキラーは、友人や同僚、家族や恋人にも潜んでいるという。街でも「親に自衛隊員になりたいと言ったら無理と言われた」「アイドルと保育士を両立しているが、『あなたにはできない』と言われた」といった証言が得られた。
中には親身にアドバイスした結果、ドリームキラーになっている人もいる。『ABEMA Prime』では、他人の夢を壊したがる人と、どう向き合うのが正しいのか、当事者や専門家と考えた。
■ドリームキラーとは?
公認心理師の橋本翔太氏は、ドリームキラーについて、「心理学や医学用語ではなく、具体的な定義はないが、自己実現や夢を邪魔してくる人を指す」と説明する。「身近な人がドリームキラー化したと悩む相談者が多い。副業を始めたら、『いまからやっても間に合わない』『昔は時間作ってくれたのに』などとチクチク言われ、人間関係と夢のバランスに悩む」。
長年の友人やパートナー、家族がなることもあり、「無視できない相手がドリームキラー化すると、本人はすごく悩む」という。見極めるポイントは「罪悪感を感じさせるか」で、「相手が『変わって寂しくなった』『がっかりだ』など言って、夢をかなえるのが申し訳ないと感じさせる相手は、ドリームキラーの可能性がある」と分析した。
ビジネス系YouTuberの株本祐己氏は、「夢よりも現実を追い求めるべきだ」との考えを持つ。「10代や20代ならば、可能性は無限大だ。ただ一定のラインを超えると、夢がかなわなかった時の生活を解像度高く説明した方が、逆に親切ではないか。ほとんどの人は1%の確率だけを考えていて、時間の投資に対して、リスクを計算できていない」と指摘する。
株本氏は「夢がかなう可能性が3%だとして、『0%だよ』と言うのがドリームキラーだ。『3%の確率を外したときは、こうなる』と教えるのは、ドリームキラーではない」と定義づける。「基本的にビジネスの投資は、リスクとリターンの期待値計算だ。起業したての人に、期待値を教えれば感謝される。先に経験している人が教えるのが自然な流れだ」。
コラムニストの河崎環氏は「『変な夢を持たない方がいい』と言う同世代が昔から大嫌いだった」と振り返る。「子どもであれば、自発的な夢には『1回やれる所までやってみよう』と言える。もし失敗しても、本人が痛みから学べる。大人もやはり学ばなければダメで、『1回、思う所までやったら』と言うだろう」。
■ドリームキラーの言葉で気付けること
夢を追う人が増える背景について、橋本氏は「“生存者バイアス”によって、成功者ばかりが目に付くが、裏側には失敗した人がたくさんいる」と解説する。「冷静で現実的なアドバイスが、客観的な視点を持つ上で大切だ。ドリームキラーのアドバイスを、いったん受け入れることで、自分を振り返るチャンスにはなる」。
夢をめぐっては「ドリームハラスメント」なる言葉もある。「夢を持て」「必要だ」など、周りの人がプレッシャーをかけたりすることを指し、学校作文や就活の際などで夢や目標を問うなど、頑張らせたい大人が“ツール”として活用するケースがある。また、苦労の末に夢がかなったことを美化する物語や、青春ソングの影響も要因になっている。
河崎氏は「学びの場で、大人が子どもに“将来の夢”を言わせている」現状を語る。「子どもが『YouTuberになりたい』と言うと、大人が『せっかく勉強して学校に行くなら…』と夢を修正して、最終的に『弁護士になりたい』と言わせる」と例を挙げた。
ではドリームキラーに対して、どのように接すればいいのか。橋本氏は「ドリームキラーが現れても、自分の決意と覚悟があればブレない。そこでブレてしまうのは、自分の中に迷いがあるから。自分を振り返る良い機会になると捉えればいい」。
(『ABEMA Prime』より)
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