政府関係者によると、物価高の影響を賃上げでカバーできない分を支給するとして、1世帯当たり3万円、さらに子育て世帯には子ども1人当たり2万円を上乗せする方向で検討しているという。
過去にも何度か行われてきた住民税非課税世帯への給付だが、SNSでは「どの生活層が一番きついって、住民税非課税世帯ではなくて、現に子育てをしている中間層世帯でしょ」「非課税世帯にだけ『ばら撒き』をするのは不公平感が否めません」との声が。
そして、またばら撒きかと「住民税非課税」がトレンド入りしている。
実際にこの政策は弱者救済となっているのか、それともバラマキなのか? 財政や社会保障に詳しい関東学院大学の島澤諭教授に話を聞いた。
真面目に働いて納税している現役世代の中間層が損をする
「住民税非課税世帯がそのまま低所得者世帯と見なされるのは問題がある。高齢者世帯には金融資産を持つ年金生活者も含まれており、本来支給する必要のない世帯にまで給付金が支給されてしまっている可能性が高い」(島澤教授、以下同)
島澤教授によると、政府の統計をもとに試算すると、住民税非課税世帯の中で65歳以上の高齢者世帯は74.7%と大部分を占める。こうした高齢者世帯の中には金融資産を持っている年金生活者という“見せかけの低所得者”も含まれている。
「厳しい言い方かもしれないが、物価対策や低所得者対策の名を借りた高齢者へのバラマキとも言える。資産があり、年金という安定的な収入源を持つ高齢層が手厚い恩恵を受ける一方で、真面目に働いて納税している現役世代の中間層が損をする政策になっており、不公平だ」
今回検討されている総給付額はおよそ5000億円。多額の税金が投入される形だが、これでは根本的な解決にはならない。
島澤教授は解決策として「物価が安定的に下がらなければずっと給付が行われる。本来、物価対策は物価の引き下げとして行われるべきだ。物価引き下げのためには円安を止める必要があり、そのためには日本銀行による利上げが効果的だ」と持論を述べた。
終わりの見えない経済不安。島澤教授は政府に対し、国民を見た政策を行ってほしいと懇願する。
「しっかり実態を見て政策を打ってほしい。数字上の低所得世帯ではなく、本当に困っている世帯、困っている人がどういう人たちかを見極め、そこにしっかり届けられる政策を考えてほしい」
「生活に困窮している状態」の定義は?
金銭面で深刻な状況に陥っている人を救うにはどうすればいいのか?
山田進太郎D&I財団 COOの石倉秀明氏は解決策として「情報を集約するしかない」と述べた。
「国のシステムに限界が来ていて『生活に困窮している状態』の定義もおそらく定まっておらず、『生活困窮者が誰なのか』も把握できていないようだ。解決には情報集約しかない。例えば我々の納税記録は国税庁や税務署が把握しており、収入と支出は銀行口座などを見ればわかる。このように、実は我々は既に情報を預けているのだから、情報を集約して、リアルタイムに把握することで、例えば『住民税を払っているが生活に困ってるシングルマザー』や『年収はあるが会社経営で失敗して借金がある人』を見つけられる。荒いカテゴライズではなく、一人ひとりが困ってる時にすぐヘルプできる状態にするためにどこまで真剣にやるかだ」
(『ABEMAヒルズ』より)
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