将棋の第37期竜王戦七番勝負第5局が11月27・28の両日、和歌山市の「和歌山城ホール」で指され、藤井聡太竜王(名人、王位、王座、棋王、王将、棋聖、22)が挑戦者の佐々木勇気八段(30)に91手で勝利した。この結果、シリーズ成績は藤井竜王の3勝2敗。防衛4連覇へ“王手”をかけた。注目の第6局は12月11・12日に鹿児島県指宿市の「指宿白水館」で行われる。
藤井竜王が、天王山の一戦で貫録を示した。互いに2勝2敗で迎えた注目の第5局・和歌山対局。藤井竜王の先手で始まった本局は、後手の佐々木八段が角筋を止めて雁木模様の出だしとなった。藤井竜王から仕掛けていったが、呼応するように佐々木八段も攻勢へ。積極的に強く踏み込んだが、後手は居玉とあり神経を使う展開となった。
佐々木八段の封じ手開封から再開された対局2日目は、じっくりとした進行が見込まれていたものの昼食休憩を前に激流へ。一気に終盤戦へともつれ込んだ。少しずつ無理を強いられる展開となった佐々木八段は、苦戦を意識しつつも敵陣へと前進。激しい斬り合いへ発展するかと思われたが、藤井竜王は挑戦者へ揺さぶりをかける歩の一手を投じた。
終盤までしっかりと持ち時間を残していた佐々木八段だったが、藤井竜王の高難度の投げかけに時間を大量消費。終始緩みのない指し回しで挑戦者を圧倒し、藤井竜王が待望の3勝目を飾った。
大勝負を制した藤井竜王は、「1日目は予想していない形で戦いが起こり、局面の判断が難しかった。途中、もう少し積極的に指すべきだったかとも思うが、受けに回る展開になり、最後は飛車がさばけたあたりで指しやすくなったかなと思った」と一局を総括。「2勝2敗で迎えた第5局ということで、緊張感もあったがしっかり集中して指すことができた」とコメントした。
一方、佐々木八段は「封じ手のあたりで形勢を悪くしてしまった。どこで悪くしたかと一晩考えたが、自分の力では分からずそれが今の実力かなと思う。勝負所がもっと早いところだったと思うので、もう少し時間を投じて考えるべきだったと思う。本局は藤井竜王にうまく指されててしまい、完敗だった。どこが敗着か今はわからないが、そういうところを改善して次戦に向かいたい」と語った。
この結果、シリーズは藤井竜王の3勝2敗に。防衛4連覇を目指す絶対王者が先にタイトルに近づく結果となった。前局は佐々木八段の渾身の研究に完敗を喫した藤井竜王とだったが、本局では完勝返しの“藤井曲線”を描き切っての決着となった。
しかし、これまで2度の先手番で追いついてきたのが佐々木八段だ。手厚い研究を引っ提げ、三度追いついて見せるのかが最大の見どころになりそうだ。決着か、フルセットか。藤井竜王は、次戦へ向けて「第6局は後手番。ここまでの2、4局は作戦負けから押し切られているので、まずは序盤でしっかり立ち回れるように準備をしていきたい」。大注目を集めることになる第6局は、12月11・12日に鹿児島県指宿市の「指宿白水館」で予定されている。
(ABEMA/将棋チャンネルより)