直近では11月にアメリカの大統領選挙、日本では10月に衆議院選挙、実はフランスやロシア、インド、タイでも選挙があるなど2024年は選挙イヤーだった。
【映像】オーストラリアの選挙で使われている“順位付け方式”シート
「誰が選ばれるか」という点に注目される選挙だが、民意をくみとる選挙の仕組みについては意外と知られていない。朝日新聞編集委員・秋山訓子氏がアメリカ、オーストラリアを取材し、各国の選挙の仕組みについて紹介した。
■アメリカ・オレゴン州とミネソタ州での投票率アップを促す仕組み
ニューヨーク大学法学部ブレナン司法センターによると、アメリカでは2020年から2024年までに少なくとも30州で78の投票制限法が制定されたという。その背景に、秋山氏は「トランプ氏が2020年の選挙で敗北した際に『選挙が盗まれた』と主張した。その後、主に共和党が強い州をはじめ、各州でどんどん立法されている」と説明する。
投票制限法が広がっている中、アメリカ北西部のオレゴン州は、全米でもいち早く郵便投票を導入し、2年前には全州の中で投票率が最高を記録するほど投票に前向きな街だ。多くの移民が選挙で投票できるように市とNPOが協力し説明会を開催し、10カ国語以上のチラシを用意するなどの工夫をしている。
中西部のミネソタ州も投票を後押しする州のひとつ。この街でドライブスルー投票導入や、運転免許書で投票登録を可能にした、選挙制度の責任者・スティーブ・サイモン州務長官は、16歳・17歳から投票の事前登録をできるようにしたという。
「若い人たちが投票する前から投票者としての自覚を持つきっかけになる。これは非常に重要なことで18歳・19歳・20歳で初めて投票する若者はその後も投票を生涯の習慣として続ける可能性が高い。ミネソタ州でこれまで投票権を持たなかった5万5000人が投票できるようになった」(スティーブ・サイモン州務長官)
こうした取り組みで、ミネソタ州は2016年、2018年、2020年に全州で投票率がトップ。ハムリン大学のデビッド・シュルツ教授は「早期投票がしやすく選挙当日も投票に行きやすい。有権者登録に必要な条件は最小限に抑えられているため、アメリカの他の多くの州に比べて投票しやすく参加しやすい」と分析する。
秋山氏はミネソタ州の取り組みについて、「アメリカでは重罪を犯すと、一生投票できなくなる州もある。ミネソタ州では仮釈放された人、刑期を終えた人が投票できるようになった。それを知らない人が多いため、投票できることを知らせるNPOがある」と付け加えた。
一方で、「今、投票制限法が上昇トレンドにある中で、オレゴン州とミネソタ州は少数派だ。投票制限法は、共和党の強い州が多い。今回、大統領も上院も下院も共和党が多数になったので、どうなるんだろうか」と懸念を示した。