■日本で議論される「緊急事態条項」の必要性
緊急事態条項が必要とされる主な理由は、大規模災害や戦争、テロなどが発生した際、国会を維持するために迅速に権限を集中できることにある。安全保障が脅かされる事態で指揮系統の統一をするためだ。過去にはコロナ禍に「緊急事態宣言」が発令されたことがあり、不要不急の外出の自粛、都道府県をまたぐ移動の自粛呼びかけ、学校の臨時休校、飲食店の営業時間短縮の要請、海外からの入国制限強化などがなされた。
SNSで緊急事態条項に反対する発信を行った立憲民主党・藤原のりまさ衆議院議員は、韓国で非常戒厳が出たことに触れ「日本で緊急事態条項がなくてよかったと率直に感じた。日本は正規の軍隊がないので、あのような物々しい状況にはならないと思うが、それでも人権の自由が制約される、あるいは三権分立を原則とした統治が破壊される危険を意識しなければならない」と述べた。
このほか、緊急事態条項の創設に反対する意見としては「緊急事態のもとで議員の任期が切れて政権に独裁者が居座る可能性があり、国民が支配され、権力者が恣意的に緊急事態を作れる」「国会を通さずにいろいろなものが決まり、大規模予算すら使えてしまう」「そもそも憲法改正はあっていけない」など、様々な声がある。
これに前参議院議員の音喜多駿氏は反論。「韓国でこういうことが起きたから、日本で緊急事態条項がいらない、それ自体が間違っているというのは、いささか踏み込みすぎだと思う。緊急事態宣言でも、ある意味取り決めがないから、なし崩し的に営業権や移動の自由が制限された側面もある。事前にルールを作っておくということは極めて重要で、今回の事態一つをとって、それそのものがダメだという議論にはならないのでは」と述べた。
また2ちゃんねる創設者のひろゆき氏は、韓国の非常戒厳では、国会で解除要求決議を可決され、わずか6時間で解除されたことにより、大混乱が生じたもののけが人が出なかったこともポイントとした。「今回、戒厳であるにもかかわらず、けが人が出ないで終わったのであれば、(解除という)ストッパーはちゃんと機能した。隣の国で大統領がやらかした時に緊急事態条項が必要か否かを判断すべきではない。戦争があった時、条項があった国とない国でどう違ったかを判断すべき。言い方を変えるなら、例えば緊急事態条項がない状態で日本にどこかが攻めてきた、原発を押さえに来た人たちを止めないとまずい、もっと被害が出るという時に、緊急事態条項によってその場で何かしらの暴力的行為で止めれば、そのおかげで人の命が助かる。そのために必要な時があると思っている」と語った。
■改憲での創設に賛否両論
